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閑話4
可愛い可愛い天使さま【エミリーSIDE】
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私はエミリー・ルメール。
ルメール伯爵家の長女に生まれ、
5歳下の弟が一人いる。
弟が次期当主となるので、
私は弟が生まれた時に、
ミューラー侯爵家の長男である
ルシリアン・ミューラー様と
婚約を結んだ。
ルシリアン様は頭が良く、
とても優秀な方で、
私と二人で会っても、
いつも私一人がしゃべるばかり。
ルシリアン様に私はふさわしいのかしら?
といつも思っていた。
私は可愛い物が好きだけれど、
ルシリアン様はそういう物には
興味が無いようでしたし、
私と一緒にいてルシリアン様は
嬉しいのかしら?と不安になる。
そんなルシリアン様が
ジャスティス殿下の側近候補となり、
同じく側近候補のオルガノ伯爵家の長男
クリム・オルガノ様と交友を持ち、
私の生活は一気に変化した。
クリム様の婚約者である
ローレン伯爵家のメイジー様と出会い、
私は彼女と意気投合してしまったのだ。
クリム様もお父上が
騎士団長ということもあり
どこか真面目で。
メイジー様は一緒に過ごしていても
ご自身が必要とされているのか
わからないと、
私と同じ不安を持っていらしたのだ。
お互い同じ不安を持つ者として
私たちはすぐに仲良くなった。
ルシリアン様たちが学園に入ると
紫の瞳を持つと噂されている
公爵家のアキルティア様と
ご学友になり、常に行動を共にしているという。
護衛の意味合いもあるようだけれど、
アキルティア様はとても可愛らしく
誰もが魅了される美しさも
持っていると言う。
私もメイジー様も、
互いの婚約者がアキルティア様に
取られてしまうのではないかと
不安になった。
私とメイジー様が学園に
入学しても、婚約者の二人は
いつもアキルティア様のそばに居て
私たちは近寄れない。
不安で、不満で。
けれども、学園でお姿を見かけても、
とても可愛らしい笑顔で
クリム様とルシリアン様に
話しかけるアキルティア様を
見てしまうと、気後れしてしまう。
私とメイジー様は常に一緒にいた。
食堂では、いつも同じ席に座る
あの方たちを、遠くからそっと見ていた。
クリム様もルシリアン様も
アキルティア様をそれはそれは
大事にしていることが
見ているだけでわかる。
そんな姿を見るのは
胸が苦しかったけれど、
アキルティア様は公爵家で
紫の瞳の方だ。
私のようなものが
何か言えるはずもない。
そんな時だ。
ルシリアン様からお茶会の誘いが来た。
メイジー様も一緒に、
ミューラー侯爵家で小さな
茶会を開くのでぜひ来て欲しいと言うのだ。
私はもちろん、すぐにお返事をした。
婚約者としてお誘い頂いたと思うし、
パートナーとして
私に声を掛けていただいたことが
とても嬉しかったのだ。
お茶会は、メイジー様も
クリム様とご一緒だった。
茶会の席を見ると、
椅子の数からして残るはあと1つ。
後から来る方は、
パートナーを連れて来られないのかしら?
私がそんなことを考えていると
茶会に天使がやってきた。
そう。
どうみても、光に輝く天使だった。
茶会はミューラー侯爵家の庭で
行われたのだけれど、
黄金の髪は日の光にあたって
キラキラと輝いていたし、
少し青みがかった澄んだ紫の瞳は
滅多に出会えないと言われる宝石
「スピネル」のように見えた。
自然にルシリアン様が
アキルティア様を
エスコートをする姿に
少し胸が痛んだけれど
もちろん、私はそれを隠した。
アキルティア様はクリム様と
ルシリアン様の間に座わられる。
私とメイジー様は
アキルティア様のやや正面に
座ることに。
私はアキルティア様に
ルシリアン様から紹介していただき、
改めて正面からご挨拶を致しました。
………天使。
私はルシリアン様を
取られるのではないかと
常に不安に思っていたけれど。
アキルティア様からは
そのような邪念は一切見えない。
清らかな紫の瞳で私を見つめ、
微笑む姿は、ルシリアン様が
いなければ恋に落ちても
おかしくはない瞬間だった。
私はそっとメイジー様をみると、
メイジー様も私を見ている。
私たちは視線を合わせて頷いた。
このお方は私たちが不安に
思うような存在ではないと
私たちは気が付いたのだ。
アキルティア様の清廉さは
人間の恋愛感情や欲など
全く関係のない次元に思える。
なんて尊い存在なのかしら。
私は胸の前で手を合わせそうになった。
アキルティア様が手土産にと
持って来た甘いサンドイッチには
本当に驚いてしまった。
だって、パンが甘いだなんて。
話を聞くとアキルティア様は
どうやら食が細いようだけど、
甘いものは好き。
