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愛される世界?
17:運命の出会い【ティスSIDE】
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初めてアキルティアと会ったのは6歳の時だった。
母上のお茶会に無理やり参加させられたので
鮮明に覚えている。
母上は数日前から俺にお茶会に
参加するように何度も何度もいい、
さすがに子どもながらに
婚約者候補との顔合わせだと思った。
そう思うと、
メンドクサイと思ったし、
今から将来を決められるのも
嫌だと思った。
だから会うのはいいけれど
それだけだと、僕は何度も念を押した。
母上も僕の考えていたことが
わかったのだろう。
「ばかね。
会わせるのはあなたの従弟よ」
と、笑う。
「イトコ?」
「そう。あなたのお父様の
弟の息子よ」
そう言われて、なーんだ、って思った。
息子だったら、友達になれるかな。
僕には同じ年ぐらいの友達はいない。
当たり前だけど、僕は王子で
次期国王だから、
誰とでも仲良くしてはいけないって
父上からも言われている。
どうしてかはわからないけれど、
父上が言うのだから
僕は従うしかない。
友だちもいないし、
国王になるための勉強も
難しいことばかりだし、
王子になんて生まれなかったら良かった。
アキと会ったときの僕は
いつもそんなことを考えていて、
とにかくやさぐれていた。
そんな僕が母上の茶会に
来たアキルティアを見た時、
その美しさに、
僕のイライラとか
ドロドロした感情が
一気に浄化されたような気がした。
黄金色の髪が
太陽の光でキラキラ
輝いていたし、何よりも
青みがかった紫の瞳が
とても澄んでいて、
もっと近くで見たいって思ったんだ。
だから僕は自己紹介が終わったら
すぐにアキルティアを庭に誘った。
とっておきの薔薇を見せてあげたくなったからだ。
ただ、お茶会の前に母上から
アキルティアは体が弱いから
気にかけてやりなさいと
何度も言われていたことを思い出す。
だから僕は護衛を連れて行くとき、
いつもなら一人だったけれど
二人の護衛を連れて行くことにした。
何かあった時、
僕は走って逃げれるけど、
アキルティアは護衛に抱っこさせて
逃げなければならないと思ったからだ。
本当は僕が抱っこして
逃げることができれば良いけど、
さすがに無理だと言うことはわかる。
母上は僕の願いを聞き入れ、
護衛を三人連れて行くように言ってくれた。
母上もアキルティアを
気にしているようだと思った。
僕は早く薔薇を見せたくて
アキルティアの手を握る。
柔らかくて、白い手に
ドキドキしたのは、ナイショだ。
でも、王家の庭は広くて、
とっておきの薔薇は
庭の奥にあるから
歩いているとアキルティアが
息を切らしていることに気が付いた。
俺は慌ててアキルティアを
東屋に連れて行った。
「ごめんね。
歩くのが早かったのかな。
君に綺麗な薔薇を早く見せたくて」
そう言うと、
「いえ。僕の体力が無いのが悪いのです。
申し訳ありません」
と、アキルティアはすまなそうに目を伏せる。
俺はそんな顔を見ていられなくて、
早口に怒鳴ってしまった。
「そんなことないよ!
