完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

文字の大きさ
上 下
291 / 308
愛溢れる世界

241:プロポーズ再再

しおりを挟む
  
 ティスは俺を見つめた。

俺はティスの言葉を待つ。

その瞳は真剣で、
俺は心臓がドクドク鳴った。

何を言われるのだろう。

今更結婚は無かったことに、
なんてことはないとは思うが。

「あのね。
実は今、僕とアキの結婚を
一年後にしようと言う話が
議会に挙がってるんだ」

「は?」

俺は思わず真顔になった。

「きっとね、このまま順調にいけば
ルイ殿下とジェルロイドの結婚は
一年後になると思う」

その言葉に俺は頷く。

「ルイ殿下は学園の卒業には
拘っていないようだし、
この国では未成年とはいえ、
隣国の王子だし、
何も問題はないと思う」

そう、この国では
成人は18歳だが、
それはこの国のこと。

ルイは隣国の人間なので
その枠に縛られる必要はないのだ。

「そしたらね、
ルイ殿下と同い年のアキも
私と結婚できるのではないかと
言い出す者がいて」

いやいや、
それはそもそもの
条件が違うのでは?

俺はこの国の人間で、
ルイはブリジット王国の人間だ。

そこ、理解してる?

俺の脳裏のツッコミは続くが
ティスは言葉を続けた。

「私は来年には成人するし、
夫婦のどちらかが成人していて、
しかも私は王族だし。

特例で認めても良いのではと
言う話になっているんだ」

いやいや、俺はかまうよ?
うん。
大事だろう、成人か
未成年かの違いは。

「あとね。
僕とルイ殿下の結婚式を
同時にしたら、
経済効果も大きいと予測されている」

「経済効果?」

「うん。
この国と隣国の王子の結婚式だから
注目度は高い。

ブリジット王国も相乗効果を
願っているらしくて。

二つの結婚式を
同時に挙げることで、
それに合わせて約一か月間、
王都に市を立てる案も出てるんだ。

それに結婚の挨拶を兼ねて
ブリジット王国だけでなく
スクライド国にも行く必要がある。

それなら、ルイ殿下と一緒に
新婚旅行も兼ねて
両国に行けば、相手国も
準備などは一度で済むし
負担も減るのではないかと」

なるほど。
毎年、隣の国の王族が
結婚したと言いに来るよりも、
一度に済ませてしまった方が
ラクチンだということか。

それに大きな結婚式が
二つも重なるなら、
大きな市を長期間開催する理由にはなる。

市が立つ期間が長ければ、
ブリジット王国やそれこそ
スクライド国からも
商人たちが来やすいだろうし、
平民たちだって、国境を越えて
見に来る人たちがいるかもしれない。

そう考えると、
良いことばかりな気がする。

……そう。
俺の気持ちと覚悟の問題を
考えずにいれば。

「そ、それでね。
アキ、僕と……結婚してくれる?」

ティスが不安そうに俺を見る。

ティスが、私、ではなく
僕、と自分のことを言う時は
本心だと言うこと。

そして不安だったり、
傷付いていたり、
寂しがってたりする時に
僕、と言うことが多いことも
俺は知っている。

だから返事は「うん」なのだが。

プロポーズの返事は何度もしている。

だから、結婚してくれる?の返事は
「うん」だ。

でも「今すぐ結婚してくれる?」の
問いに関しては……。

「ダメ?」

と上目使いで俺を見るな。
可愛い顔しても、ダメだからな。

考える時間をくれ。

「それにね。
父上と公爵殿がこの件に関しては
今、話合っていて」

そうだ、父だ!
父がそんなことを許すはずがない。

「結婚と結婚式は一年後だけれど、
アキが学園を卒業するまでは
無理に王宮に住む必要はないし、
何なら公爵家の領地や
タウンハウスから必要な時だけ
王宮に通ってくれればいい、って
話になってる……みたい」

なんじゃそりゃ。
通い婚か?

なんか俺とティスが
結婚したと言う事実さえあれば
いいと思われてるようだ。

事実、そうかもしれないが。

「僕はね、アキと、
アキルティアと早く結婚したい。

早くアキルティアと籍を一緒にして
誰にも取られないようにしたいんだ」

ティスが手を伸ばして
俺の手を取る。

「だってアキルティアは
社交界にデビューしてしまった。

これから多くの人たちが
アキルティアのことを好きになると思う。

ブリジット王国の人たちだって、
もしかしたらルイ殿下の
兄上だって、
アキルティアを見たら
好きになってしまうかもしれない」

いやいや。
そんな心配はする必要ないです。

そう言いたいのだが、
あまりにも真剣なティスの顔に
俺は何も言えなくなってしまう。

「アキルティアは嫌?
僕と結婚するのは、やっぱりダメ?」

ダメじゃない、ダメじゃないのだが。

「え、あ、う」

「僕のこと、好き?」

好きだけど。
そうだけど。

「あぅう」

「アキルティア?」

悲しそうな顔で見つめられ、
手をぎゅっと握られる。

「ティス、のことは好き。
ずごく、好き」

俺はなんとか声を出す。

「結婚も、ダメじゃない」

でも、すぐにと言うのは
覚悟が決まらないんだ。

俺はそう心で呟いたのに。

「良かった!」

ティスはものすごい笑顔になった。

「公爵殿には、アキルティアが
了承したら、って言われていたんだ」

「え」

「ありがとう!
アキルティア、
絶対に幸せにする」

え?
待って?

そうじゃなくて、ですね?

「愛してる、アキルティア」

そう言って、ティスは立ち上がり
俺のそばまで来ると
身をかがめて俺を抱きしめてくる。

いや、待って?
これ、俺が一年後の結婚を
了承したことになってる?

でも、俺は結婚式はしても
生活は今まで通り??

待って、ほんと、待って?

「ずっと一緒だ、ルティア」

耳元に寄せられたティスの唇が
俺の耳たぶに触れた。

ふに、とティスの唇が
俺の耳たぶをむ。

な、な、なんてことをー!!

俺はそれで考えていたことが
一気に吹き飛んだ。

耳、耳たぶを食われた!
しかも、舐められた!

ティスの身体を押すと
ティスはすぐに俺から離れた。

が。

「ふふ、顔が真っ赤で
可愛い、ルティア」

そう言うティスに
俺は何も言えずに、
身体を熱くして口を
パクパクするだけだった。


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...