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婚約騒動が勃発しました
81:一件落着・2
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俺が将来に思いを
馳せていると
義兄が俺を現実に引き戻す。
「俺とアキルティアが
殿下と結婚だなんて
考えることもできないが」
義兄は俺が嫁だと!?
と嫌そうに言う。
「だが、このウワサのおかげで
アキルティアは無理に急いで
婚約しなくて済みそうだ」
「うん?」
どういうことだ?
俺は義兄を見た。
「たとえば
俺とアキルティアが
殿下に嫁ぐとなれば、
特例になるし、
色々決めることが
でてくるだろう?
最悪法律を変える話になる」
そうか。
時間稼ぎにはなるな。
「それに殿下との婚姻話も
王家から正式な
婚約の話は来ていないし、
殿下もアキルティアに
求婚したわけでもない。
ただ、王家の庭の花を貰い、
それで匂い袋を作っただけだ」
確かに。
「噂はともかく、
それが事実だしな」
俺はうん、うん、と頷く。
「だが周囲はこれらの
情報から、アキルティアは
とりあえずは、
かたちはどうあれ
王家と縁を結ぶのだろうと
誰もが考える」
「そうか。
じゃあ、婚約しなくても
世間的には俺には
ティスという相手がいるから
手を出したらダメだ、って
思われてるわけだ」
ラッキー。
いや待てよ。
「それ、ティスに
迷惑かけてるよね?」
心配になって言うが
義兄は首を振る。
「むしろ喜んでいるだろう」
はぁ?
なんでだ?
「とにかく、
義父の暴走と
匂い袋のおかげで、
アキルティアの婚約話は
一時的だが、保留になった。
隣国にも
同じ様な回答になるだろう」
「そうか、良かった」
俺はほっとして、
果実水を飲む。
「それと、兄貴」
義兄が口調を変えて俺を見る。
「うん?」
「殿下に渡したライオン。
俺、あんなの貰ったこと
なかったぞ」
「そりゃそうだ。
あれ、物凄く頑張った
俺の力作だからな。
もう二度と作りたくない
と思うぐらい大変だった」
「ずるい」
「ずるい、って」
なんでそんな前世弟の
顔をして俺を見るかな。
「じゃあ今度、
花冠作ってやるよ」
「殿下にも作ってたじゃん」
「いいだろ?
花を変えて作れば」
何故、唇を尖らせる?
「何拗ねてんの?
兄様」
お前は俺の兄だろ?
拗ねるな。
そう言外に込めて言うと
義兄は幼い顔を引っ込めた。
「しょーがないなー」
俺は笑う。
「兄様、今日は一緒に寝よう」
「ここでか?
クマが邪魔だ」
今日のクマは俺とお揃いのパジャマだ。
「じゃあ、クマは椅子に座らせるよ」
俺はクマを椅子に置く。
「俺のために
頑張ってくれたんだろ?」
きっと疲れて
甘えたくなったんだろうな。
俺はベットに入って
義兄を呼ぶ。
「ほら。
子守唄うたってやるから」
「音痴の癖に」
義兄は言いながら
俺の隣に入ってくる。
「感謝してる。
いつも俺を守ってくれて」
俺はそう言って
義兄の頭を撫でてやる。
すると義兄は甘えるように
俺の背に腕を回した。
「兄貴」
「うん」
「どこに嫁に行ってもいいから
俺のこと、忘れないで」
なんだそりゃ。
結婚なんてまだまだ先だし、
俺は嫁に行く気もないんだが。
マリッジブルーか?
いや、マリッジブルーは
結婚する当事者が
なるものだったっけ。
なんにせよ、
俺が嫁に行くかどうかも
まだわからないのに、
俺がいなくなるような気がして
寂しくなったのか?