アキルティアの身体が弱いって
前もって母上に聞いていたのに」
僕はアキルティアを座らせ、
護衛に水を持ってくるように言う。
護衛を三人にしていてよかった。
水を飲むとアキルティアは
落ち着いてきたようで、
「心配してくださり、ありがとうございます」
と、笑顔を見せた。
その笑顔が可愛くて。
「元気になったか?」
と聞くと、「はい」と返事が返ってくる。
そんな他愛のないやり取りができる相手も
僕には一人もいなかった。
友だちになれるかな。
そんなことを思っていたから。
つい口から本音が漏れた。
「よかった。
僕……初めて友だちができると思ったら
嬉しくて。
つい、急がせてしまって。
ごめん、ほんとに」
そう言うと。
アキルティアはきょとん、とした顔で
僕を見て、笑ったのだ。
友だちができると喜んでいたのを
笑われたのだと思い、
僕は唇を尖らせた。
いつもはこんな子どもっぽい仕草は
しないように気を付けていたのに。
それに口調だって、
仲良くなりたいと思っていたから
王子らしくなかったと思う。
でも
「そ、そんなに笑わなくてもいいだろ」
というと、アキルティアはにこやかに
「申し訳ありません。
その、安心してしまいまして」
という。
「安心?」
「はい。王子も……僕と同じ子どもなのだと思って」
意味が分からない。
「同じ……僕とアキルティアも同じ?」
「はい」
その言葉に僕は理解した。
アキルティアも友達がいないのだ。
「そうか、同じか!」
じゃあ、思いは一緒だよな。
「僕とはもう友達だよな」
「はい。光栄です」
頷いてくれたけれど、
そんな堅苦しい言葉は嫌だ。
「そうじゃないだろ。
友だちは、もっと親しく話すべきだ」
そういうと、アキルティアは
苦笑しながら頷いた。
「じゃあ、僕のことはティスと呼んでいい。
僕もアキルティアのことはアキと呼ぶから」
強引に言うと、アキは
戸惑うように「え、っとはい」
という。
でも、僕の名を呼ぶとき
「ティス……」と口ごもったので
大急ぎで「様とか殿下とか、つけなくていいからな!」
と、言った。
友だちは呼び捨てだと決まっているはずだ。
アキは困ったような顔をしたけれど、
すぐに話題を変える。
「呼び方はおいおい……。
それよりも、薔薇を見せて貰えますか?」
そう言われて、
僕は薔薇のことを思い出した。
今すぐに呼び捨ては無理でも
これから仲良くなっていけばいいんだ。
そしたら、呼び捨てだとか
そんなこと気にしなくなる筈だ。
だって、もう友達だから。
僕は嬉しくて、アキと手を繋いで
薔薇を見に行くために
歩き出した。
母上のお茶会に無理やり参加させられたので
鮮明に覚えている。
母上は数日前から俺にお茶会に
参加するように何度も何度もいい、
さすがに子どもながらに
婚約者候補との顔合わせだと思った。
そう思うと、
メンドクサイと思ったし、
今から将来を決められるのも
嫌だと思った。
だから会うのはいいけれど
それだけだと、僕は何度も念を押した。
母上も僕の考えていたことが
わかったのだろう。
「ばかね。
会わせるのはあなたの従弟よ」
と、笑う。
「イトコ?」
「そう。あなたのお父様の
弟の息子よ」
そう言われて、なーんだ、って思った。
息子だったら、友達になれるかな。
僕には同じ年ぐらいの友達はいない。
当たり前だけど、僕は王子で
次期国王だから、
誰とでも仲良くしてはいけないって
父上からも言われている。
どうしてかはわからないけれど、
父上が言うのだから
僕は従うしかない。
友だちもいないし、
国王になるための勉強も
難しいことばかりだし、
王子になんて生まれなかったら良かった。
アキと会ったときの僕は
いつもそんなことを考えていて、
とにかくやさぐれていた。
そんな僕が母上の茶会に
来たアキルティアを見た時、
その美しさに、
僕のイライラとか
ドロドロした感情が
一気に浄化されたような気がした。
黄金色の髪が
太陽の光でキラキラ
輝いていたし、何よりも
青みがかった紫の瞳が
とても澄んでいて、
もっと近くで見たいって思ったんだ。
だから僕は自己紹介が終わったら
すぐにアキルティアを庭に誘った。
とっておきの薔薇を見せてあげたくなったからだ。
ただ、お茶会の前に母上から
アキルティアは体が弱いから
気にかけてやりなさいと
何度も言われていたことを思い出す。
だから僕は護衛を連れて行くとき、
いつもなら一人だったけれど
二人の護衛を連れて行くことにした。
何かあった時、
僕は走って逃げれるけど、
アキルティアは護衛に抱っこさせて
逃げなければならないと思ったからだ。
本当は僕が抱っこして
逃げることができれば良いけど、
さすがに無理だと言うことはわかる。
母上は僕の願いを聞き入れ、
護衛を三人連れて行くように言ってくれた。
母上もアキルティアを
気にしているようだと思った。
僕は早く薔薇を見せたくて
アキルティアの手を握る。
柔らかくて、白い手に
ドキドキしたのは、ナイショだ。
でも、王家の庭は広くて、
とっておきの薔薇は
庭の奥にあるから
歩いているとアキルティアが
息を切らしていることに気が付いた。
俺は慌ててアキルティアを
東屋に連れて行った。
「ごめんね。
歩くのが早かったのかな。
君に綺麗な薔薇を早く見せたくて」
そう言うと、
「いえ。僕の体力が無いのが悪いのです。
申し訳ありません」
と、アキルティアはすまなそうに目を伏せる。
俺はそんな顔を見ていられなくて、
早口に怒鳴ってしまった。
「そんなことないよ!