そこで公爵家のシェフに頼んで
甘いサンドイッチを
作ってもらったのだとか。
素晴らしいアイデアだと
私は思いましたわ。
もちろん、
その甘いサンドイッチは
物凄く美味しくて。
私は、はしたなくも
2度もおかわりをしてしまいましたの。
それからは楽しいひとときでした。
アキルティア様は気さくに
私たちにも話しかけて下さり、
学園の話も沢山することができ
私はついはしゃぎそうになったのだけれど。
これからは昼休み、
一緒に食堂で
お昼ごはんを食べようと
お誘い頂いたときは恐縮して
必死でお断りをさせていただいた。
何といってもアキルティア様は
高嶺の花として学園では
常に注目を浴びている存在ですし。
私ごときがご一緒したら
恐ろしいほどの嫉妬の目が
向けられることは
用意に想像できる。
ルシリアン様とクリム様が
常にご一緒されていて
アキルティア様を護っておられるけれど、
それが無ければ、心無い者たちが
アキルティア様に声を掛け、
尊いお顔を曇らせるに違いない。
最初は私が学園に入学しても
ルシリアン様とご一緒できないことを
不満に思っていたけれど。
アキルティア様だけでなく、
私とも一緒に過ごして欲しいと
願う日々もあったけれど。
アキルティア様とこうして
お会いしてやっとわかった。
この天使を護るために
ルシリアン様は頑張っておられるのだと。
社交界ではジャスティス殿下が
アキルティア様に想いを寄せていると
そのようなうわさが流れている。
それが真実なのかはわからないけど、
ルシリアン様も将来は
ジャスティス殿下の側近になられる方。
きっと殿下の代わりに
アキルティア様をお守りしているのでしょう。
いいえ。
そうでなくても、
この天使様はお護りしなければならないわ。
私は可愛い物も美しい物も
大好きだけれど、
天使様は綺麗だけれど
とても可愛らしく、
清廉な空気がする。
私も力及ばずかもしれないけれど
ルシリアン様と共に
必ずアキルティア様をお守りするわ!
ルメール伯爵家の長女に生まれ、
5歳下の弟が一人いる。
弟が次期当主となるので、
私は弟が生まれた時に、
ミューラー侯爵家の長男である
ルシリアン・ミューラー様と
婚約を結んだ。
ルシリアン様は頭が良く、
とても優秀な方で、
私と二人で会っても、
いつも私一人がしゃべるばかり。
ルシリアン様に私はふさわしいのかしら?
といつも思っていた。
私は可愛い物が好きだけれど、
ルシリアン様はそういう物には
興味が無いようでしたし、
私と一緒にいてルシリアン様は
嬉しいのかしら?と不安になる。
そんなルシリアン様が
ジャスティス殿下の側近候補となり、
同じく側近候補のオルガノ伯爵家の長男
クリム・オルガノ様と交友を持ち、
私の生活は一気に変化した。
クリム様の婚約者である
ローレン伯爵家のメイジー様と出会い、
私は彼女と意気投合してしまったのだ。
クリム様もお父上が
騎士団長ということもあり
どこか真面目で。
メイジー様は一緒に過ごしていても
ご自身が必要とされているのか
わからないと、
私と同じ不安を持っていらしたのだ。
お互い同じ不安を持つ者として
私たちはすぐに仲良くなった。
ルシリアン様たちが学園に入ると
紫の瞳を持つと噂されている
公爵家のアキルティア様と
ご学友になり、常に行動を共にしているという。
護衛の意味合いもあるようだけれど、
アキルティア様はとても可愛らしく
誰もが魅了される美しさも
持っていると言う。
私もメイジー様も、
互いの婚約者がアキルティア様に
取られてしまうのではないかと
不安になった。
私とメイジー様が学園に
入学しても、婚約者の二人は
いつもアキルティア様のそばに居て
私たちは近寄れない。
不安で、不満で。
けれども、学園でお姿を見かけても、
とても可愛らしい笑顔で
クリム様とルシリアン様に
話しかけるアキルティア様を
見てしまうと、気後れしてしまう。
私とメイジー様は常に一緒にいた。
食堂では、いつも同じ席に座る
あの方たちを、遠くからそっと見ていた。
クリム様もルシリアン様も
アキルティア様をそれはそれは
大事にしていることが
見ているだけでわかる。
そんな姿を見るのは
胸が苦しかったけれど、
アキルティア様は公爵家で
紫の瞳の方だ。
私のようなものが
何か言えるはずもない。
そんな時だ。
ルシリアン様からお茶会の誘いが来た。
メイジー様も一緒に、
ミューラー侯爵家で小さな
茶会を開くのでぜひ来て欲しいと言うのだ。
私はもちろん、すぐにお返事をした。
婚約者としてお誘い頂いたと思うし、
パートナーとして
私に声を掛けていただいたことが
とても嬉しかったのだ。
お茶会は、メイジー様も
クリム様とご一緒だった。
茶会の席を見ると、
椅子の数からして残るはあと1つ。
後から来る方は、
パートナーを連れて来られないのかしら?
