完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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婚約騒動が勃発しました

83:婚約者を取り合います?

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 やっと授業が終わり、
休み時間を知らせるベルが鳴った。

ルティクラウンの周囲には
恐る恐ると言う様子で
クラスメイト達が集まり、
おずおずと話しかけている。

ルティクラウンは
にこやかに返事をしていて、
身分関係なく交流したいという言葉に
嘘はないようだ。

俺は遠慮するけどね。

俺とルシリアン、クリムは
ルティクラウンが
クラスメイトと
おしゃべりしている姿を確認して
そっと教室を出た。

俺が教室を出るとすぐに
ティスの護衛であるケンさんが
俺たちに近づいてきた。

何故ここに?
ティスの護衛をしなくてもいいのか?

ケンさんのそばには
俺の護衛のキールが立っていて
俺を見るとすぐに頭を下げた。

「アキルティア様、殿下がお呼びです。
ご学友もご一緒に来ていただけますか?」

ケンさんが丁寧に言う。

「わかりました」

俺が頷くと、ルシリアンとクリムも
同じ様に頷く。

俺たちはケンさんとキールに
前後で挟まれるように廊下を歩き、
王族専用の部屋へと案内された。

あれだよな。
ルティクラウン殿下の話だよな、きっと。

俺たちがやや緊張して部屋に入ると
そこにはティスと、何故か
卒業したはずの義兄がいた。

しかも何やら
義兄がティスに怒っていた。

怒鳴るとかではなく、
怒りを込めた声で。

けれども
声を荒げるわけでもなく、
淡々とティスを追い詰めるかのように
言葉を早口で紡いでいる。

俺たちが部屋に入ってきたことに
気が付いたティスは
俺を嬉しそうに見たが、
それはきっと、
助けが来たと思ったのだろう。

涙目で俺を見るティスに
保護欲が湧いたのは仕方がない。

俺にとってティスは
可愛い弟みたいなものだからな。

だが俺のそんな表情と
ティスの様子を見た義兄は
大きなため息をこれみよがしに付く。

びくん、とティスの身体が揺れた。

「殿下、私の義弟を守るどころか
庇ってもらうつもりですか?」

「何を言う、
誰もそんなことは言ってないだろう」

ティスはそう言うが、
さっきの表情を見たら
義兄の言葉が出るのもわかる。

でも俺は別にティスに
守ってもらうつもりはないしな。

「義兄さま、僕はティスに
守ってもらわなくてもいいし、
僕にはキールがいます。
ティスが僕を守る必要はないでしょう?」

意味の分からないことを言ってティスを
イジメないでください。

と俺が言うと、
何故かティスは
目に浮かべていた涙の量を増やし
傷付いた顔をする。

え?
なんで?

「アキ、アキはその護衛の方がいいのか?」

ティスがそんなことを言いだすが、
何がだ?
修飾語を言え。

「我が家の護衛は優秀だからな」

俺が何かを言う前に義兄はそう言い
キールを見る。

キールは戸惑った顔をしながら
義兄に無言で頭を下げた。

「アキルティア、友人たちも呼び出してすまない。
まず座ってくれ」

と義兄が言うが、
ここは王族専用の場所で
義兄が仕切るのはおかしいだろう?

だが義兄は俺の表情を読んだ筈なのに
早く、と言う。

「アキ」

俺はティス名前を呼ばれた。

「アキはここ。私の隣に座って?」

義兄が俺に座れ、と
椅子を引いてくれていたのに
ティスは俺を義兄とは
離れた椅子に座らせる。

いいけどな。
それ、義兄に対して結構失礼なことだぞ?

相手が義兄だからいいけど。

クリムとルシリアンも、
ティスの行動を唖然としたように見ている。

ほら、こいつらも王子殿下の
不躾な行動に驚いてるぞ?

義兄はティスを見ていたが
何も言わずに俺のために
引いていた椅子に座った。

全員が座ると
侍従がお茶を淹れてくれて、
その後は人払いされた。

キールとケンさんも部屋の外に出る。

「休憩時間に集まってもらってすまない」

ティスがまず声を出す。

「情報を共有しておくべきだと
思うことがあってな」

さらに言葉を続けようとしたティスを
義兄が手で制して言う。

「私が説明しよう」

この場を当然のように仕切る義兄に
誰も意を唱えることなどできなかった。

義兄。

いつのまにか貫禄が付いて
前世弟の成長を
喜ぶと言うよりは、
ちょっと怖い。

義兄に本気で怒られたら
めちゃくちゃ怖いだろうな。

幸い俺は、義兄の
『兄』ポジションも持ってるから
本気で怒られることは
ないだろうけど。

俺よりも7つも年上なのに、
こいつはたまに『弟』に
戻って甘えてくるぐらいだしな。

だがこうしてみると、
義兄はさすが
次期公爵家の当主だと
思える貫禄だ。

貫禄とか人前で話をしたり
場を仕切ったり、
それこそ人前で話をする度胸とか。

そういうのはある程度
経験が必要だから、
こういう義兄を見ると
ティスはまだまだ、
子どもというか、
未熟だと思ってしまう。

まだティスは14歳だし、
まだまだ伸びしろがあるから、
比べたら可哀そうだけどな。

でも俺は、ティスが
自分と義兄を比べて
張り合ったり、
落ち込んだりしている
ことにも気が付いていた。

だからまた、
この場を仕切る義兄に
コンプレックスを刺激されて
いないかと、そっと隣を
盗み見る。

大丈夫か?

俺がティスを見ると、
ティスも俺を見ていた。

視線が合い、
大丈夫、と言わんばかりに
ティスの手が俺の手に触れる。

どうした?
不安になったのか?

俺がティスの手を
机の下で握ってやると
ティスは嬉しそうに
はにかんだ顔をした。

そんなティスを見て
義兄は「集中しろ」と
冷たく言う。

義兄よ。
めちゃくちゃ怖いんですけど?

これなら俺、
義兄には俺の前だけは
ずっと『弟』モードで
俺に甘えていて欲しいと、
切に思ってしまった。



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