完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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閑話4

可愛い天使が禁断の扉を開くとき【侍女・サリーSIDE】

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 私はアキルティア様の侍女を務める
サリー・ルブランと申します。

実家は子爵家ですが、
わたしは3女。

実家はあまり裕福ではないため、
幼いころから持参金は出せない。
嫁に行くより働くことを
考えて欲しいと
両親から言われて育ちました。

ですので私はできるだけ早く
学園を卒業し、勤めに出るために
学園のスキップ制度を使って
通常9年かけて卒業する学園を
6年で卒業したのです。

そこから私は実家が
奥様の遠縁という縁故を頼り、
公爵家で侍女として雇われることができました。

ゆくゆくはここで経験を積み、
王宮侍女になるのを目標としております。

いえ、しておりおました。

何故過去形かというと、
私がお仕えしているアキルティア様が
可愛くて可愛くて仕方が無いのです。

公爵家から出て行くなど
できるはずがありません。

アキルティア様は可愛くて
天使で、公爵家では誰よりも愛されており、
アキルティア様付きの侍女である私は
常に嫉妬の視線を受けているのです。

もちろん、嫌ではなく、
そんな視線ですら
優越感に浸れる喜びのものですが。

アキルティア様はおそらくですが、
義兄のジェルロイド様のことが
お好きなのでは?
と、私は常々思っておりました。

何せ、アキルティア様は10歳の頃、
タウンハウスでジェルロイド様と
一緒にお過ごしになるようになってから
時折、夜をジェルロイド様と
一緒にお過ごしになるのです。

もちろん、やましいことは
一切ないと言えますが、
お二人が抱き合って眠る姿を
初めて見た時は、なんというか……

甘酸っぱい思いをしたものです。

ジェルロイド様も、アキルティア様の
ことは可愛がっておられる様子。

公爵家に引き取られたときは
仲良くなるきっかけがなく、
少し挙動不審なところもありましたが
今では本当の兄弟のように
仲良く……そう、仲良く
されているのです。

アキルティア様の髪を撫でたり、
少しからかうようなことを言われたり。

その時のアキルティア様の反応は、
なんというのでしょうか。

旦那様や奥様に髪を
撫でられるときとは
また違ったお顔をするのです。

拗ねたような、子どもっぽいと
でも言えば良いのでしょうか。

心から気を許したような、
そんな笑顔をジェルロイド様には
向けるのです。

そんなアキルティア様の様子に
気が付いているのは、
アキルティア様付きの侍女である
私だけだと思いますが、

じつはタウンハウスの
侍女たちの間では
「禁断の兄弟愛」という
妄想が大流行しているのです。

もちろん、この兄弟愛は
アキルティア様とジェルロイド様のことです。

お二人が仲睦まじく
会話をしている所を見つけては
休憩時間になると、
どれだけアキルティア様が
可愛らしかったか、という
情報共有とともに、ジェルロイド様と
どのようにラブラブだったか、
という報告もされるのです。

ジェルロイド様がアキルティア様に
貰ったという庭の石や葉っぱや
枯れた花を大事に持っていると言うのは
ジェルロイド様付きの侍女が
証言しておりますし、

私もまた、アキルティア様が
毎日毎日、ひたすら石を
磨いている姿を見ております。

どう見てもお二人は
相思相愛なのですが、
お二人は仲を深めようとは致しません。

その理由は、ジャスティス殿下でしょう。

アキルティア様に思いを寄せ、
ひたすらアプローチしてくる
迷惑なお方。

相手が殿下では、
さすがにジェルロイド様も
身を引くことしかできません。

だからこそ、ジェルロイド様は
ジャスティス殿下を一人前に
するために心を鬼にして
ジャスティス殿下を鍛えているのでしょう。

ジェルロイド様は本当に
深くアキルティア様を愛しておられます。

何故なら、アキルティア様が
最初に磨いた庭の石をジェルロイド様に
お渡ししたとき。

あの時のアキルティア様は、
わずか5歳でした。

あの時のジェルロイド様は12歳。

庭の石など、
貰っても迷惑だったでしょう。

あの頃の私も侍女として
公爵家に来たばかりで、
まだ侍女としてはひよっこでした。

ですのでアキルティア様が
庭で拾った花や石を
ジェルロイド様に差し上げると
言われたときは、さすがに
表情に戸惑いを表してしまいました。

今では恥ずかしい思い出です。

侍女として訓練をしていた
私でされ、そんなものを?
という戸惑いが顔に出たと言うのに、
ジェルロイド様はアキルティア様
からのプレゼントを、
それはそれは喜んで受け取っておられました。

喜びのあまり
目の端にうっすらと涙が
浮かんでいた姿を私は今でも覚えております。

私はそのお二人の尊いお姿に
すっかり心を奪われてしましました。

そうそうその前にも
アキルティア様は公爵家に
引き取られたばかりの
ジェルロイド様に差し上げるのだと、
良い匂いがする花を
庭から沢山持ってこられたことがあります。

さすがに花はすぐに
枯れてしまいますし、
しかも茎も葉もなく、
アキルティア様が持っているのは
ただの花。

差し上げても、
そのまま捨てられてしまうのでは?

