深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

今度こそ中級ダンジョンをぶっこわーす!

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 俺達は中級ダンジョンに来ていた。
 ダンジョンのコアにひびが入り、いつ結界が切れてもおかしくないという。

 女神に確認したが、いつもの『深刻な女神力不足なの』という答えが返ってきた。

 女神の話をまとめる。
 コアを直すには女神力が必要だが、女神力は無い。
 いつコアが駄目になるかも分からない。

 慎重さが必要になる。

 グレスと話をして500の兵士には王都に帰還してもらった。
 中級ダンジョンの攻略は時間がかかる。
 長い間王都を無防備には出来ないという結論に達した為だ。
 
 うさぎ族・旧スラムの住人・兵士を合わせて1000の人数で中級ダンジョンの魔物を狩りつくす。

「俺から方針を伝える。全員のレベル30到達を最優先にする。理由は今後の事を考えれば兵士の能力アップは必須だからだ!そして、部隊の分散はしない。コアが割れた場合各個撃破される可能性が高い為だ」

 最低でも全員同じ階に居てもらう。
 ここに居る兵士は自らの命を懸けて魔物と闘い王都のみんなを守る道を選んだ者が揃っている。
 その兵士を捨て石にするような国は長く持たない。

 レベルアップを優先する理由は未来を見ているからだ。
 日本が低迷し、余裕が無くなるとパイの奪い合いが始まり、長い目で見た投資を出来なくなった。
 それが日本の長期低迷の原因の1つだ。

 俺は日本が失敗した道と逆の事をする。
 苦境だろうが人への投資を続ける。
 人への投資が一番効果が高い。

 リンより兵士の命を大事に考える。
 魔物の殲滅よりレベルアップを優先する事で批判があるかと思ったが、みんな素直に言う事を聞いてくれた。

 グレスが裏で説得に回ってくれたらしい。
 俺の思いもみんなに伝わってるっぽい。
 兵士は大事にされている事を知って嬉しそうだった。

「グレス、説得してくれて助かった。グレスの信頼が高いおかげだ」
「私は、大したことはしていません。それよりも、ダンジョン内は見事に素材が取りつくされていますね」

「うさぎ族が素材を回収したけど、みんなに言わせればまだ取り足りないし、取りつくしていないらしい」

「……十分でしょう」
「どうやら上の階が手付かずらしい」
「そう言う事ですか」

「ダンジョンの結界が無くなって包囲されたくはない。1階から順番に魔物を倒して、低レベルの者のレベルアップを優先して進もう」

 1階から丁寧に時間をかけて魔物を倒していく。




 30階に到達し、魔物を狩ると、全員のレベルは30を超えていた。

「前回より10倍の人数でも時間がかかるか」
「でも、たくさんの魔物を狩ったです。もうダンジョンを消しても良いと思うです」

「いや、ゆっくり1階に進みつつ魔物を狩ろう。その後女神に連絡してみる」
「分かったです」



 魔物を出来るだけ狩り、ダンジョンの外に出ると、俺は女神にメッセージを送る。
『この中級ダンジョンを消滅させてもらいたいんだけど、問題無いかな?』
『大丈夫だよ』

 こいつが大丈夫か?
 女神から計画性を感じない。
『ダンジョンの魔物があふれ出して来たら俺達全滅しないか?』
『大丈夫大丈夫』

 俺は元の世界に居た時を思い出す。
 無責任な上司の顔が脳裏をよぎった。

 嫌な予感がする。
 大丈夫大丈夫と言って責任だけ押し付け、俺だけが遅くまで残って仕事し続ける日々、あれと同じだ。
「クズ上司と同じ発言か」

 女神に悪気はない。
 だが、自分では何も考えず、部下に丸投げし、執拗に仕事の期限と質の指摘を繰り返す上司を思い出した。
「あの時はしばらく、何度も何度も指摘され、怒られてひどい目に会った」

 残業代は出ず、残って仕事をした挙句、考え無しの上司は警察の尋問のようなやり取りを繰り返した。
 しかも、上司の言う事はコロコロ変わり、質問をしても一貫性はない。
 唯一、一貫していたのは、上司は自分にはとにかく甘く、他人にはとにかく厳しいという1点のみ。

 女神の性格はクズではないが、女神に深い考えが無い点はクズ上司と共通している。


 
 決めた。
 俺は女神にメッセージを送る。
 俺の考えでやる。

『考えたけどもう少し魔物を狩ってからにする』
『ダメダメ!ダンジョンコアのひびが広がってるよ!いつスタンピードが起きてもおかしくないよ!』
 前よりひどくなっている、だと!

『それいつからだ?そういう大事な事は次から早く言ってくれ!』
『お願い!今やって、ね?』
『なあ、王都に後退して迎え撃つのはどうだ?』
『魔物が王都に向かうかどうかわからないよ。この国にこれ以上犠牲が出たら、じわじわと魔物に滅ぼされちゃう。それにジュンが本気を出さないと防げないよ』

『俺の力を晒して戦えって事か?』
『そうだよ』
『魔王にばれたら厄介だ』
『今ここで戦って欲しいの。ここで戦った方が魔王に察知されにくいと思う』

 みんなが俺に注目する。
「大丈夫らしい。今からダンジョンを消してもらう」

 俺は色々な事を飲み込んで答えだけを言った。
 女神め、後で文句を言ってやる。

『準備OKだ。ダンジョンを消してくれ』
『行くよ』


 ダンジョンが消えていく。

 そして地上のいたるところに魔法陣が現れてそこから魔物が出現する。

「魔物が多くね?……多いよな!?」
 無数の魔物が大量に湧き出す。
 だからか!だから今までダンジョンを消滅できなかったのか!
 
「まずいまずい!このままじゃ全滅すらあり得る!」
 
 女神からメッセージが届く。
 助ける為の方法か!

 俺は急いでメッセージを確認した。
『がんばってー!』

「くっそーーーーー!」
 俺は実力をみんなに晒して全力で戦った。

 蹴りを放ち3体の魔物を1度に倒す。
 俺は女神に対する信頼度が落ちた。

 魔物に囲まれ孤立しそうになる者の元に走って駆け寄り魔物を倒す。
 女神怖いわ!

 俺は女神に対するイライラをぶつけるように魔物を倒しに倒した。




 ◇



「はあ!はあ!犠牲は無いか!死者は出てないよな!?」
「大丈夫だと思うです」
「味方の気配は消えてないと思うにゃあ」

「そ、そうか、良かった」
 俺は地面に寝ころんだ。
 呼吸が苦しい。
 レベル100になってから初の全力戦闘だったんじゃないか?


 呼吸が整うと、周りに兵士が集まって来る。
「あ、あなたは一体!何者なんですか!」
「これほどの力をお持ちだったとは!」

 ラビイが大声で叫ぶ。
「静まるのです!この事は他言無用なのです!ジュンこそが真の英雄にして魔王への切り札!魔王と魔将の裏をかく為この事は漏れてはいけないですよ!でも全員ジュンに敬意を払うです!」

 兵士全員が俺に跪く。
「俺は王様じゃないんだ。普通に接してくれ」

 兵士が敬礼した。
「そのご命令の意味、心に刻みました!」
「偉大な英雄に対し!これから普通に接する無礼をお許しください!」

「その心があればジュンは許してくれるのです」
 ラビイがどや顔で言った。

「それよりも、今日は休もう。もうしんどい」

 まさかこんなタイミングで俺の戦闘力を晒す事になるとは。
 女神め!!
 危なく犠牲が出る所だった。


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