深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

スライムと元賢者【元賢者視点】

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 私は兵士に同行して回復魔法を使い続けている。
 おかげで幸運値はプラスになった。
 でも、土ぼこりが酷い。
 服の中に土が入って来る。

 本当に汚い。
 笑顔を張り付けて回復魔法を使う。
「リン殿、ありがとうございます。もう少しで神殿にたどり着きます。水浴びをすることが出来ますよ」

「そうなんですね。ありがとうございます」
 冷たい水か。
 風呂とサウナが理想だが、仕方ない。

 兵士の魔物狩りの同行を断ろうとしたが失敗に終わっている。
 女神からメッセージが来たのだ。
『兵士に協力しないと英雄の資格を失います』
 と脅しをかけられた。

 幸運値はプラスになったが思ったよりうまくいかない。
 食事は塩気の強いベーコンと固いパンだけ。
 遠征に同行した時点で分かっていたが、もう飽きた。

 幸運値はクリアした。
 次はスキルを何度も使って賢者にランクアップすれば元通りになる。
 赤魔導士より賢者の方が私にはふさわしい。
 もう少しの我慢。




 神殿にたどり着くと、川で水浴びをし、新鮮なサラダを食べる。
 塩とオイルだけの味付けだが美味しく感じる。
 もう少しの我慢。
 神殿で一泊して兵士に同行すると、魔物が出て来た。

「す、スライムだ!」
「いや、あれはただのスライムじゃない!魔将だ!【軍】の魔将だ」

「軍?軍とは何ですか?」
 スライムの文献は見ていない。
 スライムはただの雑魚。
 見る価値もない。

「スライムは大量の眷属を作り出す力があります。数の力で我らを何度も苦しめました」

 なるほど、だから【軍】か。
 雑魚の群れに魔法の範囲攻撃は有効だ。
 レベルを上げるチャンスでもある。

「私が援護しましょう。攻撃魔法を使います」

「おお!心強い!」
「ぜひお力をお見せください!」

 私が前に出ると、紫色のスライムが話しかけてくる。
「お前、魔法使いか?賢者か?」
 子供のような声。
 弱そうに見える。

「私は赤魔導士です」
「なーんだ。器用貧乏の魔法しか使えない半端なジョブか」

 兵士が会話に割って入る。
「リン殿は元賢者の英雄だ!馬鹿にするな!」

「賢者あ?」
 スライムの声が太くなり声質が変わっていく。
「そうだ!元賢者だ。馬鹿にするなよ!」

「賢者!ぼおくを昔罠にかけた賢者あああ!炎で焼き尽くそうとした賢者あああああああああああああああああああああああああああ!!ぐりいいいいいいいい!こおおろおおすううううう!」

「残念ですがあなたには無理です。ハイファイア!」
 炎でスライムを焼いていく。
 何度も焼く。

 だが何故か兵士長のグレスが焦りだす。
「い、いけない!すぐ援護しろ!」

 紫色をした8体のスライムが炎を突破して私に迫る。
「リン殿!そのスライムは【軍】の魔将です!魔将としては戦闘力は高くありませんが、8体すべてを撃破しなければ何度でも復活します!」

「スライムは雑魚、雑魚が集まっても雑魚でしょう?ハイファイア!」
 魔将のスライムの内1体はまたも炎を突破して体当たりを仕掛けてきた。

 1体のスライムの体当たりを受けて私は吹き飛ばされる。

「無様だなああああ!賢者あああああ!転移した英雄は何故か俺を侮るうううううううう!だがそのおかげでお前を殺せるううぅうぅううう!」
 ほかの7体のスライムも私に迫って来る。

「ひいいい!」 
 私は杖を投げ捨て、必死で逃げた。

「リン殿!どこへ行くのですか!」
「我らを見捨てるのですか!」

「雑魚は無視しろおおお!賢者を殺せえええええええ!」

 私は神殿に逃げた。
 神殿は魔物が入れないよう結界が張られている。

 押し付けたはずのスライムは兵士を無視して私を追って来た。
 魔将のスライムは1体でも私より強い。
 それが8体も居る。

 神殿の中から結界の外を覗きこむとスライムは結界を囲むように包囲していた。
 神殿にいた者はすでに逃げ出し、ここには私一人。

 すぐに結界内を調べた。
 食料は多少ある。
 神殿に隠し階段は見つからない。

 隠し階段があったとして私に見つけることは出来ないだろう。
 斥候の部下がいれば良かった。
 もう少しで軌道に乗ると思っていた。

 結界の外を見て回るが完全に包囲されている。
 叫んだ。

「助けなさい!英雄である私を早く助けなさい!」

 私の叫び声だけがむなしく響いた。



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