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創造神の愛し子

147:ルイと登校

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 俺がゲストハウスで
目を覚ましたら、
すでに皆は起きていて、
朝の支度を始めていた。

朝ご飯はタウンハウスで食べるのだ。

「アキルティア、起きたか?」

義兄に言われて
俺は目をこすりながら頷く。

「おはよう、アキ」

ティスがすぐに僕の手を握る。

寝坊したか?

ティスはすでに外出着を着ていた。

「ごめんね」

うん?
なにが?

「もっと一緒にいたかったんだけど、
王宮から迎えが来てしまったんだ」

しょんぼりとティスは言う。

朝ご飯も一緒に食べる時間もないなんて
やはり王子は大変なんだ。

「そうなんだ。
残念だけど、またいつでも
遊びに来て。

それに、学園の魔法学は
一緒に受けれるよ。
ね?」

その言葉にティスは
嬉しそうに頷いた。

すでに着替えていた義兄が
「殿下、そろそろ」と声を掛け、
ティスはルイにも挨拶をした。

良かった、目が覚めて。

寝坊したらティスを
見送れないところだった。

と言っても、
俺は寝間着だから
部屋の扉までしか行けないけど。

俺は残念そうなティスに
「またね」と送り出す。

ティスは頷き、
手を振ってから
義兄を連れてサンルームを出て行った。

「今日は学園に行くか?」

ティスを見送った俺に
ルイが聞いて来る。

「うん。
休んでばかりはいられないし」

「じゃあ、俺も制服を着るか」

ルイも今日は学園か。
というか、俺が行くから
学園に行くじゃなくて、

俺が行っても行かなくても
学園には行かないとダメなんだぞ。

特にルイは留学生なんだし。

「朝ご飯はタウンハウスで
一緒に食べるんだよね。
先に行って待っとくよ」

俺も着替えないとだめだし、
先に戻ろう、そう思って
ルイに声を掛けたが、
ルイは「待て」と言う。

「何?」

「一人で、こことタウンハウスを
行き来するような真似は
絶対にさせるなと、
厳命を受けている」

「……父か」

俺は唸った。
どこまで過保護なのか。

「待ってたら
弟君が戻ってくるか、
タウンハウスから侍女か
護衛が来るから、ちょっと待ってろ」

とルイが言い終わる前に
義兄が戻って来た。

どうやらティスを
王家からの馬車に乗せて
すぐに戻って来たらしい。

「アキルティア、
今日の学園は……」

「行く」

俺が言うと、
義兄は仕方ないと言う顔をする。

「くれぐれも無理はしないように。
神の場所に行ったばかりだ。

体調にどんな変化があるか
わからないし
それに……」

「大丈夫だ。
俺がついてるからな」

義兄の言葉をルイが遮る。

「学園では俺が面倒見るから
安心しろ」

胸を張るルイに
俺は思わずツッこむ。

「ルイに面倒を見てもらう程
俺は子どもじゃないぞ」

それに、同い年だろう。

「13歳は子どもじゃないが、
アキルティアは子どもだ」

義兄が呟くように言う。

なんだと?!

前世兄に対して
なんて言い草だ。

俺のどこが子どもなのか
じっくり聞かせて貰おう。

と、俺が義兄に口を
開きかけた時、
玄関口から呼び鈴が鳴った。

来客?
こんな朝早くから?

と思ったが、
俺たちが玄関に行くまでもなく
サンルームにサリーと
キールが顔をだした。

どうやら二人が
俺を迎えに来たらしい。

「アキルティア、
先に二人とタウンハウスに
戻って着替えておいて」

義兄に言われ
俺はうなずく。

義兄はルイを見て
「ルイ殿下も着替えたら
タウンハウスへ」

「わかってるよ。
じゃあ、あとでな」

ルイは片手を上げて
サンルームを出て行く。

きっと部屋で着替えるのだろう。

「兄様は?」

「私は、このまま王宮へ行く」

「朝ご飯も食べずに?」

「ティス殿下に呼ばれている」

えーっ。
二人で王宮の朝ご飯を食べるのか?

