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閑話9

俺の可愛い可愛い息子は天使が過ぎる・1【父SIDE】

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 俺の可愛い可愛い息子は天使が過ぎる。

いや、言葉の使い方がおかしいかもしれないが、
そうとしか言いようがない。

俺の可愛い息子は幼い時から天使だった。

それは可愛くて天才で、天使で
たまに小悪魔で堕天使にもなった。

だがそんな息子は成長して
創造神の愛し子にまでなってしまった。

たとえ創造神であろうと
可愛い息子の父親は俺だ!

と神殿に乗り込んでやろうと
思ったが、愛し子という名は
可愛い息子が自分でつけたと言う。

「僕の大好きな父は
とーさまだけですよ」

と甘えた声で言う息子に
俺は仕方なく創造神の愛し子と
息子が名乗ることを許した。

するとそこから息子は
その名を最大限利用して
動き始めた。

隣国の王子やジェルロイドや
ジャスティス殿下まで巻き込み、
この国をどんどん発展させていく。

王家と仲違いしていた
神殿とも協力体制を築けたし、
その手腕に王家だけでなく
貴族たちも可愛い息子を
褒めたたえた。

だが息子が活躍すればするほど、
創造神の愛し子の名は
どんどん広まり、
隣国にまで届くようになった。

息子は本当に創造神から
『祝福』や『稀有な力』を
貰っているらしく、
ジャスティス殿下だけでなく
息子まで隣国から
狙われる可能性が出て来た。

それでなくても
息子は可愛くてしかも
紫の瞳を持っており、
誰もが手に入れたくなるような
存在だと言うのに。

護衛をどうするか、
息子を守るために学園に
通わせるのをやめようかと
考えていた時、
隣国の王子からとんでもない
情報がもたらされた。

開戦の予兆だ。

驚いたが、ありえない話ではない。
スクライド国の状況は
王家の影から聞いて知っていた。

だがスクライド国に
ブリジット王国が
関わってくるとなると話が変わる。

実際に戦争が始まるとなると
国民にも被害が及ぶ。

どうするかと頭を悩ませていたが
これまた、天使な息子が
創造神の力とやらを使って
どんどん解決していく。

天使な息子は可愛い顔をして
隣国の王子やジェルロイドにまで
指示を出し、

俺や陛下の顔を立てながらも
戦争を回避させ、
スクライド国を立ち直らせた。

可愛い息子はスクライド国では
救済の天使と呼ばれるようになり
スクライド国の城下町を
歩けば多くの住民が
可愛い息子に感謝と
祈りを捧げると言う。

おかげでこの国と
スクライド国の関係は
表向きは対等だが、
可愛い息子がいる限り
スクライド国はこの国の
属国になったようなものだ。

おかげで可愛い息子の活躍や
その手腕にこの国の貴族たちは
「やはり王妃になるのはこの方しかにない」
と声を大きくしはじめた。

今までそのような声は
俺を気にして誰も声高に
言うことはなかったというのに。

冗談じゃないぞ。

誰が可愛い息子を嫁になんぞやるか!

と、俺が貴族たちの声や
陛下や王妃の声までも
退けたから天罰が下ったのだろうか。

スクライド国の支援が軌道に乗り、
ようやく息子たちにも
そろそろ休息を与えようかと
そんな話が出た時だ。

可愛い息子が頬を赤く
染めている姿を見かけた。

ジャスティス殿下と他愛のない
話をしているようだったが
殿下はともかく、
可愛い息子まで何故、
そんな恋をしているような
表情をしている?

まさか俺の息子が
恋をしているだと!?

俺は衝動的に二人の仲に
大きな声を出して割り込んだ。

可愛い息子を抱き上げて
幼い頃からしているように
頬にすりすりする。

俺が割り込んでも
殿下は何も言わないが
可愛い息子は唇を尖らせて
俺に文句を言う。

そういう姿も息子は可愛い。

だが俺は息子の顔を見ながら
ちゃんと息子が俺のことを
許してくれているのかを確かめる。

俺が可愛い息子を愛しすぎて
行動することで、
息子に嫌われることが
あるかもしれないと、
以前、俺は思い知ったからだ。

それはスクライド国との
ゴタゴタが始まる前のことだ。

ある日、可愛い息子が熱を出してしまった。

可愛い息子は幼い頃から
ずっと体が弱かったが、
熱を出したのは久しぶりだった。

報告を受けて俺は慌てて
可愛い息子の元に駆け付けた。

すると息子は……
俺の可愛い息子は、
大泣きに泣いたのだ。

赤子の時以来だろうか。
いや、赤子の時でさえ、
こんなに泣いたことはない。

不安からか、
何故、こんなに泣くのか
わからなかったが。

このように感情を
むき出しにする息子の姿を
俺は初めて見た。

俺はどうしていいかわからず
おろおろするばかりだ。

しかも妻に会いたいと言う。

願いをかなえてやりたいが
夜中だったし、
寂しいのであれば
俺がそばにいてやると伝えたが
俺は息子に拒否された。

人生で初めての拒否だ。

俺は声も出せなかった。

俺は息子が泣き疲れて眠るのを待ち、
領地に早馬を送った。

翌朝一番に、息子を
妻の元に届けるためだ。

もう可愛い息子は
「とーさま大好き」と
言ってくれないのだろうか。

俺は落ち込むが
仕事は待ってくれない。

俺は辛い気持ちを引きずり
仕事に向かったが、
息子は落ち着いてきたのだろう。

日を重ねるにつれ、
可愛い笑顔を俺に
向けてくれるようになった。

俺はほっとした。
まだ俺は息子に愛されている。

そう安堵した矢先だ。
スクライド国との開戦の
情報がもたらされたのだ。

そして今、ようやくその
ゴタゴタも終わろうとしていたが、
問題が無くなった筈なのに
突然、兄である陛下に呼び出された。

指定された部屋にいくと
陛下と何故か隣国の王子がいた。

人払いされた後らしく
俺が扉を閉めると
部屋には3人だけになる。

静まり返った部屋で
陛下が口を開いた。

「今回のスクライド国の件で
ブリジット王国からの
情報協力は得難いものだった。

もちろん、その後の
ルティクラウン殿下の
この国の貢献も
大いに助かるものだ」

俺は頷く。

「そこでこの国の王として
ルティクラウン殿下に
何か望みはないかと聞いたのだが……」

そう言って陛下は言葉を濁す。

言いづらいことでも望まれたのだろうか。

それを叶えるために
俺の手が必要だと言うことか?

俺が顔をしかめたのに
気が付いたのか、
隣国の王子、
ルティクラウン殿下が
陛下に発言の許可を得る。

「じつは公爵家に
婿入りしたいと願い出ました」

ルティクラウン殿下は
驚く発言を物凄い笑顔で言う。

婿入りだと?
俺の可愛い息子が欲しいだと?

俺は怒りのあまり
勢いよくソファーから
立ち上がってしまった。


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