私がそんなことを考えていると
茶会に天使がやってきた。
そう。
どうみても、光に輝く天使だった。
茶会はミューラー侯爵家の庭で
行われたのだけれど、
黄金の髪は日の光にあたって
キラキラと輝いていたし、
少し青みがかった澄んだ紫の瞳は
滅多に出会えないと言われる宝石
「スピネル」のように見えた。
自然にルシリアン様が
アキルティア様を
エスコートをする姿に
少し胸が痛んだけれど
もちろん、私はそれを隠した。
アキルティア様はクリム様と
ルシリアン様の間に座わられる。
私とメイジー様は
アキルティア様のやや正面に
座ることに。
私はアキルティア様に
ルシリアン様から紹介していただき、
改めて正面からご挨拶を致しました。
………天使。
私はルシリアン様を
取られるのではないかと
常に不安に思っていたけれど。
アキルティア様からは
そのような邪念は一切見えない。
清らかな紫の瞳で私を見つめ、
微笑む姿は、ルシリアン様が
いなければ恋に落ちても
おかしくはない瞬間だった。
私はそっとメイジー様をみると、
メイジー様も私を見ている。
私たちは視線を合わせて頷いた。
このお方は私たちが不安に
思うような存在ではないと
私たちは気が付いたのだ。
アキルティア様の清廉さは
人間の恋愛感情や欲など
全く関係のない次元に思える。
なんて尊い存在なのかしら。
私は胸の前で手を合わせそうになった。
アキルティア様が手土産にと
持って来た甘いサンドイッチには
本当に驚いてしまった。
だって、パンが甘いだなんて。
話を聞くとアキルティア様は
どうやら食が細いようだけど、
甘いものは好き。
そこで公爵家のシェフに頼んで
甘いサンドイッチを
作ってもらったのだとか。
素晴らしいアイデアだと
私は思いましたわ。
もちろん、
その甘いサンドイッチは
物凄く美味しくて。
私は、はしたなくも
2度もおかわりをしてしまいましたの。
それからは楽しいひとときでした。
アキルティア様は気さくに
私たちにも話しかけて下さり、
学園の話も沢山することができ
私はついはしゃぎそうになったのだけれど。
これからは昼休み、
一緒に食堂で
お昼ごはんを食べようと
お誘い頂いたときは恐縮して
必死でお断りをさせていただいた。
何といってもアキルティア様は
高嶺の花として学園では
常に注目を浴びている存在ですし。
私ごときがご一緒したら
恐ろしいほどの嫉妬の目が
向けられることは
用意に想像できる。
ルシリアン様とクリム様が
常にご一緒されていて
アキルティア様を護っておられるけれど、
それが無ければ、心無い者たちが
アキルティア様に声を掛け、
尊いお顔を曇らせるに違いない。
最初は私が学園に入学しても
ルシリアン様とご一緒できないことを
不満に思っていたけれど。
アキルティア様だけでなく、
私とも一緒に過ごして欲しいと
願う日々もあったけれど。
アキルティア様とこうして
お会いしてやっとわかった。
この天使を護るために
ルシリアン様は頑張っておられるのだと。
社交界ではジャスティス殿下が
アキルティア様に想いを寄せていると
そのようなうわさが流れている。
それが真実なのかはわからないけど、
ルシリアン様も将来は
ジャスティス殿下の側近になられる方。
きっと殿下の代わりに
アキルティア様をお守りしているのでしょう。
いいえ。
そうでなくても、
この天使様はお護りしなければならないわ。
私は可愛い物も美しい物も
大好きだけれど、
天使様は綺麗だけれど
とても可愛らしく、
清廉な空気がする。
私も力及ばずかもしれないけれど
ルシリアン様と共に
必ずアキルティア様をお守りするわ!
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