完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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隣国の王子

98:ナイショの話

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 侍従に案内された部屋は
こじんまりとしていたけれど
豪華な部屋だった。

主に密談とかに使う場所らしい。

一応、人払いをしていたけれど
部屋に入るなり
ルイが何やら呪文みたいなのを唱えた。

「よし、これでいい」

ソファーに座りながら
ルイが言う。

「何が?」

「遮音の魔法を部屋に掛けた」

へぇ、魔法ってやっぱりすごい。
いいなぁ。

俺も魔法が使いたい。

俺はルイの正面に座り、
義兄は俺の隣に座った。

すでにテーブルの上には
果実水の入ったピッチャーとグラス。

それとは別に
紅茶のポットとカップも
用意されていた。

ついでに、俺が好きな
チョコチップクッキーもある。

至れり尽くせりだ。

とりあえず全員、
ふかふかのソファーに
座ったが、
義兄は何も話さない。

まぁ、そうだろう。
状況を説明していないから
警戒するのも当たり前だ。

俺は喉が渇いていて
ピッチャーに手を伸ばしたが
すぐに義兄が俺の手から
ピッチャーを取り上げて
グラスに水を注いでくれる。

「過保護だな」

ルイの言葉に、
義兄はぴくっと頬を引きつらせる。

「ルイ、優しい兄様だろ。
トゲトゲすんな」

俺がそう言うと、
義兄は驚いた顔をする。

俺が前世と同じ
口調だったから
びっくりしたのだろう。

俺はグラスを受け取り、
水を飲んだ。

あー、生き返るぜ。

「兄様、紹介は必要ないだろうけど
ルティクラウン殿下。

俺の前の会社の同僚」

「は?」

義兄がルイに顔を向ける。

「ルイ、そんで俺の兄様。
俺の義兄だけど、
前世で俺の弟」

「え?弟?
あのお前がめちゃくちゃ
可愛がってた弟か?」

「そう。
でも可愛がってたって
弟は全然、気が付いてなかったんだぜ」

俺がうなだれると、ルイは

「まぁ、思春期真っただ中で
家族の愛情に感謝しろってのは
難しい話だよな」

なんてわかったような顔をする。

「ま、待て。
え?
アキルティア?

いや、兄貴?」

義兄は戸惑うような顔をする。

「いやぁ、俺もびっくりしたけど
ルイも前世の記憶があったみたいで、
学園でお互いに気が付いてさ」

「そうそう。
再会の感激のあまり、
抱き合ってしまったってわけだ」

ルイが俺の言葉に乗っかってくる。

「アキラは俺のたった一人の
親友だったからな。
また出会えて嬉しいよ」

その言葉に俺も嬉しくなる。

「ルイは顔も人当たりも良くて
営業成績だって飛びぬけて
優秀だったのにな。

友だちが少なかったのは
きっと性格のせいだろうな」

もちろん、
性格が悪いという意味ではない。

からかい半分、
誉め言葉半分だ。

だがルイは貶されたと
思ったのだろう。

「うるせ。
俺の探求心に
付き合ってくれるぐらい
心の広いやつは
おまえぐらいしか
いなかったんだよ」

ルイは拗ねたよううに言う。

「今のは誉め言葉だったんだぞ。
ルイはたまにうっとおしいけど、
頑張り屋だったし、
一つの疑問にとことん
向き合う姿勢は凄いと思ってた。

俺はルイの親友なのを
開発部の皆に自慢してたぐらいだしな」

俺が言うと、
ルイは何故か頬を赤くする。

「おまえ。
そういうところが
あちこちで誤解を招いて
ややこしいことになるんだよっ。

だいたい、この世界でも
やらかしまくりじゃないか」

は?
何が?

「俺は何もしてないぞ?」

な?
と義兄を見るが、
義兄は何も言わずに俺から視線を外す。

おい、なんか言ってくれよ。

「とりあえずわかりました。
ルティクラウン殿下、
あなたは前世ではアキルティアと友人だったと」

「そうだ。
アキラが死んだ後、
俺、お前にも会いにいったんだぞ」

そうなの?
なんてありがたい。

「でもお前は引っ越した後でさ。
ごめんな、力になってやれなくて」

どこか刺々しかった義兄も
ルイの言葉に息を吐く。

「いえ。もう過去のことですから」

義兄は言い、ソファーに座り直す。

「で、兄貴。
俺たちを集合させて
何をするつもりだ?」

義兄が弟の顔になり俺を見た。

「何もしないって。
でもさ、情報の擦り合わせとか
したいと思わないか?

ルイも言ってたけど
俺もこの紫の瞳の魔力に
ついて調べたいと
思ってたし。

できたら、女性の出生率の
低下の原因に関しても
何らかの対策が
できたら良いと思ってる」

そしたら俺が嫁に行くとか
そういう話が無くなるかもしれないし。

「あと、この世界に
生まれ変わる時に
カミサマ?
みたいな声を聞いたか?

その話もしたい」

俺が言うと、
「あの死神か」とルイが言う。

「死神?
普通に優しいカミサマだったろ?」

俺が言うと、
ルイは「いや、死神だ」という。

おかしいなぁ。
俺には優しいカミサマだったけどな。

「兄様は?
カミサマの声、聞いたよな?」

俺が聞くと義兄は頷いた。

以前、義兄とそんな話をしたことがある。

だが義兄も、一方的な会話で
神か死神かはわからないらしい。

「でも、兄貴を守れって
言われた気がする」

随分昔のことで
記憶がうろおぼえだけど、って
義兄は言う。

「俺は、助けてやれ、だったかな。
手を貸してやれ、だったか?」

ルイも自身が無さそうに言う。

「守ってやれ、と助けてやれ?
それって、俺がこれから
危険な目に合うってことか?」

マジで!?

俺が言うと、ルイは
考えるように、うーん、と唸る。

「……確か、
加護が多すぎたとか
そんなことを言われた気がする」

加護?
なんじゃそりゃ。

「そう言えば俺も。
生まれた後だと
神は手が出せないから
守ってやれって言われた」

義兄も言う。

俺はそれを聞いて
結構ショックだった。

それって俺がこれから
波乱万丈な人生を
おくるってことじゃないのか。

俺がビビってると、
義兄は「違うと思う」という。

「何がだ?」

「だって兄貴はもう、
かなりやらかしていて、
すでに波乱万丈な人生だから」

こんな時になんて冗談を言うんだと
俺は義兄を見たが、
義兄の顔は真面目だった。

いや、俺は何もやらかしてないし!

咄嗟に俺はルイを見た。

だがルイも
「まぁ、やりかねないと言うか、
想像できる」
と言う。

本気で?
何が?

俺は涙目で二人を
交互に見るしかできない。

もしかして俺、
後戻りができない状態になってるとか!?

何をどうやらかしてるのか
俺にはさっぱりわからなかったが
今のままではダメなようだ。

「頼む、助けてくれ」

と俺が二人を拝むように言うと、
義兄は「その為にここに来たからね」と
肩をすくめて言う。

そしてルイも。
「しょうがねぇなぁ」と笑った。

たったそれだけで
俺は何も解決していないのに
妙に安心した。

兄弟と親友のパワーってのは
やはり凄いようだ。




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