完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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高等部に進級しました

189:紫の魔力の秘密

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 「すごいわ!」

すぐに母の身体は
ソファーに戻ったが、
母は大興奮だった。

「はい、凄かったです」

俺は大きく頷く。

「母様。
慣れないうちは危険なので
ソファーに座ったままか
ベットで試してみてくださいね」

へたに床に立って試してみて
怪我をしたら大変だ。

俺がそう言うと
母は、わかったわ、と頷いた。

「僕は思ったのですが。

紫の魔力は常識では
考えつかないことが
出来る魔力だけれど、

使う本人ができないと
思っていることは
できないと思うのです」

誰しも、自分ができないと
思っていることを
本気で取り組もうとはしないし、
どうせできないと
思って行動しているのだから
できるはずがないのだ。

でも、それが

それは、できる。

母は自分の身体が
女性になることも
子どもを生むことができるのも
最初から知っていた。

だからそれができたのだ。

今まで宙に浮くということが
できなかったのは、
母ができることを
知らなかったから。

できると思っていなかったから
できなかったのだ。

でも俺が宙を浮く姿を見て
やればできることを
母は理解した。

だから宙に浮くことが
できたのだと思う。

俺がそう説明すると
母は「確かにそうね」と呟いた。

「あなたが実際に
宙に浮いている姿を
見ていなかったら、
出来るとは思わなかったわ」

母はそう言い、
俺を抱きしめてくれた。

「やっぱりあなたは凄いわ、
アキルティア。

母様一人ではきっと
何もできなかったと思うもの」

身体が楽になった気がするの、と
母は嬉しそうに笑う。

「僕はこれから
他にもできることがないか
探してみます。

何かわかったらすぐに
母様にも伝えますから、
待っててくださいね」

「えぇ、もちろんよ。
あなたと避暑地の別荘に
遊びに行く日も
そう遠くないかもしれないわね」

俺は母の言葉に、はい、と
返事をした。

今まで紫の瞳を持つ者は
身体が弱く、短命だったと
言われているが、それはきっと
魔力が多く、強すぎたせいだ。

だから俺が
その説は間違っていたと
証明することが出来れば、
俺も母も。

この後、この世界に
転生してくるかもしれない
紫の瞳の転生者も、
もっと楽に生きることができると思う。

よし、やるぞ。

俺は急に元気が出て来た。

俺は魔法に関しては素人だが
前世の記憶がある分だけ
この世界の魔法の常識に
囚われることはない。

漫画やアニメの知識があるから
魔法で出来ると思えることは
いくらでも思いつく。

だから逆に、
この世界の魔法を、
この世界の魔法の常識を
もっと学ぼう俺は思った。

常識を知るからこそ、
その世界の非常識が理解できるのだ。

俺は決意を新たに、
夕方まで母と一緒に
紫の魔力について話合ったり、
体内の魔力を探ったりした。

一人ではできなかったことも
同じ紫の魔力を持つ母がいれば
思いついたことを
試すこともできるし、
自分の魔力を客観的に
見ることもできた。

物凄く濃く、
有意義な時間だったと思う。

それに俺も母も体内に
魔力が有り余っていたようで
かなりの魔力を使った筈なのに、
疲れるどころか、
逆に元気になったような気がした。

肩こりでマッサージをしたら
血流が良くなったとか
そういう感覚だと思う。

あちこちで滞っていた魔力が
使うことによって
上手く流れるように
なったような気がするのだ。

母も同じようなことをいうので
あながち、間違っては無いだろう。

そうやって俺と母が
魔力を試し合っていたら
あっという間に夕方になり、
義兄が迎えに来てしまった。

俺もきっと母も、
物足りない気はしていたが
無理に魔力を使い続けるのも
良くないだろう。

急がなくても良いだろうし、
俺は母に「また帰った時に
色々試しましょう」と
言うことにした。

母も頷いて、
待ってるわ、と言う。

俺も母も、義兄には
魔力のことは言わなかった。

父にも、ルイにも、
まだ内緒にしておこうと
母と相談して決めたのだ。

なにせ過保護な家族だから
知られてしまうと
メンドクサイことになりそうだし

ルイに関しては
話しても良いかとは思ったが、
紫の魔力は俺と母しか
持っていない魔力なのだ。

ならば、それ以外の
緊急性のある研究に
時間を割いてもらった方が
良いだろうと判断した。

ただ、俺と母が
ぞれなりに魔力を
使えるようになったら
ちゃんと説明しようと
母と約束はしている。

俺と母の様子に
義兄は首を傾げていたが、
何も言われなかったので
俺はそのまま母に別れを告げて
義兄が乗って来た馬車に乗り込んだ。

「そういえば兄様、
ルイは?」

一緒に来るとか言ってなかったっけ?

俺がルイの名を出すと、
何故か義兄が動揺したように
大きく体を揺らした。

「兄様?」

「あ、いや、
ルイ殿下は……まだ学園にいる」

「そうなんですね。
一緒に来るかと思ったので」

「あぁ、ただの迎えで
ルイ殿下の手を煩わせるわけにも
いかないだろう。

だから学園が終わる前に
アキルティアを連れて
タウンハウスに戻ることにした」

なるほど。
だから夕方には
まだ早い時間なのに
義兄は来たのか。

今は夕方といえば夕方に
近い時間だったが、
少し早いと思ってたんだよな。

ただ単に義兄の仕事の都合かと
思っていたが、ルイに対する
配慮もあったらしい。

しかし、何故だろうか。
義兄の様子がおかしい気がする。

「兄様、何かありましたか?」

俺は義兄に聞いてみたが
義兄は、何もないと首を振る。

その返事自体がすでに変なのだ。
変なのだが。

義兄はもう俺の弟ではないし、
無理に聞き出そうとして
前世と同じように
あぁ、わかった、しつこい、
とか言われたらめちゃくちゃ
自分がへこむことはわかっている。

だから俺はものすごく
義兄の様子が気になりはしたが
頑張って、そうですか、と
頷くだけで留めておいた。

しかし気になる。

昨日領地の屋敷で会った時は
普通だったのに。

ルイと何かあったのだろうか。

今日はわざとルイを
置いてきたみたいだし。

ルイに会ったら
一度聞いてみるか。

俺は横目で義兄を見つつ
そんなことを考えた。

そう、俺は母と魔力の
検証をしたり、
義兄の様子が気にかかり、
自分の問題が何も
解決していないことを
すっかり忘れていた。

思い出したのは
翌日、学園に着いて
ティスの姿を見てからだった。


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