深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
7 / 113
投資の基本は節約と自己投資だよな

フィルの正体【フィル視点】

しおりを挟む
 少し前の話。


 私は家に帰ると、まだ日が高い内からカーテンを閉める。
 女神ファジーに祈りを捧げると部屋が光に包まれ、女神の元へと転移した。
 転移すると背中から白い羽が生え、頭には天使の輪が出現する。

 深刻な女神力不足により地上にいると天使の姿を保つことが出来ないのだ。
 女神ファジーはベッドに横になりながらシュークリームを異空間から取り出して口に運んでいる。

 女神は基本だらしない。
「ファジー様、報告に戻りました」
「うん、お疲れ様~」

「勇者パーティーですが、全員戦闘力30に到達しました。ですが素行の悪さから全員の幸運値がマイナスです」
「う~ん。幸運値もだけど、レベルアップが遅いよ」

「それが、そこまでまじめに魔物狩りをする様子はなく、酒場でのんびりと過ごす時間が多いようです」
「おかしいな。皆からこの世界を救う力があるって感じたのに」

「どのように世界を救うかは分かりませんから。引き続き観察を続けます。続いてジュンですが、うさぎ族を救い、戦闘力が50を突破しました」
「わ~お。凄いね。ジュンには期待できそうだよ。滅びそうだったうさぎ族もなんとか滅びを免れそう」

「報告は以上です」
「ふふふふ、ジュンには戦闘力だけじゃなく、統治者としても頑張って欲しいな~」
「え?」

 ジュンがリーダーに向くとは思えない。
 内向的な性格で統治者というより軍師に向いている。
 皆を統治するというより、個人プレーでコツコツ積み上げて成果を出すタイプに見える。

「フィルはジュンが統治者に向かないと思う?」
「……はい。ファジー様は向いていると思うのですか?」
「思うよ」

「確かに彼の戦闘力は高いですが、統治に向くとは思えません。どちらかというと裏方の方が似合う感じがします。主に性格が、です」
「統治者はねえ、チートスキルが無くても、強くなくてもいいんだよ。指導力は、あればあった方が良いけど、それが無くても統治者にはなれるわ」

「え?」
 指導力は必要ない?
 ファジー様の考えが分からない。

「指導者は、皆を引っ張っていく者だと思っていました」
「そういうリーダーも居るよ。でもねえ、頼りなくてもこの人を助けたいと思わせる力があればいいんだよ」

 私ははっとした。
 どんなに強引でも人がついてこなければ意味が無い。

 この人は私が助けないと駄目だと思わせる統治者も居る。
 強引じゃなくても、下に居る者が統治者を助け、補っていく統治者の形もあるのかもしれない。

 一番大事な事は人を引き付ける力なのだ。
 ファジー様が言っているのは恐らくそう言う事だ。

 統治力の問題は出来る者に一任すれば解決できる。

「確かに、そうかもしれません」
 私は地上に帰ると、ジュンの事が気になるようになった。

 それから私はジュンを見つけると必ず目で追うようになった。
 ジュンは簡単に話をするけど、その裏には深い信念のようなものを感じ取れるようになっていた。

 ジュンは前に言っていた。
 未来を見ていると。

 ジュンは前に言っていた。
 魚を与えるのではなく、釣り方を教えよと。

 その時私はショックを受けた。
 私は魚を与える事しかしていない。
 ただパンを配ってお終い。

 しかもその時のジュンの横顔を見て分かった。
 ジュンの苦しそうな顔を見て、感情を殺して根本を解決する道を選んでいる事を察した。

 ジュンは大事だと思った事はその場限りの簡単な対応で終わらせない。
 面倒で時間がかかっても必ず根本を解決する方法を取る。
 でもそれが一番の解決策だと知っている。

 うさぎ族を助けた時もそうだ。
 安易に食料をばら撒いて済ませる事はせず、どんなに手間がかかり、コストがかさんでも教育を優先した。
 ラビイのレベルが10に上がり、ラビイに余裕が出来ると、何度もポーション作りを勧めた。
 失敗しても、何度も何度も失敗しても財産を失うまでラビイにポーションの材料を渡し続けた。
 そしてジュンは自身の財産を全て使い尽くした。

 今ではラビイが街で一番のポーション作りの名人になった。
 そのおかげでうさぎ族は変わろうとしている。

 急速に豊かになりつつある。
 ジュンは変わっている。
 変わっているけど底が見えないような得体のしれない深みを感じていた。

 そこにうさぎ族の女性が助けを求めてきた。
「フィル!助けて!ジュン様が私達を眷属にしてくれないの!」
「え?」





 私はすぐにうさぎ族の元に向かった。
 女性とジュンの仲裁を終える。
「や、やっと話は終わったか」
「ジュンは凄い人気ですね」

「なんで人気なのか分からない。いや、皆勘違いで俺の事をよく見てるんじゃないか?多分幸運値も影響している」
「きっとうさぎ族を助けたからですよ」

 ジュンは分かっていない。
 自分が凄い事をしている事に。

 王も、女神であってもうさぎ族を救うことは出来なかった。

 うさぎ族の女性がジュンを取り囲む。
 うさぎ族の性欲は全種族中最強だ。
 モテたらこうなる。
 これからジュンは、夜大変な……。

「フィル、顔が赤い。大丈夫か?」
「ふぁ!だ、大丈夫です!それでは失礼しました」
 私は赤くなった顔を隠すようにジュンの家を出て自分の家に帰る。

 胸がどきどきと高鳴る。
「どうして、ドキドキしてるの?」

 ジュンはモテる。
 そうだろうなと思った。

 心がもやもやする。
 私はジュンの事が気になっている?
 私も一緒にジュンの眷属になりたいと思っている?

 私は恥ずかしくなり声を上げながらベッドにもぐりこんだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...