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中等部に進級しました
56:女子に混ざることにした
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きゃぴきゃぴの女子に
付いていけるとは思わなかったが
当初の目的は友達を作ることだ。
だから俺は思い切って
二人の会話に入り込むことにした。
と言っても、急に割り込むのではなく
自然と会話に滑り込むのだ。
これは前世のオタク同僚との会話で
良くやっていたから問題はない。
盛り上がっている内容に
溶け込むように相槌を打ち、
同意の声を小さく挟み、
自然と徐々に会話に入り込むのだ。
それは相手が盛り上がっている時に
入るのが一番手っ取り早い。
誰しも自分の話は
聞いてもらいたいものだし、
夢中で話をしている時ほど、
周囲のことには気が付かない。
俺は二人の会話を聞きながら
同意の声を少しづつ入れていく。
彼女たちはいつのまにか
自分たちが持っている
ドレスの話になっていた。
刺しゅう繋がりで
ファッションの話になったようだ。
彼女たちは自分の持っているドレスが
子どもっぽいと言う不満があるらしいが
親たちがなかなかリボンや
フリルのドレスから
離れてくれないらしい。
その気持ちはわかる!
俺は今でもそうだからな。
わかる、わかると頷いて
そうだよね。
親って子どもの気持ちが
わからないんだよね。
と何度も言っていると、
ふと、女子二人が俺を見た。
「あ、アキルティア様?」
「今までの話を、聞いていらしたの?」
って茶会で話をしてるんだから
聞いてるに決まってるんだけど。
もしかしていつも女子二人で
楽しくおしゃべりして、
ルシリアンとクリムのことを
忘れているのだろうか。
とはいえ、13歳の男子に
ドレスの話をしても、
理解してもらえないと思うだろうな。
でも俺は気持ちもわかるし、
同意できるぜ!
「僕も着る服には困っていて。
父も義兄も母も、
いつまでたっても僕のことを
可愛い、可愛いと、
フリルやレースの付いた服を
着せようとするんです」
というと、女子二人は
俺を見て納得したように頷いた。
ですよねー。
俺、まさに今、
そう言うシャツを着ているし。
そこから俺は違和感なく
女子トークに混ざった。
そういや、前世も含め、
こうやって親の愚痴とか
今まで言ったことなかったな。
女子たちは可愛い顔をして
なかなか辛らつなことを言う。
だがそれは本気で言っているのではなく
親の愛情を知ってるからこそ
出てくる文句ばかりだ。
だから俺も同意できるし、
同じ様な愚痴を言うこともできた。
クリムやルシリアンとは
どうしても家名があるので
こうして愚痴を言ったり
はしゃいで会話をしたりできなかったが
女子二人は俺との
身分の差も心の壁も
その勢いのまま一気に
ぶちやぶって話をしてきた。
若いってすごいよな。
いや、女子のパワーが凄いのか。
「そうですのよ。
愛されているのは嬉しいですけれど
過保護すぎるのも、ねぇ」
と、ふるゆわのエミリーが言えば
「可愛いのと似合うのと好みは
別ですのに」とメイジーが不満を言う。
俺がわかる、わかる、と
タウンハウスのクローゼットの中が
すべてフリルが付いた服で
埋まっているという話をすれば
二人そろって
「もう少し大人っぽい服が
着たいのに、親は少しも
理解してくれないですのよね」
と頷いてくれる。
あぁ、癒されるー。
なんだ、この感覚。
俺はいつも自分で考えて
自分の意見を言って
プレゼンとかでも
俺の独断場になることが
楽しかったのだけれど。
こうして逐一同意してもらい、
俺の不満を共感してくれる
相手とおしゃべりするのは
めちゃくちゃ楽しい。
一人じゃないって、
こういうことを言うんだな。
「そうだ!
ドレスに自分で刺しゅうをしたらどうかな」
俺は二人にひらめいたことを
提案することにした。
「ドレスに刺しゅう?」
メイジーが首を傾げる。
「はい。可愛いドレスに
ワンポイントでも刺しゅうが入っていれば
見る印象が変わると思うのです。
たとえば僕ののこのシャツは
フリルが入っていますが、
この襟に刺しゅうが入っていたらどうでしょう」
俺は近くに会った栞を
襟もとに当てた。
誰にあげた栞かわからんが、
スマン、少し貸してくれ。
「まぁ、本当ですわ」
「素敵っ」
と俺のアイデアは
女子二人にはなかなか好印象だ。
俺は栞をテーブルに置き、
「モチーフは花だけでなく
好きなものでもいいと思います」
と言って、俺はようやく
俺の隣に黙って座る二人に気が付いた。
あぁ、スマン。
忘れていた……友よ。
いや、もちろん、
二人のことは忘れてなかったぞ!
