完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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学園に入学しました

43:はじめてのカフェ

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俺たち三人は、公爵家の馬車で向かうことにした。
沢山の馬車が店の前に止まったら迷惑だろうしな。

馬車の中には俺たち三人と、キールがいる。
もちろん、キールは俺の隣だ。

ルシリアンのとクリムの侍従と護衛は
別の馬車で現地集合にしている。

ちなみに、父親が騎士団長のクリムが
家から連れて来ているのは侍従で、
父親が宰相のルシリアンは護衛だ。

クリムの家は、自分の身は自分で守る、が
基本らしくて、護衛なんぞいらん!と
当主の父親が言っているらしい。

俺としては、父親の護衛はいらなくても
10歳の息子にはいるんじゃないかと思うが、
クリムの侍従は、見るからに厳つい感じの
30代ぐらいだろう。
大柄の男性だった。

まだ現役で戦えそうだったが、
数年前に戦いで肩に傷を負い、
前線を退いた元騎士らしい。

クリム曰く「肩に傷があっても
大型魔獣と戦うんじゃなければ
絶対に負けない」ぐらいの強さらしいので
侍従とはいえ護衛ににもなっているようだ。

ただ元騎士本人は
「すでに騎士の身ではないので
侍従として扱ってください」と言っているんだとか。

騎士のプライドとかあるのかも。

その元騎士さんは、
どうやらキールとも面識があるようで
何故かキールは元騎士さん相手に
どこかビクビクしていた。

もしかしたら、以前の上司とか
教官とか、そんなのなのかもしれない。

なにせこの四人乗りの馬車に
誰か一人護衛が乗る話になったとき、
「公爵家の馬車なので私が」と手を上げたキールに
元騎士さんは無言で鋭い視線を向けた。

かなりの圧があり、
キールの顔色が一瞬青くなったのを
俺は確かに見たのだ。

だが、元騎士さんは何も言わず、
黙って頭を下げて了承の意を示した。

「うちの侍従がごめんね」とクリムは笑ったけど
もしかしたらキールの内心は
ガクブルだったのかもしれない。

俺としては強力な護衛が多くて助かるけどね。

ルシリアンが連れて来ていた護衛は
キールと同じぐらいの年齢だったが
どこか新人さんっぽい空気だった。

宰相さんは、子どもの護衛をさせることで
若い護衛の成長を促しているのかもしれない。

なんて考えていると、
あっという間にカフェに着いた。

俺たちが馬車から下りると、
馬車は馬車停めへ向かう。

俺が一番最後にキールに手を取られ
馬車を下りると、何故か学園で
別れたばかりのルシリアンと
クリムの護衛たち、いや
護衛と侍従が扉の前で待っていた。

いやいや、優秀過ぎない?
俺たちの馬車の方が先に出発したのに
どうやって先回りしたんだ?

馬車ではなく馬を使ったのだろうか。
なんにせよ、俺のまわりは
優秀な人間ばかりのようだ。

俺たちはルシリアンの案内で
closeになっている店の中に入る。

外装も内装も、
とても洗練された感じだった。

でも、ところどころに可愛さがある。

俺たちが店内に入ると
すでに何名もの大人たちが
立食パーティーのように
ざわめきながら
お茶やスイーツを食べている。

そっと見ると、大きく長いテーブルには
小さく切ったスイーツが
沢山並んでいて、
飲み物はオーダー制のようだった。

うん。いい感じだ。
こういうの、好きだな。

俺たちは学園が終わってから参加したから
この時間になっていたが、
すでに数時間前からこの場は解放されていて、
面倒な挨拶とか、そういうのも終わっているらしい。

「みんな勝手に食べたりしているので
注目されることはないですし、
アキ様も気になるものがあれば
何でも手にして食べてくださいね」と
ルシリアンは笑った。

ここに到着する時間帯もまた、
俺に気を遣ってくれていたらしい。

確かにこんな状態で
俺たちに気が付いて話しかけてくる人間は
そうそうないよな。

俺はルシリアンとクリムと一緒に
壁に沿って置いてあるスイーツの
テーブルにやってきた。

きっと研修中のスタッフなのだろう。
真新しい制服を来た若い男性が
丁寧に対応してくれる。

丁寧な口調なんだが、
時折、敬語が不自由で俺は笑ってしまった。

初々しいぞ。

「アキ様?」

と隣でクリムが首を傾げるので
俺は、いえ、と首を振る。

笑うなんて失礼だよな。
新人はみんなで育てるものだ。

「スタッフの方がとても一生懸命
僕のような子どもに
対応してくださるのが嬉しくて。
ありがとうございます」

と笑顔を心掛けて言ったのに、
目の前のスタッフは、
目を見開き、顔を真っ赤にして固まった。

うん?
子どもに褒められても嬉しくないか。

「い、いえ、こう、光栄です」

だがさすがに新人とはいえプロだな。
崩れた対応を隠して、
俺に持っていた皿を差し出した。

その隣に控えていた別のスタッフが
「お飲み物もご用意いたしましょうか」
と声を掛けてくれる。

差し出された皿の上には俺が頼んだ
小さいケーキとフルーツが乗っていたが
その皿は俺が手にする前に
さっとキールが取ってしまった。

「落とす危険がありますので私が」

そんな子どもじゃねぇよ。

「飲み物はどうされますか?」
キールに聞かれ、俺はスタッフに
冷たいジュースをも貰う。

そのそばで、ルシリアンとクリムも
好きなスイーツを皿に入れてもらっていたが
ちょっと多すぎないか?

全種類制覇を狙ってるのか?

しかも俺たちは立って食べるのではなく
長いスイーツテーブルの後ろに
隠されていたドアの先にある
スタッフルームで食事をすることを
許されていたのだ。

素晴らしい!

スタッフルームだったので
テーブルとイスしかないところだったが
俺としては座って食べれるだけで十分だ。

皿をキールに持ってもらわなくてもいいしな。

しかもだ。
わざわざ声を掛けなくても、
皿の上のケーキが無くなり
お代わりが欲しいと思う頃になると

近くにいるスタッフがそっと
沢山並んだケーキのトレーを持って来て、
その中から食べたいものを
選ばせてくれるのだ。

ついでに飲み物を頼めば
すぐに別のスタッフが持って来てくれる。

すばらしーっ!

いつも小食の俺だが、
今回ばかりは美味しいスイーツと
至れり尽くせりの環境で
おなかいっぱいになるまでケーキを食べてしまった。

腹いっぱいで満足だが、
そういえば個室にいるから
これじゃ、新しい友達なんでできないよな?

なんて思ったけど、
まぁ、満足だから、いいか。


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