と思うようなものでした。

当時、新人だった私は
アキルティア様の意図も
わからず、日当たりの良い
テーブルに並べられた花を
とにかく片付けたかったのですが。

数日後、それが
とても良い匂いがする
香り袋になったのです。

私は驚きでした。

香水のような
作られた香りではなく、
ほのかに衣服に
花の香りがつくので、
まだ成人されていない
ジェルロイド様でも
いやらしくない香りだと
思われました。

アキルティア様は
目先のことしか見えない
私では考えもつかないことを
思い付き、成し遂げてしまわれるお方なのです。

もう私は一生、
アキルティア様にお仕えしよう。

私はそう決意いたしました。

そして私は今、
王宮侍女の話はお断りをして、
アキルティア様にお仕えしているのです。

そうそう、昔話ばかり
していても仕方がありません。

可愛らしいアキルティア様は
もう13歳。

そろそろ外の世界に興味が出て来たらしく、
アキルティア様はお茶会に
参加したいと言われるようになりました。

今までアキルティア様は
社交と言われることは
一切禁止されておりました。

旦那様……公爵様が
すべて禁止と言われていたからです。

「茶会や夜会に出て、
もしアキルティアが
誰かに心を奪われるような
ことがあれば耐えられない」
というのが旦那様の主張でございました。

その主張を聞いた家令も執事も、
もちろん、そのことを後から
聞いた私たち侍女も、
黙って頭を下げるしかありません。

が。

旦那様のナナメ上の愛情の深さに
ただただ、呆然としたものでした。

そんなアキルティア様も
そろそろ自立したいと
思うようになったのでしょう。

ご自身の意志で茶会に
参加したいと旦那様に言い、
とうとう、ご友人の茶会に
参加することがきまったのです。

それからのアキルティア様は
本当に可愛らしくて、天使でございました。

生まれたてのヒヨコのように
ジェルロイド様の後を付いて歩き、
茶会のマナーや服装などを
何度も何度も確認しておりましたし、

あまりにも嬉しかったのでしょう。
自室では、誰もいないと
思っていたのでしょうが、
嬉しそうに踊りながら
お歌を歌っておりました。

私はドアのそばで控えていたのですが、
気配をひたすら消し、
あまりの可愛らしさに
悶える心を必死で押さえていたのです。

そしてとうとう、お茶会の当日。

私は見てしまったのです。

アキルティア様の自室の
ベットに座るジェルロイド様を
アキルティア様が抱きしめ、
愛の告白をする姿を!

「大好きだよ、兄様」

あぁ、なんということでしょう。
禁断の兄弟愛が、
とうとう暴露されてしまいました!

私は咄嗟に、アキルティア様を
呼びに来たキールを見ました。

彼は一瞬だけ、
驚いた顔をしましたが
さすが訓練している護衛だけあります。

すぐに真顔になり、
アキルティア様を連れて部屋を
出て行かれました。

ジェルロイド様はベットに座ったまま
アキルティア様を見送りましたが、
すぐに私の存在に気が付いたのでしょう。

ベットから立ち上がり
「あの子は本当に可愛いよね?」
と破壊力のある笑顔で私を見たのです。

私は何も言えず、
腰が抜けそうな状態を
必死で隠して頭を下げました。

ジェルロイド様は
そんな私の横を通り
部屋を出て行きましたが、
私はジェルロイド様の
気配が無くなった途端、
へなへなとしゃがみ込んでしまいました。

私は気が付いてしまったのです。

あの破壊力のある笑顔の奥に、
寂しさが滲んでいることに。

アキルティア様には幸せになって欲しい。

お二人が両想いであるのなら
その恋を応援して差し上げたい。

そう思うものの、
ただの一介の侍女である私に
できることなどありません。

私ができるのは、
アキルティア様が日々を
楽しく過ごすお手伝いをすることだけ。

そしてほんの少しだけ、
お二人のために手を貸して
差し上げることができるとしたら、

アキルティア様とジェルロイド様の
仲を深めたいと考える仲間を
増やすことだけなのです。

私は立ち上がり、
侍女たちが集まる部屋へと向かいます。

今日の話題は
「アキルティア様告白する」
この一択でしょう。

そう。
この私も、
「禁断の兄弟愛」の信徒なのですから。




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