「せっかくお二人には
仲の良い婚約者がいるのですから
見えないポイントに互いの家門とか。
もしくは二人だけが知っている
お揃いのマークや印などを
刺しゅうするのも楽しいと思いませんか?」
「見えない場所にですか?」
エミリーが不思議そうに言う。
「えぇ。
見えない場所に、
仲の良い恋人たちだけが知る
互いの印が入った服を着る。
大人の恋っぽいと思いません?」
前世で言う隠れペアルックのようなものだ。
俺がそう言うと
女子2人は二人は目を輝かせて
「「素敵ですわっ!」」と叫んだ。
「ですが、見えない場所とは
どの様な場所が良いのでしょう」
メイジーが言うので
俺は隣に座るクリムに
ちょっとごめんね、と
その手を取った。
「あ、アキ様?」
戸惑うクリムを無視して、
俺はクリムのシャツの袖をメイジーに見せる。
「ほら、シャツの袖の
ボタンのところだったら
あまり目立たないでしょ?
でも、着替えをするときは
絶対に見る場所だから、
このシャツのボタンを外すたびに
クリムはメイジー嬢のことを
思い出すと思うよ」
そう言うと、
メイジーは顔を真っ赤にした。
「あとはね」と今度は逆隣に座る
ルシリアンの手を
逃げないように俺は掴んだ。
「シャツのボタンの一番上。
しっかりとボタンを留めてしまえば
襟で隠れてしまうけれど」
俺はルシリアンのシャツの襟を
ぺろっとめくった。
「ほら、この喉元のすぐ上の
この場所だったら、普段は見えないよ。
でもこれもボタンを外すとき、
刺しゅうの感触は指に伝わるから
服を脱ぐときには
ルシリアンは絶対に
エミリー嬢のことを思い出すよ」
そういうと、エミリーも、
そして何故かルシリアンも
顔を真っ赤にする。
あれ?
中学生に恋愛を語るのは、
まだ早すぎたか。
付いていけるとは思わなかったが
当初の目的は友達を作ることだ。
だから俺は思い切って
二人の会話に入り込むことにした。
と言っても、急に割り込むのではなく
自然と会話に滑り込むのだ。
これは前世のオタク同僚との会話で
良くやっていたから問題はない。
盛り上がっている内容に
溶け込むように相槌を打ち、
同意の声を小さく挟み、
自然と徐々に会話に入り込むのだ。
それは相手が盛り上がっている時に
入るのが一番手っ取り早い。
誰しも自分の話は
聞いてもらいたいものだし、
夢中で話をしている時ほど、
周囲のことには気が付かない。
俺は二人の会話を聞きながら
同意の声を少しづつ入れていく。
彼女たちはいつのまにか
自分たちが持っている
ドレスの話になっていた。
刺しゅう繋がりで
ファッションの話になったようだ。
彼女たちは自分の持っているドレスが
子どもっぽいと言う不満があるらしいが
親たちがなかなかリボンや
フリルのドレスから
離れてくれないらしい。
その気持ちはわかる!
俺は今でもそうだからな。
わかる、わかると頷いて
そうだよね。
親って子どもの気持ちが
わからないんだよね。
と何度も言っていると、
ふと、女子二人が俺を見た。
「あ、アキルティア様?」
「今までの話を、聞いていらしたの?」
って茶会で話をしてるんだから
聞いてるに決まってるんだけど。
もしかしていつも女子二人で
楽しくおしゃべりして、
ルシリアンとクリムのことを
忘れているのだろうか。
とはいえ、13歳の男子に
ドレスの話をしても、
理解してもらえないと思うだろうな。
でも俺は気持ちもわかるし、
同意できるぜ!
