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愛溢れる世界
246:結婚式・2
しおりを挟む結果から言って、
結婚式でのティスは最高に格好良かった。
俺とお揃いの白い生地のタキシードで
胸には『祝福』の花が飾られていた。
それは俺の髪に飾ってある生花と
同じ花だ。
そして互いの耳には
お揃いの、イヤーカフが光っている。
イヤーカフには、
俺は金色の、ティス紫色の
宝石が付いていて、
派手と言えば派手だったけれど。
耳に付けても邪魔にならない
シンプルなものだったし、
何よりもお互いの瞳の色の、
しかも揃いのイヤーカフに
俺は嬉しかったが、
人前で披露するのは
恥ずかしくて仕方が無かった。
式の間もティスは堂々としていて
さすが、次期国王だと俺は感動した。
さすがにローガンさんの前での
誓いのキスは恥ずかしかったけれど、
ローガンさんの嬉しそうな顔に
俺も嬉しくなる。
父は俺が一番良く見える席に
居座って号泣していたが、
母だけは、式の最初の半分は
義兄のところへ。
残りの半分は
俺の式に参加してくれたらしい。
式が終わり、
俺とティスが部屋を出るとの
同じタイミングで、
義兄とルイも部屋から出てきた。
そこで一緒になり、
大聖堂の大きな扉の前に立つ。
すぐに父と母。
それと陛下と王妃様が
俺たちのそばに立つ。
扉が開くと、
大きな声援が聞こえて、
あちこちでティスや陛下を
呼ぶ声が聞こえた。
ついでに、愛し子様ー!
って声も沢山聞こえた。
陛下はその声に応えて
手を上げた後、
声を拡張させる魔道具で
俺たち2組の結婚が成立したこと。
そしてブリジット王国と
キングナイト王国との
友好宣言した。
おぉー!って
大きな声と、祝福の拍手が
耳が痛くなるほど聞こえてくる。
俺は圧倒された。
王族の責務や義務の重さを
初めて実感したと言ってもいい。
創造神の愛し子だの、
救済の天使だの、
多くの人たちに好意的に
そう呼ばれて、
好き勝手に支援して。
俺は国や世界を
救った気になっていたけれど、
そんなんじゃないんだ、って思った。
俺は様々なことを『力』を使って
解決することができたけれど、
王族は、いや、政治をする者は
それではダメなのだと気が付いた。
特別な『力』を使って
その場しのぎで問題を
解決してもダメだのだ。
長いスパンで国を見て、
この国民たちを
守っていかなければならない。
それが、王であり、
そうする責任があるのだ。
俺は今までの自分の甘えた
考えに気が付き、
頭を殴られたような気がした。
俺はティスのことを
全然理解していなかったのかもしれない。
将来、ティスがこの重荷を、
責務を負うのだ。
一人で背負わせるわけにはいかない。
俺がいる。
それに、ルイや義兄も。
クリムもルシリアンも。
国の体制もあり方も、
これから変えていこう。
ティス一人が頑張るのではなく、
みんなで王となるティスを
支えていくことができるように。
俺は集まってくれた
大勢の人たちの姿をしっかりと見つめた。
絶対に俺は、
この人たちを幸せにする。
俺の結婚式は、
その決意で締めくくることになった。
その後、結婚式も無事に終わり、
パレードもなんとかなった。
白馬に引かれた白い馬車に乗り、
俺たちは見世物のように
市内を走った。
笑顔で手を振り、
体感で2時間以上は走ったと思う。
その後、俺はお色直しと言われ、
またドレスを着せられた。
いや違った。
パンツスーツか。
いずれにせよ、
ドレスにしか見えないスーツを
着せられて、披露宴っぽい夜会で
飲み物を貰って、陛下の挨拶を聞き、
目の前にご馳走は並ぶのだが
一口も食べれないまま
ティスと一緒に笑顔を浮かべる。
俺は夜会会場の
一番奥のテーブル席に
ティスと義兄とルイと一緒に
座っていて、
ひたすら挨拶に来る人たちを
必死でさばいていく。
俺たちのテーブルのそばには
父と母が座るテーブルがあり、
逆隣には陛下と王妃様が座る席がある。
その周囲には前もって
招待していある高位貴族が
座る席があるのだが、
そこから少し離れた場所には
立席パーティーのように
テーブルと料理が用意してあり、
席に着くことができない
貴族たちの為の交流の場となっている。
もちろん、俺の学園の
クラスメイト達もその立席の場所にいて
様子をうかがいつつ、
俺たちにお祝いの言葉を
言いに来てくれた。
だがしかし。
疲れた。
助けを求めようにも
父も母も、来賓の相手に
大忙しだ。
ルイも義兄も、
ブリジット王国からお祝いに
来てくれた人たちの相手で
手いっぱいのようだし、
ティスと言えば
俺の隣にはいるものの
やたらと絡んで来る
高位貴族の相手で大変そうだ。
なんでもティスが
なかなか結婚しないので、
自分の娘を妃か側妃にしたいと
思っている高位貴族が
多かったらしい。
とはいえ、普段は
俺の父がいるから
そんなことも言えるはずもなく、
ようやく結婚式でティスに
愚痴を……ではなく、
残念です、とかそう言うことを
訴えにきているようだった。
それも一人や二人ではないので
ティスは大人気だったらしい。
まぁ、ティスは可愛いし
カッコイイからな。
わからんでもない。
そして俺は。
可愛い女子たちに囲まれている。
メイジーとエミリーと
その友人たちらしいが
やたらと俺を可愛いと褒めちぎり、
その髪型はどうしたとか、
イヤーカフはどこで入手したのかとか。
肌の手入れはどうとか、
俺では返事ができないことを
聞いて来ては、何故か
キャーっと黄色い悲鳴を上げる。
女子、謎過ぎる。
「それで、アキルティア様。
プロポーズは王家の奥の庭だったとか」
エミリーがぐいぐいと聞いて来る。
「う、うん、花を一輪、
ティスが手折って差し出してくれて」
「それが、その髪飾りの
花ですのね!?」
そうなのだが。
俺が頷くと、また女子たちが
キャーと悲鳴をあげる。
よくわからないし、
もう、帰りたい。
クマを抱っこして眠りたい。
それにお腹空いた。
早くタウンハウスに戻れないかな?
俺は遠い目をしてしまった。
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