アキルティアの身体が弱いって
前もって母上に聞いていたのに」
僕はアキルティアを座らせ、
護衛に水を持ってくるように言う。
護衛を三人にしていてよかった。
水を飲むとアキルティアは
落ち着いてきたようで、
「心配してくださり、ありがとうございます」
と、笑顔を見せた。
その笑顔が可愛くて。
「元気になったか?」
と聞くと、「はい」と返事が返ってくる。
そんな他愛のないやり取りができる相手も
僕には一人もいなかった。
友だちになれるかな。
そんなことを思っていたから。
つい口から本音が漏れた。
「よかった。
僕……初めて友だちができると思ったら
嬉しくて。
つい、急がせてしまって。
ごめん、ほんとに」
そう言うと。
アキルティアはきょとん、とした顔で
僕を見て、笑ったのだ。
友だちができると喜んでいたのを
笑われたのだと思い、
僕は唇を尖らせた。
いつもはこんな子どもっぽい仕草は
しないように気を付けていたのに。
それに口調だって、
仲良くなりたいと思っていたから
王子らしくなかったと思う。
でも
「そ、そんなに笑わなくてもいいだろ」
というと、アキルティアはにこやかに
「申し訳ありません。
その、安心してしまいまして」
という。
「安心?」
「はい。王子も……僕と同じ子どもなのだと思って」
意味が分からない。
「同じ……僕とアキルティアも同じ?」
「はい」
その言葉に僕は理解した。
アキルティアも友達がいないのだ。
「そうか、同じか!」
じゃあ、思いは一緒だよな。
「僕とはもう友達だよな」
「はい。光栄です」
頷いてくれたけれど、
そんな堅苦しい言葉は嫌だ。
「そうじゃないだろ。
友だちは、もっと親しく話すべきだ」
そういうと、アキルティアは
苦笑しながら頷いた。
「じゃあ、僕のことはティスと呼んでいい。
僕もアキルティアのことはアキと呼ぶから」
強引に言うと、アキは
戸惑うように「え、っとはい」
という。
でも、僕の名を呼ぶとき
「ティス……」と口ごもったので
大急ぎで「様とか殿下とか、つけなくていいからな!」
と、言った。
友だちは呼び捨てだと決まっているはずだ。
アキは困ったような顔をしたけれど、
すぐに話題を変える。
「呼び方はおいおい……。
それよりも、薔薇を見せて貰えますか?」
そう言われて、
僕は薔薇のことを思い出した。
今すぐに呼び捨ては無理でも
これから仲良くなっていけばいいんだ。
そしたら、呼び捨てだとか
そんなこと気にしなくなる筈だ。
だって、もう友達だから。
僕は嬉しくて、アキと手を繋いで
薔薇を見に行くために
歩き出した。
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