深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

元賢者リンの企み【リン視点】

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「リン殿。回復魔法をお願いします」
 私は笑顔を作ってから回復魔法を使う。
「はい、ヒール!」

 兵士の傷が回復する。
「あ、ありがとうございます」
「今まで突然の転移で錯乱していました。勇者や聖騎士と一緒にいて周りがすべて悪者に見えていました。皆にひどい事を言ったので罪滅ぼしをしたいんです」

 いつもよりゆっくりと会話し、更に笑顔を作り続ける。
 こうして私へのイメージを塗り替える。
 そしてしっかりとタケルとイツキのイメージを下げつつ、罪をなすりつける。
 
「リンさんは良い人だったんですね。それに美人だ」
 そう、私の顔は整っている。
 笑顔でゆっくり話すだけで私の事を好きになる者は多い。

 スタイルにも自信がある。
 女性的な曲線で、日本に居た時から男子生徒からの視線を感じる事があった。
 私の尻とくびれを見られていた。
 胸も大きく、胸も良く見られた。
 
 この世界の幸運値の上げ方と下げ方は理解した。
 まず積極的に危害を加えなければ幸運値はあまり下がらない。
 死にかけた人をただ見ているだけだと幸運値はそこまで下がらず、手を上げたり、罵声を浴びせる事で幸運値は減少する。

 つまり傍観者でいる限り大きく幸運値は減少しない。

 幸運値を上げる方法も分かった。
 無償で回復魔法を使えばいい。

 無償で何かをすれば幸運値はよく上がる。
 私の場合は回復魔法の効率が最もよかった。
 慈愛の意思は関係無く、無償で回復魔法を使うだけでいい。

 この調子で幸運値を上げれば、マイナス分は取り戻せる。
 いつも笑顔の仮面を張り付けて、何か言われたら上目遣いで困ったように見つめるだけでいい。
 本当に簡単。

 勇者タケルを見て幸運値がマイナスになるデメリットは嫌と言うほど知った。
 私の幸運値がプラスなら賢者の加護を失い、赤魔導士になることも無かったかもしれない。

 まずは幸運値を上げる。
 それまでは前に出て戦わない。
 私は前ほど強くない。

 幸運値を上げて肉壁を手に入れたら中級ダンジョンでレベルを上げる。
 出来ればストレージ持ちも欲しい所だ。
 
 最近兵士の遠征の話が出ている。
 兵士から距離を取って次は王都の貧困層の回復をしよう。
 今王都の外に出るのは危険。

 早く噂を流さねば。
 ストーリーは……

『この王都にはけが人が多く、十分な治癒を受けられないものが多い。現状を嘆いた私は王都中を回って無償ですべての人を癒す。それが終わるまでこの王都を動かない』

 ……悪くない。

 邪悪に口角を釣り上げている事に気づく。
「おっと、いけません」
 笑顔を張り付け、早速行動を起こそう。
 特に遠征を断る為の噂を早く流す。

 街を歩くと、兵士の行軍に声をかけられる。

「赤魔導士リン殿、明日出発の魔物狩りにご同行願いたい」
 こいつは!兵士長グレス!
 よりによって今とは、タイミングの悪い。

 周りを見渡すと、街の人、多くの兵士に囲まれ、見られている。
 私は頭を少し傾け、両手を祈るように組み、上目遣いでグレスを見る。
「この王都にはけが人が多く、十分な治癒を受けられないものが多いのです。王都中の恵まれない民すべてを癒したいのです」

「兵士もこの国の民、英雄であるあなたにご同行願えれば、兵士の士気は上がり、皆安心して戦えましょう。あなたが来なければたくさんの者が命を落とします。どうかご協力をお願いします」

 グレスが礼をすると、女性の街人が黄色い声をあげる。
 断れない。
 周りに見られている。
 ここで皆を敵に回すわけにはいかない。

 私は笑顔を張り付けたまま言った。
「分かりました。皆を癒しましょう。ですが私の力は衰えています。回復程度しか役に立てないでしょう」

 回復しかしないと強調する。
 そして私の同行をあきらめなさい!
 私を巻き込むな!

「リン殿は麗しく優しいお方!後ろに居てくれるだけで助かります!」
 黙れ雑魚の槍使いが!
 せっかくただで治療してやったのに恩をあだで返すな!

「構いません。英雄の力、期待しています」
 グレスのこの言葉により、私は何度も魔物狩りに同行する事になった。

 最悪。
 泥と埃で汚れるし魔物も厄介。
 魔法でグレスを焼き殺してやりたい。

 今はグレスの方が強い。
 周りに人が居なくても倒すのは無理ね。
 倒せても幸運値が下がる。
 周りに見えるように笑顔を張り付けてにこにこと笑った。

 だが私の心は憎悪で渦巻く。





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