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63:王家の嫁に【王妃SIDE】
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初めてチェスターコート様が
キャンディス様と子どもを連れて
王宮に来た日のことは忘れられない。
キャンディス様は学生の頃のように
美しい姿のまま、パンツ姿で
私のもとに現れたのだ。
私はすっかり舞い上がり、
息子たちを庭へと追いやってしまった。
キャンディス様はにこやかに
私の話を聞いてくださり、
私の押さえつけていた恋心が
また暴れ出す。
けれど。
そんな私の元に、
陛下とチェスターコート様が
息子たちを連れて
庭から戻ってきた時に、
夢は終わったのだ、と感じた。
キャンディス様にだけは
嫌われたくない。
キャンディス様の子どもと
私の息子を結婚させたいと思っていたが
そんなことを言ってキャンディス様に
嫌われるぐらいなら、
私は何も言わず、学生時代に出会った
親しい先輩の一人でいい。
私はそう決意する。
が。
なんと息子が、キャンディス様の子どもに
どうやら一目惚れしてしまったらしい。
血は争えないということか。
そこから、私も陛下も、
もちろん、ささやかな私情は
入ってはいるが、息子の恋心を
応援すべく動き始めた。
チェスターコート様も
子ども同士が仲良くなってしまえば
あまり強く拒否もできないようだった。
そんな時だ。
キャンディス様の子ども……いいえ。
アキルティアが、王家に潜り込んだ
間者を見抜いたのは。
正直、驚きしかなかった。
その後も、アキルティアは
すばらしい成長を見せた。
1歳年上の息子、ジャスティスと共に
同じ内容の勉強をして、
なおかつ、さらにその上をいく。
ジャスティスが難しいと
匙を投げていた勉強科目も、
アキルティアがかみ砕いて説明することで
ジャスティスは瞬く間に理解し、
ぐんぐんと成績を伸ばしていく。
ジャスティスは王子教育をしているが
じつはアキルティアには内緒で
王妃教育の内容を学ばせている。
が、それも難なくこなしているようだ。
それはキャンディス様の子どもだから、ではない。
アキルティアという存在が、
稀有であり、王家に必要な存在だと
私も陛下も痛感している。
だからこそ、ジャスティスには
アキルティアへの想いを
成就させて欲しい。
おそらく、アキルティアが
望まなければ、王家の者との婚姻など
キャンディス様も、チェスターコート様も
決して許しはしないだろうから。
ジャスティスが学園に入り、
アキルティアもまた学園に入学して
二人の関係は随分と親しくなったと思う。
ただし、甘い雰囲気ではなく
あくまでも親友という感じだったけれど。
ジャスティスはアキルティアと
会えた日は嬉しそうに私に報告に来る。
何を話して、どんなことで喜んで貰えたか。
そんな些細なことで喜ぶジャスティスに
私はいくつかのアドバイスをする。
たとえば、常に王族として
周囲に気を張らなければならないが、
大切な人の前だけは、
気取らず、そのままの感情を
さらけ出すこと。
アキルティアが嫌な顔をしないのであれば
多少は甘えても良いこと。
繕った姿より、自然な姿を見せた方が
愛情は育つこと。
好きな人の前では格好いい姿でいたいだろうが、
それではアキルティアの心は掴めないだろうということ。
ジャスティスは私のアドバイスに頷き、
王宮で二人っきりになった時は
手を繋いだり、泣き言を言ってみたり、
素直な気持ちを表現しているようだ。
ジャスティスは気が付いていないが、
王宮ではどんなに人払いをしても
護衛や侍女が隠れた場所で控えている。
つまりジャスティスが何を言い、
どんなことをアキルティアにしているかは
すべて報告にあがってくるのだ。
ある日、ジャスティスとアキルティアが
庭の散策中に、芝生に座ることがあったらしい。
そこで、アキルティアが靴を脱いだと
護衛の一人から大慌てで報告が来た。
靴を脱ぐのは、素足を見せるのは、
親しい……愛情を交わした相手にだけだ。
護衛はアキルティアがジャスティスに
そこまで心を許しているのだと
頬を高揚させて報告に来たが、
私はそれが違うことがすぐにわかった。
アキルティアはキャンディス様と
チェスターコート様に大事に大事に
箱入りのように育てられている。
次期後継者として養子に入った義兄でさえ
アキルティアを大切に守っている。
だからこそ、アキルティアは
そのような閨事がらみの
マナーを知らないのだと思った。
けれど、これを利用することはできないだろうか。
アキルティアは知らなかっただけかもしれないが、
周囲から見れば二人は閨を共にしても
おかしくないぐらいの関係に見られる可能性だってある。
外堀を埋めるために
噂を広めるのはどうだろうか。
いえ、ダメ。
そんなことをしたら、
キャンディス様に嫌われてしまう。
アキルティアが嫁に来ても、
キャンディス様に嫌われては
元も子もない。
どうしたら良いのかしら。
正攻法しかないのなら、
ジャスティスの良さをアキルティアに
知ってもらうしかない。
けれど、これだけ親しくしているのに
恋愛に発展しないのだから、
このままでは恐らく何年たっても
二人の関係は変わらないだろう。
何か、二人の間にいつもと違う
何かが起こればいい。
たとえば、良く歌劇で目にする
恋愛ストーリーのように、
ジャスティスに懸想する
ご令嬢が現れるとか。
そんなことを思うのは
王妃、いや、母親として失格なのだろうか。
でも、どうしても
