143 / 308
隣国の王子
116:夜這い?・2【ティスSIDE】
しおりを挟むな、な、なんでお尻?
僕はパニックだ。
でも、目はアキルティアから
離せない。
アキルティアは白い足を
シーツに絡ませて
僕に背を向けるように
横を向いている。
クマとは反対側に顔があるから
どんな顔で寝ているのかはわからない。
アキルティアの上半身は
シーツに包まっているから
シャツは見えないが、
腰から下は大きくシャツが
めくれて足とお尻が丸見えだった。
なんで下着を履いてないんだ?
そう思って。
そういえば、急いで着替えを
用意させたので、
侍従が持って来た寝間着が
成人男性用の物だったことを
僕は思い出した。
きっと寝間着のズボンも
大きかっただろうし、
替えの下着も大きかったのだろう。
あの時、アキルティアを
着替えさせたのは
ジェルロイドだったが。
ジェルロイドがこんなミスを
するとは思えないので、
よほど急いでいたと推測できる。
きっと下着と寝間着のズボンを
アキルティアに履かせたけれど、
大きくて両方とも
床にずり落ちてしまったのだ。
けれど、僕たちがいたから
ジェルロイドはそれに気が付かず
急いでアキルティアを
ベットに押し込んだに違いない。
ジェルロイドはアキルティアを
大切にしているからな。
兄弟愛以上の感情は無いと
はっきり言われてはいるが、
それでもあからさまに
僕を牽制するようなことを
されると、やっぱりモヤモヤしてしまう。
いや、あの時は
ルティクラウン殿下がいたから
彼を牽制したのだろうか。
ルティクラウン殿下も、
アキルティアとかなり親しそうだった。
二人の出会いには驚いたが、
魔法と言うのは、やはり凄い。
あんな魔法を見せられると
隣国との戦争など
絶対にしたくないし、
できるだけ友好関係を保ちたい。
そういえば、
公爵がアキルティアと
ルティクラウン殿下が
抱き合っていたと報告があった時
戦争だ!って
誰も止めれない勢いで
騎士団長と宰相と、僕の父を
呼び出して公爵が
謁見の間で暴れた時は、
正直、怖かったな。
アキルティアがうまく
まとめてくれたから
良かったけど。
父は僕に向かって
「弟は昔から暴走すると
手が付けられなくなるから
大変だよ」
と力なく笑っていたが、
アキルティアがあの場にいなければ
隣国との戦争は回避できたとしても
誰かが犠牲になっていたかもしれない。
いや、そんな記憶を
呼び出して現実逃避を
している場合ではない。
どうする?
アキルティアの小さくて
白くて、きゅっと引き締まった。
可愛い赤ちゃんみたいな
まるいお尻をどうしたらいい?
シーツを掛け直す?
でも、それでアキルティアが
目を覚ましたら?
僕にやましいことは
何一つない……はずだけど
でも、もしアキルティアに
「いやらしい」と言われたら?
いや、アキルティアは
そんなこと言わない……か?
どうする?
このまま見なかったことにして
部屋を出るか?
だが、こんなに無防備に
素肌を晒して、
風邪を引いたりしないだろうか。
アキルティアは病弱だったし
体力だって無いのに。
なら、侍女に言って
新しいシーツを持ってこさせるか。
いや、ダメだ。
侍女だろうがメイドだろうが
アキルティアのこんな姿を
誰かに見られるわけにはいかない。
僕がおろおろしていると、
アキルティアが小さな声を漏らした。
そしてシーツに絡んでいた足が
伸びをするように
まっすぐになり、
またアキルティアは
コロン、と今度は僕の
方に寝返りを打つ。
お尻は隠れた。良かった。
と安堵した僕の目の前で、
アキルティアは目を開けた。
僕はどくん、と心臓が鳴って。
でも何も言えなくて。
そしたらアキルティアは
じーっと僕を見て、
寝ぼけているのか、
首を傾げた。
「ティス?」
「う、うん、ごめんね。
起こしちゃって。
アキルティアが
寂しくないか心配で」
言い訳のように
僕は早口で言った。
アキルティアは理解しているのか
していないのか
よくわからない様子で僕を見て、
クマを反対側に移動させた。
何をするのだろうと
思っていると、
アキルティアはクマがいた場所を
ぽん、ぽん、と叩く。
「おいで、一緒に寝よ」
僕は本当に、固まってしまった。
おいで?
アキルティアが僕を誘ってる?
「大丈夫」
ってアキルティアは
笑うけれど。
何が大丈夫なの?
「早く」と手を伸ばされ
僕は震える手で、
アキルティアの白い指を掴む。
「ほら、早く」
アキルティアに促されて
僕はアキルティアと同じ
シーツに潜った。
客間のベットは広いから
僕とアキルティアと
クマがいても狭くはなかったけれど。
僕は心臓が壊れそうなぐらい
ドキドキしていて、
体中が熱くなっている。
アキルティアは僕が
シーツに潜り込むと
僕の頭をゆっくりと撫でて、
僕の身体を抱き込んだ。
まるでさっきの
クマにしていたみたいに。
「あったかいね。
こうしてたら、
すぐに眠れるよ」
眠そうな声でアキルティアは言う。
もしかしてアキルティアは
僕を寝かしつけようと
してくれているのだろうか。
僕の顔は、アキルティアの
胸に押し付けられていて、
薄いシャツ越しに、
暖かいアキルティアの
素肌を感じてしまう。
こ、こんな状態で
眠れるはずがない。
だというのに、
アキルティアはまたすぐに
寝息を立て始めた。
甘い寝息が、僕の髪をくすぐる。
だめだ、だめだ。
早くベットから抜け出さないと!
そう思ったけれど、
アキルティアの腕の力は
意外にも強くて。
無理に外すとアキルティアを
起こしてしまいそうで、
僕は指一本すら動くことさえできなかった。
そして僕は体を
強張らせたまま、ひたすら
朝が来るのを待った。
僕がアキルティアの
腕から抜け出すことができたのは
明け方近く。
アキルティアの腕の力が緩み、
逆隣のクマを、細い指が掴んだ時だった。
僕はその瞬間、大慌てで
ベットから音を立てないように下りて
自室へと必死で戻った。
体中が熱くて、
心臓がバクバクしてて。
アキルティアに全身で
しがみつかれていた感触は
まだ腕や背中に残っていて。
だめだ。
もう朝が来るのに、
アキルティアと普通に話せる気がしない。
だって。
だって。
アキルティアの白い足が
僕の足に絡みついてきて、
下着すらつけていなかった
アキルティアの下半身が……
僕の腰あたりに
押し付けられていたのだから。
きっとクマと間違えたのだ。
そう思ったけれど、
けれど、あの感触を
忘れることなどできやしない。
「うあぁ」
僕は意味も無く呻き、
現実逃避をするべく
ベットの中に潜り込んだ。
105
お気に入りに追加
1,175
あなたにおすすめの小説

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?
MEIKO
BL
【完結】そのうち番外編更新予定。伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷うだけだ┉。僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げた。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなの何で!?
※R対象話には『*』マーク付けますが、後半付近まで出て来ない予定です。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる