深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

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投資の基本は節約と自己投資だよな

元勇者の末路

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 スカルボーンを倒し、家に帰ろうとする。
 城に戻ると面倒だ。
 儀式とか嫌いなんだよなー。

 そこに女神の映像が現れる。
「帰らないで」
「まだ何も言ってない」

「帰ろうとしたでしょ?」
 ち、勘のいい奴め。
「スカルボーンは倒した」
「城に戻って」
「……分かった」



 俺は城の謁見の間にで王の前に立つ。
 王の前に俺・聖騎士イツキ・賢者リン・兵士長グレスが並ぶ。
 王座のサイドを重鎮が固める。

 王座の横からまばゆい光が溢れ、女神ファジーの映像が出現する。

「おお!ファジー様!」
 王が王座を空け皆の横に立って跪く。

「ありがとうございます」
 女神ファジーの声や動きから神々しいオーラを感じる。
 全員が女神にひれ伏す。

 だが俺は知っている。
 こいつキャラを作っている。

「こほん、皆さんご苦労様です。おかげで魔将スカルボーンを倒すことが出来ました。聖騎士イツキと賢者リンは加護を失い、重騎士と赤魔導士のジョブにランクダウンしましたが、それでも2人は英雄です」

「勇者タケルは?」
 俺はため口で聞いた。
 もう敬語は不要だろう。

「勇者タケルは……今目覚めたようですね」
「すぐにここにお連れしろ!」

 兵士長グレスが走って謁見の間を出て勇者を担いで戻って来る。
「離せ!俺は勇者だ!降ろせよ!」
 勇者が降ろされるとグレスに殴りかかるが、グレスに片手で止められる。

「ぐう!」
「勇者タケル、いえ、剣士タケル、あなたはもう英雄ではありません」
「なん、だと!」
 タケルの顔色が悪くなり空を見つめる。

 恐らくステータスを眺めている。
「加護をよこせ!加護をよこせよ!」

「残念ながら無理です。深刻な女神力不足により私の力が弱まっています。それにあなたが善行を重ねて幸運値を高く保っていればスカルボーンの呪いで加護を失う事も無かったでしょう。あなたが皆をいじめたせいで幸運値がマイナスになりました。その事で呪いに弱くなったのです」

 タケルが女神の映像に詰め寄ろうとするが、グレスに押さえつけられる。
 そういえば転移する前に幸運値を上げるよう言われていた。
 幸運値は呪いのガードをする役目もあるのか。

「リン、イツキ!俺のレベル上げに付き合え!」

「無能に付き合う暇はありません」
 リンは髪をかき上げた。

「ふざけるなよ!お前と一緒にいるだけでイライラする!」
 イツキが拳を握りしめる。

「お前ら!今までの恩を忘れたのか!」
 3人で言い合いが始まる。

 王が冷たく言った。
「元勇者のタケルをつまみ出せ」

「ま、待て!ジュン!お前でもいい。俺が契約してやろう」
「はあ!?お前、この世界に来てすぐにお互い助けないし契約も結ばないと決めただろ!」
 実際に話を持ち出したのはリンだが、お前も納得して魔道具での契約を受け入れたはずだ。
 
「おい!投資家のお前と契約して俺が助けてやるって言ってんだよ!」
「いや?意味が分からない」
「何だと貴様!」
 その瞬間タケルが苦しみだした。

「あ、がががが!ぐあああ!いでえ!んがああ!!」
 突然タケルが地面に倒れてもがきながら苦しみだした。

「契約を破ったら1時間の激痛か」
 こわ!
 脅して言う事を聞かせようとしただけで効果が発動するのか。
 いや、もしかしたらタケルが【助けてやる】と言ったことがトリガーになったのか?
 分からない。
 リンやイツキと普通に話をしただけで契約が発動する恐れがある。
 一時間の激痛が発動する条件は曖昧なのだ。

 タケルが兵士によって外に運ばれる。
 その様子を見ていたイツキとリンが俺に向き合う。
「お前は俺に近づくな」
「離れてください。とばっちりはごめんです」

 な!こっちのセリフだ!
 しかもこの契約はリンが言いだしたんだろ!