しょうがないなー。
あまったれな弟め。
俺は「嫁になんかいかないよ」
と笑って言う。
「俺、まだ13歳だぞ」
そう言うと、
俺にしがみついていた腕の
力が緩んだ。
「もしかして
忘れてたとか?」
気まずそうな義兄の顔に
俺は笑うしかない。
「兄様は僕の兄様で
俺の弟だから、
絶対に忘れたりしないし、
ずっと、大好きだぞ」
俺が言うと、
義兄の目が見開いた。
前世では言ったこと
無かったよな。
でも、大好きだったんだ。
可愛い弟だった。
それをちゃんと
言えないまま死んで
後悔したから、
今はちゃんと言葉にする。
「大好きだよ、兄様。
だから兄様にも
幸せになって欲しい。
俺が誰と結婚しようが
俺たちが兄弟という
ことは、変わらない。
前世でも、この世界でも、
たった二人の
大切な兄弟だ」
「……うん」
義兄は呟くように言い、
俺にまたしがみついた。
俺はよしよし、と
義兄の背中を撫でた。
義兄はもう20歳で
公爵家の次期当主としても
ティスの側近としても
一目置かれている筈なのに。
俺の前ではたまに、
こうして甘えたな弟になる。
これは俺たちが
前世の記憶があるからだけど
もし記憶なかったら
義兄はひとりぼっちで
公爵家に引き取られ、
寂しい思いをしたかもしれない。
弱音を吐く場所も無く、
ひたすら頑張るだけの
人生になってたかもしれない。
そう思うと、
前世の記憶があって
良かったと思う。
義兄がこうして
弱音を吐く場所として
俺が存在できるから。
義兄はもう俺が
守ってやらねばならない
可愛い弟ではないけれど、
それでも、互いにこうして
支え合う兄弟でいられることは
純粋に嬉しい。
「兄貴、子守唄は?」
義兄が俺の胸に顔を
押し付けたまま言う。
なんだ、本当に
歌って欲しかったのか。
俺は笑って、
小さな声で前世で
良く歌っていた歌を紡いだ。
今の俺も音痴なのかな?
わからないが、
義兄が寝たふりを
しないように見張っておこう。
俺はそんなことを思いながら
子守唄を歌う。
けれど。
俺は歌っている途中で
うとうとしてきた。
だから義兄が
俺の背中を撫でたり
嬉しそうな顔を
していることには
気が付いたけれど。
結局俺は、義兄が
寝たことを確認する前に
眠りに落ちてしまった。
翌朝、
やっぱり兄貴は音痴だった、
と義兄に言われてしまったが、
とりあえず俺は
音痴なのではなく
眠たくてちゃんと
歌えなかったのだと
訴えておいた。
眠かったら音階なんて
全然わからないからなっ。
馳せていると
義兄が俺を現実に引き戻す。
「俺とアキルティアが
殿下と結婚だなんて
考えることもできないが」
義兄は俺が嫁だと!?
と嫌そうに言う。
「だが、このウワサのおかげで
アキルティアは無理に急いで
婚約しなくて済みそうだ」
「うん?」
どういうことだ?
俺は義兄を見た。
「たとえば
俺とアキルティアが
殿下に嫁ぐとなれば、
特例になるし、
色々決めることが
でてくるだろう?
最悪法律を変える話になる」
そうか。
時間稼ぎにはなるな。
「それに殿下との婚姻話も
王家から正式な
婚約の話は来ていないし、
殿下もアキルティアに
求婚したわけでもない。
ただ、王家の庭の花を貰い、
それで匂い袋を作っただけだ」
確かに。
「噂はともかく、
それが事実だしな」
俺はうん、うん、と頷く。
「だが周囲はこれらの
情報から、アキルティアは
とりあえずは、
かたちはどうあれ
王家と縁を結ぶのだろうと
誰もが考える」
「そうか。
じゃあ、婚約しなくても
世間的には俺には
ティスという相手がいるから
手を出したらダメだ、って
思われてるわけだ」
ラッキー。
いや待てよ。
「それ、ティスに
迷惑かけてるよね?」
心配になって言うが
義兄は首を振る。
「むしろ喜んでいるだろう」
はぁ?
なんでだ?
「とにかく、
義父の暴走と
匂い袋のおかげで、
アキルティアの婚約話は
一時的だが、保留になった。
隣国にも
同じ様な回答になるだろう」
「そうか、良かった」
俺はほっとして、
果実水を飲む。
「それと、兄貴」
義兄が口調を変えて俺を見る。
「うん?」
「殿下に渡したライオン。
俺、あんなの貰ったこと
なかったぞ」
「そりゃそうだ。
あれ、物凄く頑張った
俺の力作だからな。
もう二度と作りたくない
と思うぐらい大変だった」
「ずるい」
「ずるい、って」
なんでそんな前世弟の
顔をして俺を見るかな。
「じゃあ今度、
花冠作ってやるよ」
「殿下にも作ってたじゃん」
「いいだろ?
