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投資の基本は節約と自己投資だよな
爵位
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俺はイツキとリンが謁見の間から出て行くのを見送ると、女神も消えた。
「さて、ジュン殿、今回の戦い。うさぎ族からのポーションの寄付など色々と世話になった」
俺は横のグレスの顔を見ると笑顔で返してくる。
ポーションの件だけでなく、俺が城に侵入した死霊部隊を全滅させたことを言っているんだろう。
「そこでジュン殿に子爵の爵位を与える。これからも影ながら我らを助けて欲しい」
「いや、僕は何も、うさぎ族が優秀なんです。それに転移してすぐに王から腕輪を貰いました。そのおかげで俺は助かったんです」
「戦闘力の腕輪と回復の腕輪の事か?ジュン殿に渡した腕輪の価値は2億ゴールドだが、売ることも出来ず倉庫で埃をかぶっていた腕輪だ。それにうさぎ族の働きにより今後その100倍の価値を生むだろう。そしてうさぎ族の苦境を救ったのはジュン殿だ」
「男爵ではなくいきなり子爵になるのは、どうなんでしょう?」
「ジュン殿の爵位を子爵にせねばうさぎ族が拗ねてしまう」
王がさわやかに笑うと周りの者も笑った。
「分かりました」
「うむ、すぐに儀式を済ませよう」
爵位の授与が終わると俺はため息をついた。
「やっと終わった」
「疲れさせてしまったか」
王が苦笑いを浮かべる。
「儀式は苦手です」
「うむ、だが皆にジュンが子爵になった事を示す意味もあるのだ。疲れたついでに少数で話がしたい」
すぐに話は進み、俺達は城を出て俺の住む家に向かう。
護衛の兵士が庭の前で待つが、グレスと王の態度で何かを察したのか俺への態度が異様に丁寧だ。
家のホールにテーブルが用意され、俺の隣にウサットとラビイが座り、対面には王が座り、グレスは王の後ろに控えた。
「グレス、私の後ろではなく椅子に座ってくれ」
「しかし」
「命令だ。早く話を進めたい」
「分かりました」
「さて、話を進める前に、うさぎ族はジュン殿の能力を知っていると取っていいか?遠慮なく話をしたいのだ」
ウサットが胸を張って答える。
「ジュン様のお力は心得ております。王様とグレス様はご存じと、そう取ってもよろしいのですかな?」
「うむ、力を持っている事は知っている。だがうさぎ族よりジュン殿の事を把握しているわけではないのだ。簡易ではあるが結界を張った。今後の方針を聞きジュン殿と連携を取りたい」
「僕達ががやろうとしているのは、うさぎ族のレベルを上げです」
「ジュン殿、敬語は不要で普通に話して構わない」
無意識に敬語を使っていた。
王様のイケメンオーラか。
「分かった。希望者を募り、うさぎ族で中級ダンジョンに行きたい。最終的にはうさぎ族のレベルを30まで引き上げたい」
「30!最強の部隊が完成するだろう」
グレスは驚愕した。
「疑問がある。なぜうさぎ族なのだ?うさぎ族は生産ジョブしかおらず戦いには向かない」
「うさぎ族のレベルを上げ、生産力の強化を狙っている。俺の元居た世界の歴史では、大国が南北に分かれて戦争をした。一方は兵の質が高く、一方は兵の質では劣る代わりに物資の生産力が高かった。どっちが勝ったと思う?」
そう、アメリカの南北戦争だ。
「その文脈で考えると、生産力の高い方が勝った、か?」
「その通りだ。もちろん元居た世界では武器の性能が戦闘力に直結する。この世界の法則と違う部分もあるが、この世界でも弱い武具はすぐ壊れ、ポーションが不足し、食料が枯渇すれば戦力はダウンする」
この世界では武器の性能を上げても戦闘力は高くならない。
だが、剣士の場合レベルに合わない質の低い武器を使えば剣がすぐに壊れる。
壊れた剣を持った剣士の戦闘力は当然下がる。
質の高い武器を作る意味はあるのだ。
いつも紳士的なグレスが声をあげる。
「確かに!その通りです!もっとポーションがあれば!もっと食料があれば!もっと質の高い武具があれば犠牲を少なく出来ます!」
俺はグレスの様子を見て確信に変わった。
この王都は生産力が低い。
生産性が低いと兵士に十分な物資を持たせることが出来ない。
そうなれば兵の犠牲が大きくなり、徐々に劣勢に立たされる。
「だが、生産系ジョブの育成には多大な手間と時間がかかる……おかしい。なぜうさぎ族はこの短期間で大きな力を手にしたのだ?成長が早すぎる!?」
ラビイが胸を張った。
何故か自慢するように語り出す。
「ジュンのスキル、【経験値投資】の力なのです。ジュンの経験値投資の能力は、一人につき、戦闘力を10ポイント貸し出せるのです!しかも1度に10人まで契約できるのです!」
「なん、だと!その能力は女神の加護とほぼ同格!戦闘力が10アップすればだれでも簡単にレベルを上げられる!いや、だからこその英雄か」
「ただ、弱点もあるのです。【経験値投資】のスキルを使うとジュンは力を無くし、苦しみを味わうのです」
