完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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世界の均衡

132:創造神の愛し子(虚偽)

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 ルイはお茶を一口飲んでから
考えても見ろよ、と言う。

「長いスパンで考えるのは
大事だけどさ。

気が付いたことを
少しづつ始めておかないと、
俺たちが大人になってから
改革を進めるなんて
時間がもったいないだろ?」

確かに。

「上司には企画段階で
相談しておくべきだよな」

俺が言うと、ルイも頷く。

「この世界やこの国を
俺たちが好き勝手できるなら
構わないだろうけど。

現時点でこの国を
仕切ってる人間がいて、
その人間を無視して
動けないのなら、
巻き込んだ方が早い」

「だが、義父や
国王陛下にはなんて言うんだ?
さすがに、前世だのなんだの
言っても信じて貰えないだろう」

義兄の言葉にルイは首を振る。

「前世とかは関係ないだろ。
今問題なのは、
この世界の発展をアキラ……
アキルティアが創造神から
依頼されたってことだ。

創造神に攫われたことは
その場にいた聖騎士や
神官たちも確認済だし
疑いようもない。

俺も信仰心は無い方だが、
この際、それを利用すればいい。

アキルティアが創造神に
選ばれた……そうだな。
創造神の愛し子だとか、
そんな話にしてしまうんだ」

「なんだそれ、
中二病か? 嘘くせー」

俺は笑って肩をすくめたが
義兄は考える素振りをする。

「そうだな。
確かにそうすれば
神殿との行き来もしやすいし」

義兄が乗る気の言葉を言う。

そこで俺も、ふむ、
と考えてみることにした。

考えもせずに
最初から否定するのは
良くないよな。

それに考えてみると、
創造神の愛し子なんて
どこの漫画の設定だよ、って
思ったけれど。

ネーミングはともかく
確かに神殿を、というか
宗教を巻き込むのは
多くの民衆を動かすのには
丁度良いかもしれない。

俺ができるのは
頭の中で考えることだけで
実際に動くのは俺では無いし。

生活が一番変化するのも、
その変化のために
動かなければ
ならなくなるのも民衆たちだ。

それも貴族では無く、
国の大部分を占める平民たち。

その平民たちを
権力を使わずに動かそうと
思ったら宗教を絡ませるのが
手っ取り早い。

だからこそ、
元の世界の日本では
三権分立ってのがあったんだ。

……たぶん。

「よし。
じゃあ、父と陛下と
ティスにはカミサマの
話をしておこう。 

すぐに何か動くということも
ないわけだし。

最初はこの国の現状把握をして
人口増加が起こった際の
シミュレーション……は、無理か」

そうだ。
この世界にパソコンは無かった。

「シミュレーションは無理でも
過去のデータから
それなりに数字は出せるだろう」

ルイの言葉に俺は頷くが
「せめて電卓が欲しい」と呟いてしまう。

そんな俺とルイのやりとりを
義兄はじっと見ている。

「どうした、兄様?」

「いや、ほんとにアキルティアの
中身は兄貴なんだなって」

何を今さら、って笑うと
義兄はだって、という。

「そうして話をしている二人を
見ていると、
13歳には見えないし。

俺の知らない大人の
話をしているみたいだ」

「なんだそれ」

俺は笑って、
義兄の頭をぐしゃぐしゃする。

「なるほど。
弟君は、仲間外れの気分に
なったってわけか。
弟君は弟君で、可愛いなぁ」

ルイも笑う。

「兄様は俺の前世弟だからな。
可愛いのは当たり前だが
ルイにはやらないぞ」

「なんでだよ。
アキラばっかり
独り占めでずるいぞ」

「は?
何が独り占めだよ。

兄様は俺の兄で弟だから
