深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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人に投資をするのが1番効率がいいよな

深刻な女神力不足について詳しく聞きたい

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 王とグレス、そしてウサットは飲みすぎて酔いつぶれた。
「もう朝じゃないか!」

 この世界でも朝まで飲む習慣があったとは!
 途中からこいつらは早く酔い潰れないかな?と思ってしまうほどタフだった。

 王と兵士長グレスは地べたでダウンし、ベッドに運ばれていく。

 俺はすぐ女神に連絡を取った。
『今から会話出来るか?』
『良いよ』

 目の前の空間が歪んで女神の映像が現れる。
 周りにいたうさぎ族がうとうとしながら女神に跪く。

「皆は休んでくれ。女神と1対1で話をしたい」
 俺はすぐ個室に入り、女神と話を始める。

「深刻な女神力不足について聞きたいんだけど、女神力って何なんだ?」
「女神力は魔力みたいなものだよ。でも魔力と違って世界を維持するために使っているよ」
 ゲームのMPか。

「いつも女神力が不足しているのは世界の維持に使っているからか?」
「そうだよ」
「維持で削れる部分はあるか?」

「ダンジョンを無くせば維持の為の女神力は楽になるよ」
「無くせないのか?」
「無くしたら、ダンジョンの中の魔物が全部外に出て来ちゃうよ。それにダンジョンは人々が発生させた負の感情、瘴気を吸い取る効果もあるんだよ。ダンジョンに魔物を発生させて外に魔物が出にくいようにしてるよ。瘴気と空気中に有る魔力と物質が合わさると魔物が生まれるよ」

「魔力と物質はどこにでもあるから瘴気があれば常に魔物が発生するのか」
「そうだね」

「……ダンジョンの魔物を狩りつくして、王都の防衛力が上がればダンジョンを消すことが出来るのか?」
「出来るよ。と言うより私からお願いしたいくらいだよ」

「そうか、それと気になっていたのは、女神の力で魔物を倒せないのか?」
「私の女神力で瘴気を中和する事なら出来るけど、魔物を倒すことは出来ないよ。それに私の女神力より瘴気の量の方が多いし、深刻な女神力不足でそれも出来ないの」

「分かった。他に出来る事はあるか?女神力不足を解消したい」
「今できるのはダンジョンの数を減らす事だけだよ。それに女神力不足は本当に深刻なの」

「ん?」
「女神力が足りないから一時的に女神力をブーストして後で女神力を使って穴埋めをするようにしてるの。でも効率が悪いのよ」
 
 俺の背中に悪寒が走った。
 それってローンじゃね?
 投資の知識を学べば誰でもわかる基礎の基礎。
 
 ローンを組んではいけない!
 ローンは投資と逆の効果をもたらす。
 ローンが大きくなればなるほど借金が加算される。

 ローンの本質は今の負担を減らし、未来の負担を増幅させるその場しのぎの悪手!

「それってローンじゃね?」
「え?何々?怒ってる?怖いよ」
「俺は質問をしているだけだ。女神力ブーストについて詳しく!!」

「え、えーと。今の女神力をアップさせる代わりに、後から3割増しの女神力を、後払いする的な?」
 俺の顔をちらちらと見つつ様子を伺うように話す。

「ローンじゃねーか!!!」
 3割ローンだ!
 女神は禁じ手を使いやがった!

「お、怒らないでよ!」
「すまない、取り乱した。女神力の維持について詳しく聞かせてくれ」
「目、目が怖い」

「気にするな、世界維持の女神力の詳細を聞かせて欲しい」



 ◇



 女神はだらだらと汗をかく。
 俺は何度も質問し、女神に何度も怒らないでと言われた。

「今女神ブーストで何割余計に使っているんだ?収入と支出状態でグラフに出せるか?」
「……」

 シュン!
 女神が消えた。
 逃げたのか!

 く!詳細は掴めなかった。
 だがはっきりした事がある。

 初心者ダンジョンでも中級ダンジョンでも1つのダンジョンの維持コストは変わらない。
 初心者ダンジョンは全部の階にセーフゾーンがあり、設備が充実している女神力の消費が激しく、結果同じコストになる。

 女神はゆるふわJKなだけじゃなく、借金で首が回らなくなった多重債務者と同じ状態だ。

 借金地獄ゆるふわJKか。



 俺が個室から出ると、ホールのテーブルに王とグレス、そしてうさぎ族の重役が全員座っていた。

 ウサットが礼をする。
「女神さまとの救世会議、お疲れ様です。出来る範囲で構いません。結果をお教えください」

 いつの間にか救世会議になっていたのか!
 王とグレスは少し調子が悪そうだ。
 飲みすぎだ。

 本当の事を言ったら女神の威厳は地に落ちるだろう。
 だが、真実を伝えるべきか。

 女神からメッセージが来る。
「ちょっと待ってくれ」
「待ちますとも」

『信仰心は大事なの!私のイメージを大事にして!』
 イラっとした。

『難しいだろ!』
『出来るよ!ジュンがその気になれば!』
『……やってみよう』

「まだ言葉がまとまっていない。正確な言葉で言えないかもしれないけど、言える事を言おう」
 まずは予防線を張る。
 これで後から前言撤回できる。

 俺はテーブルに座った。
 全員が俺に注目する。

「女神の力が落ちている。原因は世界の維持の為に力を使いすぎている為だ」
 周りがざわつく。

「女神の負担を減らすために、ダンジョンの数を減らしたい。だが、今の状態でダンジョンを減らすと2つ弊害がある。1つはダンジョンを消すと、ダンジョン内の魔物が外に溢れ出す。もう1つは瘴気を吸収するダンジョンの効果が無くなり、周りに魔物の発生数が増える事だ」