「僕も着る服には困っていて。
父も義兄も母も、
いつまでたっても僕のことを
可愛い、可愛いと、
フリルやレースの付いた服を
着せようとするんです」
というと、女子二人は
俺を見て納得したように頷いた。
ですよねー。
俺、まさに今、
そう言うシャツを着ているし。
そこから俺は違和感なく
女子トークに混ざった。
そういや、前世も含め、
こうやって親の愚痴とか
今まで言ったことなかったな。
女子たちは可愛い顔をして
なかなか辛らつなことを言う。
だがそれは本気で言っているのではなく
親の愛情を知ってるからこそ
出てくる文句ばかりだ。
だから俺も同意できるし、
同じ様な愚痴を言うこともできた。
クリムやルシリアンとは
どうしても家名があるので
こうして愚痴を言ったり
はしゃいで会話をしたりできなかったが
女子二人は俺との
身分の差も心の壁も
その勢いのまま一気に
ぶちやぶって話をしてきた。
若いってすごいよな。
いや、女子のパワーが凄いのか。
「そうですのよ。
愛されているのは嬉しいですけれど
過保護すぎるのも、ねぇ」
と、ふるゆわのエミリーが言えば
「可愛いのと似合うのと好みは
別ですのに」とメイジーが不満を言う。
俺がわかる、わかる、と
タウンハウスのクローゼットの中が
すべてフリルが付いた服で
埋まっているという話をすれば
二人そろって
「もう少し大人っぽい服が
着たいのに、親は少しも
理解してくれないですのよね」
と頷いてくれる。
あぁ、癒されるー。
なんだ、この感覚。
俺はいつも自分で考えて
自分の意見を言って
プレゼンとかでも
俺の独断場になることが
楽しかったのだけれど。
こうして逐一同意してもらい、
俺の不満を共感してくれる
相手とおしゃべりするのは
めちゃくちゃ楽しい。
一人じゃないって、
こういうことを言うんだな。
「そうだ!
ドレスに自分で刺しゅうをしたらどうかな」
俺は二人にひらめいたことを
提案することにした。
「ドレスに刺しゅう?」
メイジーが首を傾げる。
「はい。可愛いドレスに
ワンポイントでも刺しゅうが入っていれば
見る印象が変わると思うのです。
たとえば僕ののこのシャツは
フリルが入っていますが、
この襟に刺しゅうが入っていたらどうでしょう」
俺は近くに会った栞を
襟もとに当てた。
誰にあげた栞かわからんが、
スマン、少し貸してくれ。
「まぁ、本当ですわ」
「素敵っ」
と俺のアイデアは
女子二人にはなかなか好印象だ。
俺は栞をテーブルに置き、
「モチーフは花だけでなく
好きなものでもいいと思います」
と言って、俺はようやく
俺の隣に黙って座る二人に気が付いた。
あぁ、スマン。
忘れていた……友よ。
いや、もちろん、
二人のことは忘れてなかったぞ!
「せっかくお二人には
仲の良い婚約者がいるのですから
見えないポイントに互いの家門とか。
もしくは二人だけが知っている
お揃いのマークや印などを
刺しゅうするのも楽しいと思いませんか?」
「見えない場所にですか?」
エミリーが不思議そうに言う。
「えぇ。
見えない場所に、
仲の良い恋人たちだけが知る
互いの印が入った服を着る。
大人の恋っぽいと思いません?」
前世で言う隠れペアルックのようなものだ。
俺がそう言うと
女子2人は二人は目を輝かせて
「「素敵ですわっ!」」と叫んだ。
「ですが、見えない場所とは
どの様な場所が良いのでしょう」
メイジーが言うので
俺は隣に座るクリムに
ちょっとごめんね、と
その手を取った。
「あ、アキ様?」
戸惑うクリムを無視して、
俺はクリムのシャツの袖をメイジーに見せる。
「ほら、シャツの袖の
ボタンのところだったら
あまり目立たないでしょ?
でも、着替えをするときは
絶対に見る場所だから、
このシャツのボタンを外すたびに
クリムはメイジー嬢のことを
思い出すと思うよ」
そう言うと、
メイジーは顔を真っ赤にした。
「あとはね」と今度は逆隣に座る
ルシリアンの手を
逃げないように俺は掴んだ。
「シャツのボタンの一番上。
しっかりとボタンを留めてしまえば
襟で隠れてしまうけれど」
俺はルシリアンのシャツの襟を
ぺろっとめくった。
「ほら、この喉元のすぐ上の
この場所だったら、普段は見えないよ。
でもこれもボタンを外すとき、
刺しゅうの感触は指に伝わるから
服を脱ぐときには
ルシリアンは絶対に
エミリー嬢のことを思い出すよ」
そういうと、エミリーも、
そして何故かルシリアンも
顔を真っ赤にする。
あれ?
中学生に恋愛を語るのは、
まだ早すぎたか。
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