そこまで苦しくないけどな。
「いや、弱点は経験値の半分を俺が吸い取る事になる」
「それでも強力だ!」
王は驚愕し、その後酒が運ばれ、宴会が始まった。
「さて、ジュン殿、今回の戦い。うさぎ族からのポーションの寄付など色々と世話になった」
俺は横のグレスの顔を見ると笑顔で返してくる。
ポーションの件だけでなく、俺が城に侵入した死霊部隊を全滅させたことを言っているんだろう。
「そこでジュン殿に子爵の爵位を与える。これからも影ながら我らを助けて欲しい」
「いや、僕は何も、うさぎ族が優秀なんです。それに転移してすぐに王から腕輪を貰いました。そのおかげで俺は助かったんです」
「戦闘力の腕輪と回復の腕輪の事か?ジュン殿に渡した腕輪の価値は2億ゴールドだが、売ることも出来ず倉庫で埃をかぶっていた腕輪だ。それにうさぎ族の働きにより今後その100倍の価値を生むだろう。そしてうさぎ族の苦境を救ったのはジュン殿だ」
「男爵ではなくいきなり子爵になるのは、どうなんでしょう?」
「ジュン殿の爵位を子爵にせねばうさぎ族が拗ねてしまう」
王がさわやかに笑うと周りの者も笑った。
「分かりました」
「うむ、すぐに儀式を済ませよう」
爵位の授与が終わると俺はため息をついた。
「やっと終わった」
「疲れさせてしまったか」
王が苦笑いを浮かべる。
「儀式は苦手です」
「うむ、だが皆にジュンが子爵になった事を示す意味もあるのだ。疲れたついでに少数で話がしたい」
すぐに話は進み、俺達は城を出て俺の住む家に向かう。
護衛の兵士が庭の前で待つが、グレスと王の態度で何かを察したのか俺への態度が異様に丁寧だ。
家のホールにテーブルが用意され、俺の隣にウサットとラビイが座り、対面には王が座り、グレスは王の後ろに控えた。
「グレス、私の後ろではなく椅子に座ってくれ」
「しかし」
「命令だ。早く話を進めたい」
「分かりました」
「さて、話を進める前に、うさぎ族はジュン殿の能力を知っていると取っていいか?遠慮なく話をしたいのだ」
ウサットが胸を張って答える。
「ジュン様のお力は心得ております。王様とグレス様はご存じと、そう取ってもよろしいのですかな?」
「うむ、力を持っている事は知っている。だがうさぎ族よりジュン殿の事を把握しているわけではないのだ。簡易ではあるが結界を張った。今後の方針を聞きジュン殿と連携を取りたい」
「僕達ががやろうとしているのは、うさぎ族のレベルを上げです」
「ジュン殿、敬語は不要で普通に話して構わない」
無意識に敬語を使っていた。
王様のイケメンオーラか。
「分かった。希望者を募り、うさぎ族で中級ダンジョンに行きたい。最終的にはうさぎ族のレベルを30まで引き上げたい」
「30!最強の部隊が完成するだろう」
グレスは驚愕した。
「疑問がある。なぜうさぎ族なのだ?うさぎ族は生産ジョブしかおらず戦いには向かない」
「うさぎ族のレベルを上げ、生産力の強化を狙っている。俺の元居た世界の歴史では、大国が南北に分かれて戦争をした。一方は兵の質が高く、一方は兵の質では劣る代わりに物資の生産力が高かった。どっちが勝ったと思う?」
そう、アメリカの南北戦争だ。
「その文脈で考えると、生産力の高い方が勝った、か?」
「その通りだ。もちろん元居た世界では武器の性能が戦闘力に直結する。この世界の法則と違う部分もあるが、この世界でも弱い武具はすぐ壊れ、ポーションが不足し、食料が枯渇すれば戦力はダウンする」
この世界では武器の性能を上げても戦闘力は高くならない。
だが、剣士の場合レベルに合わない質の低い武器を使えば剣がすぐに壊れる。
壊れた剣を持った剣士の戦闘力は当然下がる。
質の高い武器を作る意味はあるのだ。
いつも紳士的なグレスが声をあげる。
「確かに!その通りです!もっとポーションがあれば!もっと食料があれば!もっと質の高い武具があれば犠牲を少なく出来ます!」
俺はグレスの様子を見て確信に変わった。
この王都は生産力が低い。
生産性が低いと兵士に十分な物資を持たせることが出来ない。
そうなれば兵の犠牲が大きくなり、徐々に劣勢に立たされる。
「だが、生産系ジョブの育成には多大な手間と時間がかかる……おかしい。なぜうさぎ族はこの短期間で大きな力を手にしたのだ?成長が早すぎる!?」
ラビイが胸を張った。
何故か自慢するように語り出す。
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「なん、だと!その能力は女神の加護とほぼ同格!戦闘力が10アップすればだれでも簡単にレベルを上げられる!いや、だからこその英雄か」
「ただ、弱点もあるのです。【経験値投資】のスキルを使うとジュンは力を無くし、苦しみを味わうのです」
そこまで苦しくないけどな。
「いや、弱点は経験値の半分を俺が吸い取る事になる」
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