 あまり詳しく言ったらぼろが出る。
 この匙加減がいいだろう。
 皆は真剣なまなざしで期待しながら俺を見つめ続ける。

 まさか!解決策を期待しているのか!
 あまり詳しく言うとぼろが出るが仕方ない。

「1つの案として、ダンジョンを消しても問題が無いようにダンジョン内の魔物を狩りつくす事だ。試しに中級ダンジョンの魔物を一掃しつつ、うさぎ族のレベルを上げたい。実際に行動しなければどの程度の人員が必要か見当がつかない」

 俺は用意されたコーヒーを啜りつつ皆の顔色をうかがう。
 黙って発言を待っている!
 俺はコーヒーカップを置いて発言を続けた。

「もう一つの案は、うさぎ族のレベルが上がったら、兵士の支援を出来たらいいと思っている。皆の協力なしには達成できないだろう。それとどのダンジョンを消すか考えるにあたって王やウサットたちの協力が必要だ」

 頭をフル回転させて考える。
 各階にセーフゾーンのある初心者ダンジョンを消しても良いか。
 議論する必要もあるだろう。
 初心者ダンジョンは新人兵士や冒険者にとってありがたい存在なのだ。

 みんなを巻き込む。
 俺一人では無理だ。
 一人一人に当事者意識を持ってもらう。
 更に続ける。

「俺は何度も失敗して何度も意見を修正すると思う。女神と話を重ねたが女神の力が偉大過ぎて全容を完璧に把握出来なかった。みんなの力を貸して欲しい。俺からは以上だ」
 俺は頭を下げた。

 空間が歪み、女神の映像が現れる。
 神っぽい動きで言葉を紡ぐ。
 いや、神なんだけどな。

「ジュンに協力するのです!私からは以上です」
 女神はすぐに消えた。
 早!消えるの早くない!?
 質問をさせないようにしているだろ?!

 王は驚愕する。
「ジュン殿は先のことまで考えた上で発言していたようだ」
「ん?」

 グレスも後に続く。
「ジュン殿はうさぎ族のレベルを上げたいと言っていましたが、その本当の意味が分かった気がします。確かに今後の事を考えれば生産力のアップは必須です。私はてっきり単純に王都の生産力を上げたいのだと思っていました。ですが、ダンジョン消滅の使命まで受けていたとは!ジュン殿の考え、底が見えません」

「たまたまだ」

 ウサットが笑う。
「またまた、ご冗談を。最初からダンジョン消滅の件を持ち出されていたら我らの心は折れていました。そうさせない為、我らのレベルが上がったタイミングでの狙いすました発言でしょう」

「その通りなのです」
 皆が賛同し、騒がしくなる。
 今女神と話をして分かった事なんだけど、信じてもらえないだろう。
 それに生産力が上がれば経済力も上がる。
 
 王都のボトルネックは生産力だ。
 そこが解決すれば他も回り出すと思う。


 ウサットが質問する。
「皆さんにお聞きしたいのですが、この国には中級ダンジョンと初心者ダンジョンがあります。どのダンジョンを消滅させるべきでしょう?」

 王が答える。
「この国は4つの中級ダンジョンと1つの初心者ダンジョンがある。中級ダンジョンを1つ消滅させたい。出来れば初心者ダンジョンもだ」

 グレスは反対の意見を言う。
「私としては新人の兵を育てる為、初心者ダンジョンを残したいのです」

「ジュン殿はどう思う」

「俺は……」

 


【フィル視点】

 私は緊急で女神さまに呼ばれた。
 女神の元に着くと、女神が空中から飛んで抱き着いてきた。
「聞いて~。ジュンが怖いの~」
 女神さまはジュンとのやり取りを吐き出すように話す。




「……なるほど、そういう事があったんですね」
「それでね。ジュンの目が怖いのよ!」

 女神さまはとにかく話をしないと気が落ち着かないようだ。
 女神さまが落ち着いたのを確認して話を切り出す。

「怖かったですね。よしよし。ですが、ジュンなら、ダンジョンを消す力があるかもしれません。協力した方が、今後良くなると思います」

「……フィルも協力して」
「わたし、ですか?」

「フィルは私の眷属なんだから!協力して!」
「分かりました」
 女神さまはしばらくジュンと話をしないだろう。
 もっとやる気を出してもらえればうれしいのですが。 
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