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学園に入学しました
40:不穏?
しおりを挟む学園に入学してもうすぐ半年になる。
すっかり学生生活にも慣れて来た。
相変わらず俺はルシリアンとクリムと
一緒に行動していて、
たぶんだけれど、様々なところで
守られている、と思う。
ぶしつけな視線にさらされることは
随分と減ったけれど、
悪意っぽい視線を感じる時や
気持ち悪い視線を感じた時は
必ず二人が背中でかばってくれた。
それだけでも俺は安心する。
二人には婚約者がいるようだけど
二人とも一つ年下のご令嬢と
婚約しているらしく
まだ学園には入学していないらしい。
それに互いの婚約者のご令嬢同士も
仲が良いらしく、
休みの日は四人で会うこともあるらしい、
そんな二人の会話や仕草から
婚約者を大切にしていることが
伝わって来た。
これも俺が二人を心から
信頼するきっかけにもなったと思う。
ちなみに自習時間は、
俺とルシリアンは魔石研究の
先生のところに入り浸っている。
俺の母に執着してたっぽい先生は
義兄に話をした後すぐに
学園を去って行った。
正直、義兄か父が何かしたと思ったが、
俺もルシリアンも口をつぐんでいる。
真相を知るのが怖いしな。
その代わりにやってきたのが
魔石研究をしているという
年寄りのおじいちゃん先生だった。
魔法理論の先生だったが、
専門は魔石研究らしい。
授業はおじいちゃんだからか
声は小さいく、
授業中騒ぐ子もいる。
だが、この先生は子どもたちを
叱ることもなく、
いつも、にこにこしていて、
いつのまにか、騒ぐ子どもたちも
年寄りを虐めている気分になったのだろう。
何も言わずに授業を聞くようになった。
俺はこのじいちゃん先生の
おだやかな雰囲気が好きになってしまい、
研究室に押しかけて
自習時間の学びに、先生の手伝いをしたいと
訴えたのだ。
じいちゃん先生は、またにこにこして
それは偉いですねぇ、と俺の頭を撫でた。
手伝いたいと言ったのだけれど、
それが了承されたのか
されてないのか、じつはいまだにわからない。
だが、ルシリアンと研究室に
押しかけると、じいちゃん先生は
にこにこして、俺たちに魔石の話をするし、
質問したらきちんと答えてくれる。
課題っぽいことを言う時もあるし、
それを調べて持って行くと、
また俺の頭をよしよしと撫でた。
じいちゃん先生のほんわかした空気に、
俺だけでなくルシリアンも
癒されていると思う。
魔法のことを知るのも楽しいし、
学園に通って良かったなぁ、
なんて思うようになった頃、
その事件は起こった。
朝、義兄と一緒に登校し、
教室に着いたときのことだ。
先に来ていたルシリアンと
クリムに挨拶をして
自分の席に座った時、
違和感を感じたのだ。
だって机と椅子の位置が変だったから。
そんな細かいことを、と
思うかもしれないが、
俺の机は窓際で、
机の位置を調整しないと
昼頃には日差しが眩しいぐらいに
窓から差し込む。
なので俺は朝から夕方にかけて
さりげなく机を動かし
微調整しているのだ。
昨日、帰宅するときは、
朝日がまぶしくない位置に
机を調整して帰宅した筈なのに
椅子に座ると、日差しが目に当たる。
おかしい、と思い俺は
机をさりげなく動かしつつ
俺はカバンの中身を机の中に入れる……が。
入れようとしたら、何かひっかかる。
なんだ?と思って荷物を机の上に置くと、
クリムがどうしました?と
俺のそばに来た。
「なんか、机に入ってるみたい」
というと、ルシリアンがすぐに
俺を立ち上がらせて、窓辺に避難させる。
爆弾とかではないし
大げさだと思ったが、
二人とも真剣なので俺は素直に従った。
クリムが机の中を覗き込む。
「手紙、ですね」
クリムは一通の封筒と取り出した。
そしてくるり、と封筒の裏を見るが
差出人の名前は書いていないようだ。
「どうしましょうか、アキ様。
読まれますか?」
「うーん、どうしようかな」
名前が書いてないって不気味だよな。
誹謗中傷の内容だったら
さすがの俺でも読んだら傷付くと思う。
護衛のキールは近くの待機室にいるから
キールに渡そうか。
もう少し早ければ義兄に言えたのに。
俺が迷って、キールに、というと、
そばに居たルシリアンが
分かりました、と言って教室を出て行った。
「では、僕たちはここで待ちましょう」
クリムに言われ、ほんの数分だけ
待っていたら、ルシリアンに連れられた
キールが駆けつけてくれた。
クリムがキールに手紙を渡す。
「ありがとうございます。
こちらでお預かりいたします」
とキールは丁寧に二人に礼を言い、
俺にも頭を下げて手紙を持って出て行った。
「大事になちゃったね、ごめん」
と俺は二人にあやまったが、
二人はとんでもない、と笑う。
「アキ様の兄上様に頼まれていますから」
って、義兄よ。
どこまで俺の私生活に関わってくるんだ?
せっかく学園に入って
父の過保護から抜け出したと思ったのに、
結局は義兄の過保護に捕まっている。
なんだかなー。
俺は平凡に穏やかに生活できれば
それで十分なんだけどなぁ。
俺が遠い目をしていると
授業の開始を知らせるベルが鳴った。
俺は慌てて荷物を机の中に入れる。
と、すぐに教師が教室に入ってきて
授業が始まった。
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