花を変えて作れば」
何故、唇を尖らせる?
「何拗ねてんの?
兄様」
お前は俺の兄だろ?
拗ねるな。
そう言外に込めて言うと
義兄は幼い顔を引っ込めた。
「しょーがないなー」
俺は笑う。
「兄様、今日は一緒に寝よう」
「ここでか?
クマが邪魔だ」
今日のクマは俺とお揃いのパジャマだ。
「じゃあ、クマは椅子に座らせるよ」
俺はクマを椅子に置く。
「俺のために
頑張ってくれたんだろ?」
きっと疲れて
甘えたくなったんだろうな。
俺はベットに入って
義兄を呼ぶ。
「ほら。
子守唄うたってやるから」
「音痴の癖に」
義兄は言いながら
俺の隣に入ってくる。
「感謝してる。
いつも俺を守ってくれて」
俺はそう言って
義兄の頭を撫でてやる。
すると義兄は甘えるように
俺の背に腕を回した。
「兄貴」
「うん」
「どこに嫁に行ってもいいから
俺のこと、忘れないで」
なんだそりゃ。
結婚なんてまだまだ先だし、
俺は嫁に行く気もないんだが。
マリッジブルーか?
いや、マリッジブルーは
結婚する当事者が
なるものだったっけ。
なんにせよ、
俺が嫁に行くかどうかも
まだわからないのに、
俺がいなくなるような気がして
寂しくなったのか?
しょうがないなー。
あまったれな弟め。
俺は「嫁になんかいかないよ」
と笑って言う。
「俺、まだ13歳だぞ」
そう言うと、
俺にしがみついていた腕の
力が緩んだ。
「もしかして
忘れてたとか?」
気まずそうな義兄の顔に
俺は笑うしかない。
「兄様は僕の兄様で
俺の弟だから、
絶対に忘れたりしないし、
ずっと、大好きだぞ」
俺が言うと、
義兄の目が見開いた。
前世では言ったこと
無かったよな。
でも、大好きだったんだ。
可愛い弟だった。
それをちゃんと
言えないまま死んで
後悔したから、
今はちゃんと言葉にする。
「大好きだよ、兄様。
だから兄様にも
幸せになって欲しい。
俺が誰と結婚しようが
俺たちが兄弟という
ことは、変わらない。
前世でも、この世界でも、
たった二人の
大切な兄弟だ」
「……うん」
義兄は呟くように言い、
俺にまたしがみついた。
俺はよしよし、と
義兄の背中を撫でた。
義兄はもう20歳で
公爵家の次期当主としても
ティスの側近としても
一目置かれている筈なのに。
俺の前ではたまに、
こうして甘えたな弟になる。
これは俺たちが
前世の記憶があるからだけど
もし記憶なかったら
義兄はひとりぼっちで
公爵家に引き取られ、
寂しい思いをしたかもしれない。
弱音を吐く場所も無く、
ひたすら頑張るだけの
人生になってたかもしれない。
そう思うと、
前世の記憶があって
良かったと思う。
義兄がこうして
弱音を吐く場所として
俺が存在できるから。
義兄はもう俺が
守ってやらねばならない
可愛い弟ではないけれど、
それでも、互いにこうして
支え合う兄弟でいられることは
純粋に嬉しい。
「兄貴、子守唄は?」
義兄が俺の胸に顔を
押し付けたまま言う。
なんだ、本当に
歌って欲しかったのか。
俺は笑って、
小さな声で前世で
良く歌っていた歌を紡いだ。
今の俺も音痴なのかな?
わからないが、
義兄が寝たふりを
しないように見張っておこう。
俺はそんなことを思いながら
子守唄を歌う。
けれど。
俺は歌っている途中で
うとうとしてきた。
だから義兄が
俺の背中を撫でたり
嬉しそうな顔を
していることには
気が付いたけれど。
結局俺は、義兄が
寝たことを確認する前に
眠りに落ちてしまった。
翌朝、
やっぱり兄貴は音痴だった、
と義兄に言われてしまったが、
とりあえず俺は
音痴なのではなく
眠たくてちゃんと
歌えなかったのだと
訴えておいた。
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