アキルティアを嫁に欲しい。
陛下に何か策がないか、
相談してみようかしら。
キャンディス様と子どもを連れて
王宮に来た日のことは忘れられない。
キャンディス様は学生の頃のように
美しい姿のまま、パンツ姿で
私のもとに現れたのだ。
私はすっかり舞い上がり、
息子たちを庭へと追いやってしまった。
キャンディス様はにこやかに
私の話を聞いてくださり、
私の押さえつけていた恋心が
また暴れ出す。
けれど。
そんな私の元に、
陛下とチェスターコート様が
息子たちを連れて
庭から戻ってきた時に、
夢は終わったのだ、と感じた。
キャンディス様にだけは
嫌われたくない。
キャンディス様の子どもと
私の息子を結婚させたいと思っていたが
そんなことを言ってキャンディス様に
嫌われるぐらいなら、
私は何も言わず、学生時代に出会った
親しい先輩の一人でいい。
私はそう決意する。
が。
なんと息子が、キャンディス様の子どもに
どうやら一目惚れしてしまったらしい。
血は争えないということか。
そこから、私も陛下も、
もちろん、ささやかな私情は
入ってはいるが、息子の恋心を
応援すべく動き始めた。
チェスターコート様も
子ども同士が仲良くなってしまえば
あまり強く拒否もできないようだった。
そんな時だ。
キャンディス様の子ども……いいえ。
アキルティアが、王家に潜り込んだ
間者を見抜いたのは。
正直、驚きしかなかった。
その後も、アキルティアは
すばらしい成長を見せた。
1歳年上の息子、ジャスティスと共に
同じ内容の勉強をして、
なおかつ、さらにその上をいく。
ジャスティスが難しいと
匙を投げていた勉強科目も、
アキルティアがかみ砕いて説明することで
ジャスティスは瞬く間に理解し、
ぐんぐんと成績を伸ばしていく。
ジャスティスは王子教育をしているが
じつはアキルティアには内緒で
王妃教育の内容を学ばせている。
が、それも難なくこなしているようだ。
それはキャンディス様の子どもだから、ではない。
アキルティアという存在が、
稀有であり、王家に必要な存在だと
私も陛下も痛感している。
だからこそ、ジャスティスには
アキルティアへの想いを
成就させて欲しい。
おそらく、アキルティアが
望まなければ、王家の者との婚姻など
キャンディス様も、チェスターコート様も
決して許しはしないだろうから。
ジャスティスが学園に入り、
アキルティアもまた学園に入学して
二人の関係は随分と親しくなったと思う。
ただし、甘い雰囲気ではなく
あくまでも親友という感じだったけれど。
ジャスティスはアキルティアと
会えた日は嬉しそうに私に報告に来る。
何を話して、どんなことで喜んで貰えたか。
そんな些細なことで喜ぶジャスティスに
私はいくつかのアドバイスをする。
たとえば、常に王族として
周囲に気を張らなければならないが、
大切な人の前だけは、
気取らず、そのままの感情を
さらけ出すこと。
アキルティアが嫌な顔をしないのであれば
多少は甘えても良いこと。
繕った姿より、自然な姿を見せた方が
愛情は育つこと。
好きな人の前では格好いい姿でいたいだろうが、
それではアキルティアの心は掴めないだろうということ。
ジャスティスは私のアドバイスに頷き、
王宮で二人っきりになった時は
手を繋いだり、泣き言を言ってみたり、
素直な気持ちを表現しているようだ。
ジャスティスは気が付いていないが、
王宮ではどんなに人払いをしても
護衛や侍女が隠れた場所で控えている。
つまりジャスティスが何を言い、
どんなことをアキルティアにしているかは
すべて報告にあがってくるのだ。
ある日、ジャスティスとアキルティアが
庭の散策中に、芝生に座ることがあったらしい。
そこで、アキルティアが靴を脱いだと
護衛の一人から大慌てで報告が来た。
靴を脱ぐのは、素足を見せるのは、
親しい……愛情を交わした相手にだけだ。
護衛はアキルティアがジャスティスに
そこまで心を許しているのだと
頬を高揚させて報告に来たが、
私はそれが違うことがすぐにわかった。
アキルティアはキャンディス様と
チェスターコート様に大事に大事に
箱入りのように育てられている。
次期後継者として養子に入った義兄でさえ
アキルティアを大切に守っている。
だからこそ、アキルティアは
そのような閨事がらみの
マナーを知らないのだと思った。
けれど、これを利用することはできないだろうか。
アキルティアは知らなかっただけかもしれないが、
周囲から見れば二人は閨を共にしても
おかしくないぐらいの関係に見られる可能性だってある。
外堀を埋めるために
噂を広めるのはどうだろうか。
いえ、ダメ。
そんなことをしたら、
キャンディス様に嫌われてしまう。
アキルティアが嫁に来ても、
キャンディス様に嫌われては
元も子もない。
どうしたら良いのかしら。
正攻法しかないのなら、
ジャスティスの良さをアキルティアに
知ってもらうしかない。
けれど、これだけ親しくしているのに
恋愛に発展しないのだから、
このままでは恐らく何年たっても
二人の関係は変わらないだろう。
何か、二人の間にいつもと違う
何かが起こればいい。
たとえば、良く歌劇で目にする
恋愛ストーリーのように、
ジャスティスに懸想する
ご令嬢が現れるとか。
そんなことを思うのは
王妃、いや、母親として失格なのだろうか。
でも、どうしても
アキルティアを嫁に欲しい。
陛下に何か策がないか、
相談してみようかしら。
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