別に羨ましくないけど
俺も一緒に食べたかったな。

せっかく4人が揃ってたのに。

「学園はルイ殿下と一緒に行くように。

今日は王宮に
神殿から使者が来るらしい。

もしかしたら、学園が終わったら
ルイ殿下と一緒に
王宮に来てもらうかもしれない」

「わかった」

それで朝早くから
ティスも義兄も呼び出されたんだな。

神殿か。

創造神の神子、なんて
呼ばれるのは絶対に嫌だけど
俺、思ったんだよな。

国を超えて、
世界を繁栄させようと思ったら
やっぱり宗教だって。

だって、創造神は国を超えて
この世界の人たちが
信仰している神だから。

その創造神を信仰している人たちに
国の利益を重視している人は
あまりいないんじゃないかと思うんだ。

だから、
創造神を信仰している人たちに
協力してもらえたら、
世界も変えられるんじゃないかな。

まぁ、父のように
神殿や教会どころか
創造神にすら興味が無く、
ましてや喧嘩まで
売ろうとするような人間も、
どこかにはいるかもしれないが。

そんな存在は稀だと思う。

一度、あの
おじいちゃん大神官に
話をしてみようかな。

俺はそんなことを考えながら
サリーとキールに連れられて
タウンハウスに戻り、
制服に着替える。

食堂に行くと
すでにルイは着ていて、
俺たちは朝食を食べて
すぐに馬車に乗って学園に向かった。

「アキラって、昨日の夜は
あんなに菓子を
食べてたのに、
朝は小食なんだな」

馬車の中でルイは
呆れたようにそんなことを言う。

「一度にあまり多くは
食べられないんだよ。
でも甘いものは別だ」

「……すごいな。
お菓子を食べたいと言う欲求が
体質さえも凌駕するんだ」

純粋に感心したように
言うのはやめて欲しい。

ちょっとだけ、恥ずかしい。

それに馬車の中だけど
声は外にも聞こえるから
アキラ、アキラと
呼ばないようにして欲しいのだが
それも今は言えない。

だって、聞かれるかもしれないし。

「どうした?」

「なんでもない。
それより、王宮にできた部署のこと
クリムとルシリアンに
言うか言わないか、迷ってる」

ティスの側近候補の2人だ。

いずれは知ると思うけれど、
仲間になってもらうかどうかは
俺の一存では決められない。

「そうだな。
当分は様子見でもいいんじゃないか?
焦らず、ゆっくりでいいだろ」

確かにそうか。

説明できることがあまりなくて
2人に黙っているのが
心苦しかったけれど、
焦って決める必要はないよな。

「まだ方向性も決まらないわけだし」

「……確かに」

俺はうなだれたくなる。

王宮で資料を集めて
どう改革を進めればいいのかを
ルイたちと話はしているが、
どれもこれも、現実的に
実行できそうなものがない。

せめてパソコンがあって
データを入力したら
シミュレーションできるとか
そういうのができたら良いのに。

「はっきり言って、
今現在では起動力がない。

資料を整理するので
手いっぱいだしな。

せめて資料集めを
してくれる人間が欲しいが
俺たちはまだ学園に通う
子どもだからな。

好きで俺たちの部下に
なるやつはいないだろう?」

ルイは俺を見る。

「本格的に動けるように
なるまで……そうだな。
せめて学園を卒業するまでに
資料を集め、方向性を
決めて行けばいいんじゃないか?

それまでは下準備と根回しだ。

営業だって、飛び込みで
案件を取れることなんて
めったにないしな。

下準備をして、
相手のことを研究してるから
仕事を取ってこれるんだぜ」

「おぉーっ!」

さすが、営業成績トップの男の
言うことは違う。

俺が尊敬のまなざしで
ルイを見ていると
馬車が止まった。

学園に着いたらしい。

ルイは俺が感動したからか、
ものすごーく得意な顔をして
馬車を下り、俺に手を差し出す。

「そのニヤニヤ笑いはヤメロ」

俺は言いつつも
ルイの手を取り、馬車を下りた。

馬車はステップの1段が高いから
手を借りた方がおりやすいのだ。

「アキ様、おはようございます」

馬車を降りた途端
俺はクリムに声を掛けられた。

「……っ。おはよ」

ビックリした。
なんだろ。
クリムの様子が少し変だ。

もしかして俺を待ってたのだろうか。

なんかあったのかな。
心配だ。



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