深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

無双

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 1000のゴブリンの元へと向かうが、グレスの表情は硬い。
 ゴブリンは王都の近くまで迫っていたようで1日のキャンプでゴブリン部隊と遭遇した。

 1000のゴブリン。
 1500の混合軍。
 数はこっちが有利か。

 草原に両軍が布陣し終わった。
 うさぎ族のみんなが前に出たいと激しく主張する。
 俺の力を隠しておきたいようだ。

「先陣は私達うさぎ族が務めるです!」

 レベルが上がったウサットが筋肉を隆起させる。
「我らの力を見せつけてやります」

「私も前に出るにゃあ」
「俺も前に出るっすよ!レベル30組は全員前に出るのが良いと思うっす」

「「その通り!」」

「分かった。だけど俺も前に出る」

 全員が首を横に振った。
「魔将にジュン様の力が漏れる可能性があります」
「そうなのです。出るとしたら劣勢になりどうしようもなくなった時なのです!でも私達がそうはさせないのです!」

「そろそろゴブリンとぶつかる」
「では話し合い通りに」

 レベル30組は走って前線に飛び出していった。

 ウサットのたくましい筋肉が更に隆起する。
「ふん!」
 持ったクワで岩を砕いてつぶてをゴブリンに飛ばす。
 ゴブリンは霧に変わり、魔石が地面に落ちる。

 クワってそういう武器だっけ?

 眷属のメイド木こりが両手で斧を持って駒のように回転する。
 ゴブリンが斧で両断されていく。

 ラビイは綺麗なステップを踏み、ハンマーを振り回す。
 百発百中でゴブリンを1撃で屠っていく。

 女性陣の動きは綺麗だな。
 でもやってることはゴブリンの惨殺だ。

「私も行くにゃあ!」
 太ももにセットした小物入れから手裏剣を取り出して両手で投げる。
 複数のゴブリンを倒し、更に二刀流の小刀でゴブリンに突っ込んでいった。

 さっきまで表情の硬かったグレスは驚愕した表情で固まる。
「グレス、後ろから前線を押し上げてくれ」

「は!そうだ!全軍突撃!!」

 これ、戦いじゃなく一方的な虐殺だろ。
 ゴブリンは一気に数を減らし、あっという間に全滅する。
 俺の出番無し。

 戦いが終わるとグレスが俺の元にやってきた。
「流石ジュン殿、素晴らしい働きでした。ここまでうさぎ族を育て上げるのはかなりの努力が必要だったことは分かります」

 いや?俺は経験値投資を使っていただけだ。
 それに今回俺は何もしていない。
 ……幸運値か。
 幸運値の力だな。

 他の兵士も集まって来る。
「流石ジュン殿の軍勢、うさぎ族を最弱と呼ぶ者はここにはいないでしょう」

 何もやって無いからな。
 ラビイやみんなも集まって来る。

「ふふん!すべてはジュンの力なのです!皆ジュンを崇めるのです!」
 ラビイはまた変な事を言い出す。

「ジュン様のお力、存分に振るわせていただきました」
 ウサットの力だからな。
 俺は何もしていない。

 だが何を言っても分かってもらえないだろう。
 話を終わらせよう。

「キャンプをして今日は休もう」
 グレスや兵士は俺達のキャンプにも驚いていた。
 
 テントじゃなく家を設置するし、食べ物はストレージから出して料理した新鮮な食べ物。
 かなり革新的な動きだったらしい。

 この世界で生産ジョブは弱く、遠征に連れて行けない。
 だからストレージ持ちは同行できないのが普通らしい。
 しかも料理を作るのは料理人で、料理自体がうまい事にも驚かれた。

 俺達が普通にやってきたことは、グレスたちにとって普通じゃないらしい。



 キャンプの準備が終わり、夜の炊き出しが配られると、グレスが話しかけてきた。
「2泊目ですが、この革新的な動きにまだ慣れません」

「普通の事だと思っていた」
「絶対に違います」

 グレスの表情が和らぐ。
「ですが、ゴブリンの討伐がうまくいって良かった」

「だな。次なんだけど、中級ダンジョンに向かいたい。兵士のある程度を王都に返して、出来れば1000以上の人数で中級ダンジョンに向かいたい」

「リン殿は大丈夫でしょうか?」
「分からない、ただリンの役目はスライムの魔将に包囲される事だったんじゃないか?」

「……まさか!最後までリン殿を放置する気ですか!」
「察しがいいな。その通りだ。話を聞いて欲しい」
「わ、分かりました」

「元勇者のタケルの話になる。最強の呪いを使うスカルボーンは勇者のビックマウスを鵜呑みにして呪いの力を使い、力を失った。今回のリンの件も同じように思う」

「リン殿は【軍】の能力を持つスライムを足止めし、それによって世界を救うとこにつながると、そう言いたいのですか?」

「そう思っている。女神が言っていた。英雄は立派な人間じゃなくても良いと。後こうも言っていた。世界を救うためにどんな方法を取っても構わないと」

 この世界の歴史では英雄を殺す為、【軍】の魔将が周りの兵を疲弊させ、【呪い】の魔将の自爆攻撃で英雄を弱体化させ、魔王と魔将、デーモンで包囲して英雄は打ち取られている。

 つまり厄介な【軍】と【呪い】に対抗するために勇者タケルと賢者リンが居た。
 それが俺の結論だ。

「話は、分かりました。ですがあなたの判断で英雄リンが失われれば、あなたは批判を浴びるかもしれない」

「その時はその時だ。それにリンにはいい薬だとも思っている」
 グレスが笑い出した。

「ん?そんなに面白かったか?」
「ははは、いえ、失礼。ですがあなたも普通の人間のような事を言うのですね。安心しました」

「グレス、俺は聖人君子ではない。ただの変わり者だ」
「人と違うと認識している時点であなたは常識人です。ただ、勇気はあると思っています」

「とにかく、次は中級ダンジョンな。中級ダンジョンで兵士のレベルアップも行いたい。それで王都の貴族から批判が出ようが、中級ダンジョンに行ってしまえばこっちのものだ」

「やはり【軍】の魔将は厄介なのですか?」
「遭遇してないから分からないけど、歴史を見れば【軍】と【呪い】が厄介だと思う。弱い順に出て来てもらえれば助かるんだけどな」

「魔王は容赦がありません。そうはいかないでしょうね」

 そう、魔王や魔将は舐めプしない。
 一気に全勢力を投入するし、手段を択ばない。
 この世界はゲームとは違うのだ。



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