完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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学園に入学しました

32:初めての食堂

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 入学式から一週間は授業は午前中だけだったが
翌週からは午後も授業になった。

そういうわけで、俺は初めての学食だ。

クリムとルシリアンと連れ立って
俺は食堂にやってきた。

学園内は身分制度がないとは言われているが
なんとなく入り口付近は男爵家など
身分が低い者が。

高位貴族になればなるほど、
奥の中庭に近い場所を使うのが
暗黙の了解になっているらしい。

というのも、俺は義兄に聞いて知っていたが
何故かクリムもルシリアンも
そのことを知っていた。

何故だ。

自信満々に伝えたのに
2人は「そのようですね」と
しれっと返事をしたのだ。

もっと驚いてくれよ!

俺が拗ねたと思ったのが、
ルシリアンがティスが
学校に通うようになった一年前に
一応、様子見として何日か
この学園に通ったことがある、と
教えてくれた。

その時に知ったんだとか。

なんだ、それ。
入学のフライングか?

そんなのありか?

と俺は拗ねたが、
この食堂のことや、学園のことは
たいてい、兄弟がいる者は
その兄たちから。

そして兄弟がいなくても
幼いころから親しくしている
友人、知人たちからそういう情報を
入学前から仕入れているらしい。

そりゃそうだな。
いくら身分が関係ないと言っても
男爵家が高位貴族に粗相をしたら
それで家が取り潰しとかに
なる可能性だってあるわけだし。

でも俺は知らなかった。
というか、みんな、どうやって
友だちを作ってるんだ?

俺たちは高位貴族だが
下級生でもあるので
中庭にやや近い真ん中あたりで席を取った。

新入生だから、
目立たないようにしないとね。

俺たちはトレーを持ち、
列に並んで食事を貰う。

好きなものをトレーに乗せていくのだが
メインの肉を2皿入れている子もいれば
パンばかりトレーに乗せている子もいる。

食費は親が月末に支払うようになっていて、
トレーを持って最後に精算する場所に行き、
学生証を渡すと、そこに何を頼んだのか
記録が残る仕組みになっていた。

前世の交通機関で使っていた
電子マネーみたいなものかと思った。

そして俺はやはりあまり
食べれないので、
スープとサラダと小さい肉が
申し訳程度に1つ。

俺があまりに小食だから
クリムもルシリアンも
物凄く驚いて心配されてしまった。

しかもクリムが俺の分のトレーまで
持ってくれる。

ならば俺が席を取っておくと言ったけれど
一人にするわけにはいかないと
二人に言われ俺は手ぶらでルシリアンと
クリムについて歩いた。

なんだか子分を従えてるように見えないか?

恥ずかしくて仕方がない。

席に座り、俺はやっと体の力を抜いた。

俺たちはゆっくりと食事を始め、
少し時間を置いてから、
俺は二人に尋ねることにした。

食べながらはマナー違反かもしれないが
学校の食堂なんだし、いいだろう。

周囲もざわざわしているし、
はしゃぎながら食べている子もいる。

「ねぇ、二人はどうやって友達を作ったの?」

いきなりの質問だったからか
二人がきょとん、と俺を見た。

しまった。
俺が友達ナッシングだと
気付かれてしまったか。

「えっと。
僕の友達はティスだけだから」

それでも一人はいるぞ!
ティスは友達だぞ、と主張してみる。

すると目の前に座るルシリアンが
少し考える素振りをして口を開いた。

「僕たちは家の繋がりを考えて
親が子供の友人を紹介するんです」
と言う。

「親が?」

「はい。ですから、僕とクリムは
殿下の友人候補……将来の
側近候補として出会い、友となりました」

そりゃすげえ。
めちゃくちゃ面倒くさいな、
貴族社会って。

「それ以外だと、
家同士で子どものお茶会を開いたり、
そこで招待されて友人となるべく
相手と出会う、という感じです」

と俺の隣に座るクリムも言う。

えぇ?
友だちって、そんなもん?

親とか、家とか関係なくさ。
と思ったけれど。

貴族社会だし、無理なのかも、とも思う。
なんだか寂しいけどな。

「ですがきっかけはどうあれ、
僕とシリは良い友人ですし
アキ様とも友達になれて
僕はとても嬉しいですよ」

クリムがそう言ってくれて、
そうだな、と俺も思う。

俺もそう思ってたんだ。
二人はティスが俺の話をしたから
興味を持ってくれたのかもしれないけれど。

きっかけはどうあれ、
俺は二人と友達になれて嬉しいんだ。

「でも僕はお茶会に行ったことなかったな」

王妃様のお茶会は何度か行ったけど、
それとこれとは別だよな。

「アキ様は特別ですから。
おそらく多くの招待状が届いていたかと
思いますが、公爵様がすべてお断りを
していたのだと思います」

ルシリアンの言葉に俺は納得する。

やりかねない、じゃなく、
絶対に、やっていた。

あの父なら、すべての茶会の招待を
片っ端から断っていたに違いない。

「父は……ちょっと過保護なんです」

と恥ずかしいが、一応言っておく。

自己申告をしておくと、
次に何か気が付いたときに
教えてもらえるかもしれないし。

すると二人は「わかる気がします」と
謎の言葉を言って、再び食事を始めた。

うん?
どういう意味だ?

俺もフォークを持ったが
謎しかない。

まさか、父の溺愛過保護が
貴族社会で広まってるとか?

はは、まさかな。

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