深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

ジュンの決断【グレス視点】

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 私は神殿をスライムに包囲されるのを阻止できなかった。
 急いで兵士を治療する。
「く、兵力が足りない!このまま突撃したら全滅だ」

「グレス隊長!食料も残り少なくなっています!王都に帰還するべきです!」
「そうです、奴はスライムを俺達に押し付けようとしました。気にする必要はありません」
「武具も傷んでいます。今は戻りましょう。グレス様の持っているポーションでもう回復薬は切れます!」

「戻るしかないか」
 私は元賢者リンを置いて、兵士と共に王都に帰還した。




 王都に戻るとすぐ王に報告した。
「うむ、厄介なタイミングだな」

「と、言うと?」
「実は1000のゴブリンがスタンピードを起こした。この王都に向かっている」

「……分かりました。すぐに対策を取ります」
「丁度ジュン殿がダンジョンから帰還している。グレスとジュン殿で協力して事に当たって欲しい」

 私は王城を出た。
 リン殿は魔将に包囲され、ゴブリンのスタンピードも発生したか。
 手が足りない。
 王に決断してもらう事は出来ないだろう。
 今王の元に貴族が集まり文句を言いに来ている。

 貴族は自身の領の事を優先し、国全体の事は考えない。
 王に相談しに行こうものなら貴族の横槍が入るに決まっている。

 ジュン殿の元に向かうと、危機を感じた兵士も集まっていた。
 うさぎ族や元スラムの者もジュンを取り囲むようにしてジュンに耳を傾ける。
「ゴブリンスタンピードとリンが包囲されたことは聞いた。王城に貴族が乗り込んで文句を言っている件も聞いた」

 空が歪み、女神の映像が現れる。
「中級ダンジョンのコアにひびが入りました。場所はジュンが消滅させようとしたダンジョンです。このままではいつダンジョンが壊れ、スタンピードが発生してもおかしくありません」
 女神が消えた。

 何と……いう事だ。

 リン殿はスライムの魔将とスライムの軍に包囲された。
 王都には1000のゴブリンが進行を開始している。
 更に中級ダンジョンのコアにひびが入りいつダンジョンスタンピードがいつ発生してもおかしくない。

 3つの問題が立て続けに起きたか。

「部隊を3つに分けるのはどうだべか?」

 うさぎ族の案をジュンが真っ先に否定する。
「いや、今兵士と俺達を合わせても兵力が足りない。3カ所すべて撃破される可能性が高いんだ」

 その通りだ。
 我らの兵力は足りない。
 戦力の分散は出来ない。


「グレス、王都の防御を無視してもいい。兵をいくら集められる?」
「1000です」

「新しく民になったスラムの者とうさぎ族の総力を結集させても500だ。合わせて1500。グレス、良い案はあるか?他の者でもいい」

「私は、まだ考えています。ただ、戦力の分散は良くない同意見です」

 ジュン殿は周りを見渡すが案は出てこない。
 ジュン殿は目を閉じて考え出した。


 そして目を開けた。
「俺の考えは、まずゴブリンスタンピードを潰したい。1500の総力で1000のゴブリンを潰す」

「包囲されたリン殿とダンジョンコアのひびはどうするんすか?」
 スラム出身と思われる男が疑問を投げかける。

「無視だ。リンは包囲されているだけですぐ死ぬ心配は無い。それに、ダンジョンコアはすぐ壊れると決まったわけじゃない。全部後回しにして確実に迫って来るゴブリンを潰す」

「でも、英雄を無視したとなれば、グレス兵隊長の責任が問われかねないっすよ」
「そうか、なら俺の意思で決めよう。失敗したら俺が責められるだけだ。最悪英雄ではなくなるが、早く決める必要がある。俺の英雄権限を使う」

 ジュン殿の言う通りで、ゴブリンを真っ先に潰すのが正解だろう。
 私は、答えを分かっていて、明言を避けたのか。

 私は私利私欲を捨て民に尽くす。
 そう思って兵士になり、兵士長になった。
 だが私は無意識に自身の保身を考えていた!

 情けない!
 ふがいない!
 自分が小さく見える!

 私が責任を取るべきだったのだ。
 両手を強く握る。

「グレス、考え込むな。何かあったら俺の責任にする。だから、背負い込むな」

 ジュン殿は分かっている。
 失敗したら自身に責任が降りかかると分かっている。
 蛮勇ではない。
 現状を把握し、その上で矢面に立った!

 ジュン殿に責任を押し付けるわけにはいかない。
 ジュン殿のような者がこの国には必要なのだ。
「しかし!それではジュン殿にだけ負担を押し付ける事になる!私が責任を持って決断しよう!」

「駄目だ、俺が怒られてもグレスは責任を取るな!グレスは必要な人間だ。俺の責任にすれば何かあっても俺が国を出るだけで済む」

「そ、その時は私がお供するです」
「私も一緒に行くにゃあ」
 周りが騒がしくなる。
 
 私は庇われている。
 英雄ジュン殿に庇われている。
 ジュン殿は大きい。
 それに比べ、私はあまりに小さい。

 こんな小さい私にジュン殿は期待している。
 重要な人間だと思ってもらえている。

 私はジュン殿と比べて器が小さい。
 戦闘力の問題ではない。
 性根が違う。
 発想が違う。
 ジュン殿は真の英雄だ。

 皆に慕われるのも当然だ。

「よーし!急いで遠征の準備をしてくれ!」
 ジュン殿は笑いながら言った。
 重圧を受けながら笑ってみんなに準備を任せている。

 ジュン殿が国を出る事があってはいけない。
 命をかけよう。
 私のすべてでジュン殿に降りかかる火の粉を払う。

 グレスは両手を強く握りしめた。
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