「リン殿!イツキ殿!ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」
 王が喧嘩する前に割って入ってイツキとリンを退出させる。
 王の割って入るタイミングがうますぎる。






【元勇者タケル視点】
 朝日で目を覚ますと城の外に寝転がっていた。
 激痛の影響か体調が悪い。

「いや、夢か。そうだ。これは夢だ!」
 俺はステータスを開いた。

 剣を装備して戦闘力がたったの2!
 ゴミじゃないか。

 何度もステータスを開き直して確認する。
「変わらない、戦闘力2!くそ!」

 酒だ。
 様場に行く。
 酒を飲まなきゃやってられねえ。
 その後元勇者タケルは金を失い、何度も財布を紛失し、財産を失う。
 金が無くなりダンジョンに向かう。




「また初心者ダンジョンか」
 俺はとっくに金を使い果たし、高価な装備を売却した。
 初心者ダンジョンでスライムやラビットを狩る。


「くそ!10体以上の魔物に囲まれた!」
 俺は全力で逃走する。

 ズザーーーー!
 木の根に足を引っかけて転倒した。
 魔物に囲まれて攻撃を受ける。

「いでえ!いでえよおおお!!」
「じっとしてな!」
 冒険者が割って入って魔物を倒す。



「大丈夫か!?」
 こいつ、俺が前ぼこぼこにしたゴリマッチョ!?
 俺はこいつ以下になったのか!
 違う!俺は選ばれた人間だ!

「うるせえ!黙れ!」

 ゴリマッチョの隣に居たひょろっとした男が口を挟む。
「旦那あ、人が良すぎますぜ。ほっときゃよかったんですよ!無視して先に行きましょうぜ。ただでさえ新人を育てるのに忙しいんですから」

「そうはいかねえだろ。このままじゃ魔物に囲まれて死んじまう。セーフゾーンまでは送る」
 ゴリマッチョが俺を背負ってセーフゾーンに担いでいく。



 セーフゾーンで降ろされると、ゴリマッチョが語り掛けてくる。
「おめえ、もう勇者じゃねえんだ。もっと腰を低くした方が良いぜ。それと、セーフゾーンの近くで戦った方が良い」

「旦那あ、あんたどんだけ人がいいんだ。せっかく幸運値が高えんだ。不幸剣士の近くにいると運の悪さでとばっちりを食うぜ!それに勇者は旦那にひどい事をした!ほっときましょうぜ!」

 周りの冒険者がゴリマッチョに尊敬の念を向ける。
 特に後ろに居た新人と思われる冒険者達はゴリマッチョに憧れのまなざしを向けた。

 なんであいつが尊敬されて俺が地面に寝ころんでいる!?
 魔物に噛まれた傷が痛い。
 体が動かない。

 ゴリマッチョ一行が立ち去ると悔しさで涙が溢れる。
「くそ!この俺がただの剣士だと!間違ってる!いてえ、体がいてえよ」

 俺は幸運値が低く、よく転びよく魔物に包囲される。
 しかもレベルもジョブも弱い。

 体が痛い。
 この世界の体は回復力が高い。
 寝ていれば傷は治るが、それまでずっと痛い。

「今日は1つも魔石を取れなかった。くううううう!!!」
 また涙が溢れる。




 ギルドでは元勇者の噂がされる。
「おい、聞いたか?あのくそ野郎の勇者がもう英雄じゃなくなったみたいだ」
「知っている。勇者のジョブも失ってレベル1の不幸剣士になったんだろ?」

「レベル上げに苦戦してるみたいだぜ」
「だろうな。あれだけみんなに迷惑をかけたんだ。幸運値はかなりのマイナスだろうよ。しかも剣士のレベル1からやり直しだ。女神の加護が無きゃレベル上げは苦しいだろう」

「だな。しかも金が無くて初心者ダンジョンのセーフゾーンでキャンプ生活をしているらしい」
「宿屋に泊るのも断られているからな。不幸剣士は投資家英雄のキャンプを破壊したんだろ?女神さまの罰だぜ」

「自分がつらい側に立てば、貧しい者の苦しさも分かるだろうよ」
「だが、元勇者が変わると思うか?」
「いや?変わらんだろ。あいつはプライドの塊だ」

「だよな。弱くて嫌われてて幸運値もマイナス、それじゃ誰も助けないし近づく奴も居ないだろ」
「唯一の幸運は幸運値の低さで誰も近づいてこない事だ」

「……確かに、仕返しだけはされにくいか。近づいたら不幸に見舞われる」
「そういうこった」
「あいつのテントが燃えたらしいぜ」
「初耳だ」
「なんでも、薪を集めている内に焚火の火がテントに燃え移ったらしい」

「どうやって生活するんだ?」
「野宿らしい。ぼろい外套を着て野宿しているらしいぜ」

「悪い話はここら辺にしとこうや。あまり続けると酒がまずくなるぜ」
「だな」

 元勇者は表舞台から姿を消した。
 苦しい人生になる事は誰の目から見ても明らかだった。



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