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世界の均衡

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 俺は立ったまま、
身体を陛下の方へ向けた。

こうすると父も視界に入る。

「僕は、創造神とお茶を飲んだんです」

俺がそう言うと、
陛下は深く頷いた。

話を続けろと言われたと
俺は判断しする。

「創造神は姿が見えなくて
声は頭の中に
響いてくるみたいでした」

クマとお茶会をしたことは
話すのを控えておいた。

メルヘン過ぎるからな。

ただし、不思議な場所で
気が付くとイスとテーブルがあり、
そこでお茶を飲んだとだけ告げる。

「僕は魔力が……僕の持っている
紫の魔力が、今までの
紫の瞳を持つ人たちよりも
多い、みたいです」

俺は言葉を選ぶ。

魔力が多いならそれを利用しよう、
みたいな流れにならないように。

それこそ、ルイの国と
戦争だ! とかにならないように
紫の魔力がどんなものかは
言わない方向で話を進めたい。

「そのおかげで創造神と
交流できる場に呼ばれて。

その場所が、神殿奥の森だったんです」

俺がそう言うと、
陛下は、なるほど、と頷く。

「あの聖域の森に
突然、飛ばされたと言うことだな」

そう言われ、俺は頷く。

「きっと、そうだと思います。
創造神と会話している時は、
僕の無意識の中だったから
気にならなかったけれど。

現実的な僕の身体は
あの森にあったのだと」

だって、
あの森にいることに
いることに気が付いたら
急に肌寒く感じたもんな。

身体も冷えていたし。

身体はあの場所にあって
意識だけが、カミサマの
あの場所に飛ばされたと
考えるのが妥当だ。

「創造神はとても
大きな力を持っていて、
人間と普通に話をすることは
かなり危険だということでした。

畏怖のようなものを
人間が感じてしまい、
その者が壊れてしまう
可能性があるのだとか」

俺の言葉に驚いたのか
背中に触れていた父の手が、
俺の背を軽く押す。

だが、大丈夫だ、父よ。
俺は別格なのだ。

俺は父を見て
笑顔を作って見せた。

「創造神は今、この世界で
人間の人口が減っていることに
嘆いている……みたいでした」

嘆いてはないな。
気が付いたばかりだったみたいだし。

でもそれを言うと
神様はこの世界を作った後、
人間たちのことを全然全く
気にしてなかったことに
なってしまうから、
それは言わない方が良いと思う。

「そこで僕は言ったんです。
女性の出生率が下がってるから
子どもが生まれる数が
減ってるからだろうと」

陛下が身を乗り出した。

「それで?
創造神はなんと?」

「たぶん、ですけど。
女性の出生率を上げることは
できるような感じでした。

ただ、この世界の人間の数を
ただ増やすだけでいいのか?と。

それでこの世界は
発展するのかと創造神は
僕に聞いてきたんです」

その言葉に陛下は口を閉ざした。

横目で父を見ると、
父も難しそうな顔をしている。

「僕は思ったんです。
都市部と地方では
環境も状況も違うだろうし、
やみくもに女性が増えても
問題は解決しないんじゃないかって」

そうだな、と陛下と父が
同時に呟いた。

「そしたら創造神は
僕になんとかするように、と」

「は?」
と言ったのは父だ。

目を見開いて父が俺を見る。

「僕は、無理って
言ったのですが、
僕には助けてくれる者が
そばにいるだろう、と言われて」

俺は陛下と父を交互に見る。

「その後、急に創造神と
話が出来なくなってしまって。

気が付くと僕は
あの森に立っていたんです。

創造神と長く会話をするのは
僕の身体がもたないみたいで。

時間切れのようで
会話は途中で終わってしまいました」

俺がそこまで言うと
陛下も父も黙ってしまった。

沈黙が続き、父が俺に言う。

「創造神はアキルティアを
助ける者は誰だと?」

俺は首を振る。

「わかりません。
ただ、僕のそばには
僕を大事にしてくれる人も、
僕を信頼して力を貸してくれる人も
たくさんいます。

誰、と明確に創造神は
言わなかったけれど、
きっと僕のまわりには
この状況を何とかできそうな
人たちが集まっていると
言いたかったのではないでしょうか」

もしくは、これから
集まってくるのかも。

俺の言葉に父は再び
考え込むように黙ってしまう。

まずいな。

あまり時間を置いて考えられると
苦しい言い訳がバレるかもしれないし、
言わなくてもいい情報を
言ってしまう可能性もある。

俺が次の言葉をどうするか
思案していると、義兄が動いた。

陛下に発言の許可を得て、
はっきりとした声で
俺を擁護してくれる。

「義父上、私はアキルティアの
話を信じますし、
アキルティアの手伝いを
したいと思っています」

義兄が父を見てから
陛下を見て頭を下げた。

「もちろん、
公爵家の跡取りとして
きちんと勤めは果たしますが、
さすがにこのような大役を
アキルティア一人に
任せることはできません」

義兄、カッコイイ!

うるうると義兄を見ると
その隣に座っていた
ルイまでもが軽く手を上げた。

「私も手伝いますよ。
この国だけの問題ではないですし、
今すぐ何かできるような
問題でもないでしょう。

何年、もしくは何十年もの
時間をかけて対策をしていく
必要あるでしょうし、
私は王子とはいえ、
身軽な立場ですからね。

使い勝手良く
使ってもらって構いません」

ルイも助かる!

俺がルイに視線を向けると
ルイはにやり、と笑う。

その自信満々の顔はヤメロ。
陛下の前だぞ。

「父上」

俺たちの会話をじっと
聞いていたティスが
声を挙げた。

「この件、僕も
次期国王として取り組みたい」

真剣な瞳で陛下に言う
ティスは素晴らしく恰好良かった。

ティス!
こんな面倒なことを
自分から立候補してくれるなんて。

陛下はティスを見て、
それから、ルイ、義兄、俺の順番に
視線を向けた。

「わかった。
人口減少や女子の出生率低下の件は
この国の重要案件でもあった。

ただどう動くか、
対策もできずに何年も
放置されていたのも確かだ。

創造神がアキルティアに
お告げを与えたのは
それなりの理由があるのだろう。

ひとまずは、
そなたたちに託そう」

陛下はルイを見て
「ルティクラウン殿も頼む」
と言う。

ルイはもちろんです、と
笑顔で頷いた。

父は渋い顔をしていたが、
事がことだけに反対はできないらしい。

「そなたたちで、
この件に対応する場を
王宮に作ろう。

ジャスティス、お前が長だ」

「はい」とティスが返事をする。

「ただし、まだ学生であり、
ジャスティスもジェルロイドも
通常の業務もある。

それがおろそかにならぬように」

陛下の言うことは
もっともなので俺たちは
素直に頷いた。

よしよし。
話が良い方向に流れているぞ。

俺はほっとする。

このまま上手く話しをまとめていくぞ!




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