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愛溢れる世界
243:結婚準備
しおりを挟むそれからはもうあっという間に
色んなことが決まった。
俺の婚約式と結婚式の日取りや
隣国への外遊の日程。
俺は卒業するまでは
公爵家で生活するつもりだが、
いつ何があっても大丈夫なように
ルイと同じように卒業できるだけの
単位と成績を収めておくことにした。
高等部は専門的な分野を
学ぶことを基本としているので
必要な科目を学び、
テストで一定ラインの成績を取る。
そして師事している教師に
卒業の資格があると認められれば、
生徒は望めば飛び級で
卒業することができる。
ルイはすでに魔法学の教授に
卒業の資格ありと認められていて
テストもティスの学年が学ぶ内容の
テストを受けて、合格も貰っている。
俺もそれを目指すことにした。
クリム達と一緒に
卒業するつもりではいるが
俺はティスが卒業したら結婚する。
公務で学園に行けない日も
出てくるかもしれないし、
のんびり学園で学んでは
いられない日もあるかもしれない。
俺がそう言うと、
クリムとルシリアンも賛同して
一緒に、一学年上の内容も
率先して学ぶようになった。
俺はティスと一緒の授業を増やし、
ルイと一緒の魔法学の教授の元に
何度も通った。
それからサリーが
タウンハウスの執事である
キリアスと結婚した。
式は公爵家の庭を使って
ガーデンパーティーにしたのだが
幸せそうなサリーに
俺はもらい泣きをしてしまう。
サリーは俺が嫁に行っても
必ず侍女としてついて行くし、
それまでに乳母となれるよう
子どもを生む、とまで
言ってくれている。
子どもは授かりものだので
そううまくいくかはわからないが
その気持ちはものすごく嬉しい。
俺とティスの結婚式の準備は
母と王妃様が張り切っていたし、
ルイと義兄の結婚式の準備は
隣国から使節団みたいな人たちが
この国に長期滞在して
この国の文官たちと頑張っている。
俺も最初は手伝っていたが、
義兄もルイも結婚式に
こだわりは全くないので
式の内容も衣装もすべて
隣国の人たちにお任せすることにした。
この国のしきたりや考え方に
囚われずに、ルイの国の
考え方に合わせますよ、
という意思表示でもある。
ついでに義兄たちは
結婚式に着る服や
装飾品はブリジット王国から
贈られて来たものを着るのだとか。
結納品みたいなもので
結婚式はキングナイト王国がするので
その変わり、装飾品や衣装は
ブリジット王国持ちということで
両国王の間で取り決めがあったらしい。
もちろん、ルイと義兄はそれを着て
ブリジット王国でも結婚式を挙げる。
俺とティスは外遊として
それについて行き、
帰りはルイと義兄と一緒に
スクライド国を回って帰国する予定だ。
かなり大がかりなことになってるし、
ついでに俺の婚約式は
結婚式の1か月前にすることになった。
すでに婚約してるんだけどな。
そして婚約式の1か月前から
婚約を祝う市が立ち、
婚約式が終わったら、次はまた
1か月間、結婚式を祝う市が立つ。
そして結婚式の後もまた
1か月、今度はブリジット王国と
キングナイト王国の親睦を祝って
市が立つことになった。
市に参加したいという商人たちから
数多くの申し込みがあるらしいが、
さすがに全員というわけにはいかない。
そこで審査をして合格した店を、
市に出店できる期間を短く設定し、
順番に割り当てていけば、
3か月もあればなんとか
なるのではないか、と言う話になったのだ。
ほんと、お祭り騒ぎだ。
出典希望の店の中には
ブリジット王国を拠点にしている店や
スクライド国の商人もいる。
ブリジット王国は海を挟んで
他国との貿易もしているので
手広くしているだろうし、
スクライド国もようやく経済が
落ち着いてきた。
俺が『力』を使ったせいか
農作物は豊富に採れるようで
それを利用した食品や菓子を
販売したいらしい。
あと、もともと戦うことに
特化した国だったので、
剣などの刃物に関しては
かなりの技術がある。
なのでその技術を応用して
剣や包丁のようなものだけでなく
農具なども開発して
少しの力でも大きく畑を
耕すことができる鍬や鋤の
生産も増やしているので
市ではその実演販売も考えているらしい。
そんな話を俺はティスや
義兄、ルイから聞きつつ、
必死で勉強した。
俺は暗記が苦手なので
それ以外は楽勝なんだけどな。
俺は別に結婚式に関しては
こだわりもないし、
母や王妃様が楽しそうに
決めているので口を出す気もない。
だが、ティスは少しだけ
不満だったようで、
「ルティアが着ける耳飾りだけは
僕が選んだからね」と
この前会った時に俺に力説してきた。
なんでもこの世界では
結婚指輪という習慣は無いが、
愛を交わした二人は
イヤリングやハングルなど、
お揃いのアクセサリーを付けるのが
一般的らしい。
ティスは結婚式では俺と
お揃いのイヤリングを付けるらしく
それはそれは楽しそうに
自分がデザインから考えたのだと
俺に語ってくれた。
俺、何もしてなくてごめんな。
って思ったが、俺が下手に
結婚式に口出しするよりも
ティスと一緒に卒業できる資格を
取得する方が有意義な気がするので
俺は笑顔で「嬉しい」「ありがとう」を
ひたすら言うだけだ。
それに結婚式はするが
俺は公爵家で生活するし、
陛下も俺が卒業するまでは
公務とか、必要な時は王宮に
来て欲しいが、それ以外は
公爵家で生活をしても構わないと言われている。
ちゃんと王子妃用の部屋は
準備してくれているようだが、
結婚後1年間は、そんなに
使う機会はないかもしれない。
だって、父が。
物凄く父が不満そうな顔なのだ。
結婚の話が出る度に
母が父を宥めている。
ここで俺が
「王家に嫁に行ったら
それっきり、実家に顔も出しません」
なんてことになったら
父は大暴れすると思う。
そんなこんなで俺は日々忙しく、
結婚するということは
頭では理解していたが
何の実感もなく、
あっという間に1年が経ってしまった。
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