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愛溢れる世界
255:エピローグ・1
しおりを挟む無事に結婚式が終わり、
俺は公爵家に帰る気満々だったのだが。
翌朝から3日間は蜜月期間だと言われて
俺はずっとティスと寝室に籠って
いちゃいちゃして過ごしてしまった。
恋は人間をダメにすると思う。
前世も含めて、
こんなに無駄な(?)時間を
過ごしたことが無い俺は
罪悪感にさいなまれたが、
ティスの「いい?」という
可愛い顔に、つい頷いて
ティスを受け入れてしまうのだ。
もしかしたら
前世で良く言われていた
『あざとかわいい』というのは
こういうことなのかと
最近は思うようになった。
3日後、ようやくティスから
解放されて公爵家に
帰ろうと思ったら、
今度は仕事が目白押しだった。
義兄とルイも王宮にやってきて
スケジュール確認をしたら
ブリジット王国に出発だ。
国賓として招かれているのだから
バカな真似はできない。
初めて会ったルイの実兄は
ルイに似ていたけれど、
どこか、いい加減な、
遊び人気質なルイとは違って
正義感の強そうな、
真面目な印象だった。
きっと、暴君の父の下で
苦労したんだと思う。
もちろん、ルイとの再会も
ルイの結婚も。
そしてキングナイト王国との
友好条約も喜んでくれていたし、
俺も珍しいお菓子を沢山
堪能させてもらえて
両国ともに有益で、
楽しい時間を過ごせたと思う。
その後にスクライド国にも
行ったのだけれど、
もちろん大歓迎してくれたし
スクライド国の発展を
この目で見れたのが嬉しかった。
剣の技術を農業へ、なんて
頭では理解していたけれど
実際に鍬や鋤を見せて貰って
俺はものすごく感心してしまったのだ。
デアーグもケリーも
俺の結婚式には来てくれたが、
披露宴に参加することなく
すぐに日帰りで
帰国したことを
平謝りしてくれた。
さすがにこの国のトップの
二人が、何日も
国を空けることは
まだ無理だったと言われて、
確かに、と俺は頷くしかない。
この国は軍事国家を返上して、
王制でもなくなった。
だがいまだに国を率いる
リーダーが決まらずに
デアーグたち率いる
元軍の人間たちが
暫定政府として
政治を行っているのだ。
俺はもう、このまま
デアーグが王様とか
議会制にするのなら
議会のトップで政治の
主導権を握ればいいのでは?
と思っているのだが、
デアーグは
「俺のような軍人ではなく
政治をきちんとできる者に
権力の座について欲しい」と言う。
その『きちんとできる者』が
デアーグなのだと思うが、
自分で自分のことはわからないんだろうな、
なんて俺は自分のことは
棚に上げて思っていた。
長期間の外遊が終わり、
王宮に戻ると、
また日常がやってくる。
俺は王宮で父や陛下に、
外遊での出来事を話した。
その後はティスは
学園を卒業したので
一年後に予定されている
立太の儀のために
今から仕事に励んでいる。
俺は週末も待たずに
領地に戻り、母に外遊の
話だけでなく、
ティスとの話もした。
子どものことだけは
聞いておきたかったのだけど
母は「あなたの心が決まったら
きっと授かるわよ」と言う。
俺はそういうものか、と
納得した。
だって俺はまだ
ティスに愛されることに
ようやく慣れてきたところなのだ。
これで子どもができたとか
言われても対処できない気がする。
「あなたが幸せそうで良かったわ」
母の言葉に、
俺はうん、と頷く。
まさかこんなに幸せで、
穏やかな日が俺に来るとは
前世も含めて思わなかったから。
俺はずっと余裕が無くて、
必死で動いてばかりだったから。
裏返せば、そうやって
動いてないと、
俺は不安だったんだと思う。
俺が望むものは
何も手に入らないし、
大事な物だって守れないんだって。
でもティスに愛されて、
俺は余裕をもって周囲を見ることが
できるようになった。
義兄やルイの俺に向けられる
優しさも、愛情も。
以前よりもずっと
気が付くようになった。
そして俺はそれだけで
嬉しく思うし、
幸せだと感じてしまう。
ティスのそばにいる安心感が
俺を成長させてくれているのだ。
俺はタウンハウスから
学園に通っているし、
俺が王子妃になっても
あまり日常は変わらない。
最初に言われていたように
公務は最低限しかまだ
関わっていないし、
社交界も、それこそ
少ししか参加していない。
かわりに義兄が
頑張ってくれているみたいで、
俺はその義兄から
貴族たちの情報と一緒に
勢力図とかそういうのを学んでいる。
クリムとルシリアンも
俺と一緒に学園の卒業資格を
取得したけれど、
やはり俺が学園に通うから
一緒に学園に通っている。
その代わり、
以前ほど俺にべったりではなくて
クリムは騎士団の演習に参加したり、
ルシリアンも積極的に
社交の場に出向いて俺に情報を
落としてくれたりする。
二人の代わりに
最近俺のそばにいるようになったのは
王家から派遣された護衛兼クラスメイトだ。
ティス曰く、年齢は俺と同じだが
学園には行かず、王家の訓練を
受けていた者、らしい。
よくわからんが、俺の護衛には
もってこいの人材だし、
本人も学園に通ったことが無いから
ちょうどいいだろう、ということだった。
キールは俺の護衛もしていたが、
俺が本格的に王宮に住むまでに
俺の護衛として、再度
王家に仕えることはできないかと
父に相談している。
今更キールと離れるのは寂しいし。
俺が父にお願いすると
父は陛下に話をしてくれているようだ。
だが、近衛騎士を辞めた者を
私情で戻すことは難しいようで、
公爵家から俺の護衛として
王家に連れて行くことになりそうだと
そんな話をしていた。
俺はキールがそばにいるなら
どちらでもいいし、
キールに希望を聞いたら
俺の護衛で王宮に着いて行くのは
光栄だが、近衛騎士に
戻りたいとは思わないと
言っていたので、
いい感じにまとまると思う。
そしてサリーは、
なんと!
あかちゃんができた。
びっくりだ。
まだ妊娠初期らしく、
仕事はお休みしてもらっているが、
子どもが生まれたら
遊びに来てもらう約束をしている。
将来、サリーを乳母に。
という夢はもしかしたら叶うかもしれない。
幸せだ、って俺は思う。
それは改めて思うのではなく、
何気ない日常の1コマで。
空を見て幸せだって思って。
ティスと朝ご飯を食べてたら
幸せだなぁ、って感じて。
タウンハウスに戻って
義兄やルイと一緒にゲストハウスで
ごろごろしながら
他愛のない話をしても、
「幸せだ」って口から出たりする。
俺の言葉を聞いて、
義兄もルイも笑うし、
ティスは嬉しそうな顔をするから
俺はもっと、嬉しくなる。
そうやって俺は
満たされた生活をして
一年後、学園を卒業した。
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