俺のモンで当たり前だろ?」

「じゃあ、俺は誰のモンなわけ?」

ルイにそう聞かれ、
俺は首をかしげる。

誰のモノでもないとは思うが。

「強いて言えば……俺?」

前世からの親友だし。

俺がそう言うと、
ルイは嬉しそうに。

本当に嬉しそうな顔をして、
それから爆笑した。

「だよな。
おまえ、前世では俺の
ヨメだったもんな」

その言葉に素直に俺に
頭を撫でられていた
義兄がピクっと反応する。

「なんでだよ、
嫁になんてなってないぞ」

「俺が営業先で貰った
チョコレートボンボン、
欲しかったら嫁に来るか?
って聞いたら、行く、って言っただろ」

「言ってない。
あの時は、行こうかな、って
言っただけだ」

「じゃあ、ブルーベリーの
乗ったチーズケーキを
事務の女の子にもらった時は?

食べたいから嫁にしてー、
って俺に言っただろ?」

「あの時は結局、
事務の子に遠慮して
食べなかったから無効だ」

「じゃあさ。
ほら、ベルギー王室御用達の
あのチョコ専門店の……」

ルイがひたすら思い出話を
していく横で、
義兄が小さくつぶやいた。

「……コイツが元凶か」

めちゃくちゃ低い声で
ビックリするほど冷たい声だった。

「それで?
兄貴はお菓子を食べたいがために
何回、嫁に行く発言をしたんだ?」

怖い、怖いぞ、義兄よ。

「言ってないって。
俺のヨメ―みたいな話になったけど
嫁に行くと明確には言ってないし、
そんなのただの冗談だし。

それにこの話は、
前世の話だからな?

俺とルイのただの冗談で
遊びの話だからな?」

ただの言葉遊びなんだって。
なんでそんなに殺気に満ちた目で
俺とルイを見るんだ?

「……わかった。
なんか色々、兄貴がやらかしてて
アキルティアがなんで
こんな思考になったのか、
理解できた気がする」

義兄はテーブルの上で
両手を組んで、
祈るように項垂れながら言う。

「兄貴、いいや。
アキルティア。
付き合う友だちは選んだ方が良い」

「やだなぁ、弟君。
そんな言い方をされたら
俺がアキルティアに
害があるみたいに
聞こえるじゃないか」

ルイが明るく義兄の言葉を
笑って吹き飛ばす。

義兄は何やら言いたそうな
顔をしたが、何も言わなかった。

よくわからないが、
この二人、急に仲良くなってるような?

いや、だが、喧嘩してるのか?

昨日より気安い空気にはなってると
思うのに、何故か、トゲトゲ
チクチクを義兄からは感じる。

俺はどうするか迷って、
えい、と義兄の膝に座ってやった。

義兄は驚いたようだが、
とりあえず俺は
二人が喧嘩をしているのであれば、
まずは義兄の味方をするつもりだと
そう示したのだ。

二人の言い分を聞かずに
善悪を決めつけることはしないが
義兄は俺の大事な兄弟だからな。

俺は義兄の味方なのだ。

「えー、いいな。
俺の膝にも乗ってくれよ」

ルイがからかうように言う。

「無理だろ、お前も
俺と同じ13歳だし。
俺が座ったら潰れるぞ」

「お前、王子をなめてんな。
これでも体は鍛えてるんだぞ。
お前が乗るぐらい、
たいしたこと無い、っていうか、
お前みたいに、軽そうなやつ、
抱っこだってできるぞ」

なんだと!?

「じゃあ、やってみろよ」

俺は義兄の膝から立ち上がり
両手をあげた。

抱っこしてポーズだ。

ルイもいいぜ、とノリノリだった、が。

「二人とも、やめろ」

義兄が鋭い声を出して
俺の身体を抱き上げる。

そして俺を膝に乗せて

「いいから、座れ。
話し合いは終わってない」

と怒気を隠さずに言うので
俺は大人しく義兄の膝に座る。

ルイも椅子に座り直した。

「話をまとめるぞ」

義兄よ、何故そんなに怒る?

……兄ちゃんは怖いぞ。

俺はしゅん、としてしまった。


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