深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

食べられない人々

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「……って事があった」
 俺は家に帰り英雄会議であった事を全部言った。
 リンが脅しをかけていたが知った事か。

 ホールにうさぎ族の主要メンバーが揃い、全員が黙って俺の言葉を聞いた。
「リンは頭にくるです!ぶっ殺してやるです!」
 ラビイはちっちゃいのに気が強いよな。

「冗談はさておき」
 ラビイの言葉は冗談じゃないだろうが流す。

「ポーションの増産とポーションの寄付をしたい」

「ジュン様、任せてくれ。中級ダンジョンで大量の薬草を手に入れた。今後ポーション作成のスキルが上がり、自然と増産状態が続くだろう。倉庫に補充した分をウサットの方で自由に寄付して欲しい」
 うさぎ族の男が自信満々に答える。

「頼む、だが最優先は皆のポーション作成のスキルアップだ」
「ああ、分かってるぜ」

「スラムに行って来る」
「わ、私も行くです!」
 俺とラビイはスラムに向かった。




【リン視点】

 リンは口角を釣り上げた。
 スラムで無償の治癒を行い、ついに幸運値が0に戻ったのだ。

 やっと戻った。
 これで作り笑いをする必要は無い。
 いや、余裕を見てもう少し幸運値を上げておくか。
 
 スラムは治癒をするには効率が良いが、風呂に入らずボロボロの服を着ている者が多い。
 ここでなくてもいい。
 スラムに来る必要はもう無い。

 立ち去ろうとすると、子供が出て来た。
「パンを、下さい」

 ボロボロの服。
 風呂に入っていないのか顔は汚れている。
 汚い。

 パンを地面に投げ捨てた。
「落としてしまいました。拾って食べてもいいですよ」
 そう言って立ち去る。

 子供はパンを拾って気にせず口に入れていた。
 本当に汚い。





【ジュン視点】
 
 スラムに着くと、子供が出て来て「パンをください」と言った。
 俺は躊躇した。

 確かにパンを与えて一時の空腹を紛らわせることは出来る。
 だが俺は決めている。
 魚を与えず、魚の釣り方を教えると。

 安易にパンを与えたい衝動に駆られた。
 だが、それでは解決しない。
 スラムに居る全員にパンを配る力は無い。
 パンを求めて群がってきた場合対処できない。

 命を選ぶのか?
 かわいそうだから目の前の子供にだけパンを与える?
 しかし、子供は戦闘力にマイナス補正がつく。
 子供に戦わせるのは危険だ。

 そこに前経験値投資を使った男が現れた。
「ジュンさん、こんにちわ!どうしたんすか?」

「子供にパンをくださいと言われたが、俺は魚を与えず魚の釣り方を」
「あ~分かったっす。そう言う事っすね。何で悩んだ顔をしてたか分かったっすよ」

「実はジュンさんに助けられた皆で小さいパンをみんなに毎日配ってるんすよ」
「ん?」
「配ってるパンは小さいっすけど、徐々に良くなっていくと思うっす。腹は減っても餓死はしないはずっすよ。それより早く他の仲間のレベルを上げて欲しいっす」

「そうか、そうなのか」
「レベルを上げた仲間が増えれば、もっとパンをたくさん配れるっす。パンを配るのは俺らでやります」

「分かった」
「しかし、ジュンさん変わってるって言うか、ルールに忠実って言うか」
「言いたいことは分かる」

 ラビイが俺の腕に絡みついてくる。
「作戦会議をするです。スラムの住民のレベルアップを効率化するですよ」




 すぐにレベルアップの効率化が行われた。
 俺はダンジョン5階のセーフゾーンに待機する。


「よろしくお願いします」
 5階に来た者と経験値投資の契約をする。
 それだけが俺の仕事だ。

 うさぎ族で役割分担をし、ダンジョン5階に護衛しつつ運び、セーフゾーンの近くに魔物をおびき寄せ、皆に魔物を狩らせる。
 疲れた者は契約を解除し、他の者と契約し直す。
 レベル4になったら訓練は終わりだ。

 レベルが上の魔物を狩る事で効率よくレベルを上げるのだ。

「す!凄い速さで回転しているです」
「レベルを4までしか上げないからな。他にまだいい方法があるかもしれない」

「ジュンは天才なのです!」
「いや、俺は元々工場員だからこういう仕事をしていたんだ」
「未知の力を感じるです!これなら希望者全員がレベルアップ出来るです」

「ラビイに聞きたいことがあったんだ」
「何です?」
「10人の食べられない人が居るとする。パンを与えれば1人助けられます。働き方を教えてパンを買えるようにすれば5人助けられます。さあ、どちらを選ぶ?」

「働き方を教えるのが多く助けられるです。でも、目の前に死にそうな人が居たら1人にパンを与えてしまうと思うです」

「うん、分かる」
「ジュンならどうするです?」
「5人に働き方を教える。……俺は力がない」

 ラビイは黙って俺の言葉を聞いた。
「10人を助けられるように皆を育てたい。俺は選ばなくていい未来が欲しい」

「ついて行くです。苦しい選択は、もうさせないです」
 ラビイが俺にキスをした。









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