完結・転生したら前世の弟が義兄になり恋愛フラグをバキバキに折っています

たたら

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閑話2

俺の可愛い可愛い息子が天使すぎる【父SIDE】

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 俺の可愛い可愛い可愛い息子が天使過ぎる。

俺の可愛い息子が行方不明だと
屋敷に早馬が来た時は驚いた。

護衛のキールは何をしていたのかと
怒りに任せて馬に乗り、
タウンハウスに着いたときは、
すでに息子は見つかっていた。

俺は慌てて愛する妻にその旨を書いた手紙を
早馬に持たせた。

妻も心配しているだろうから
早く安心させたい。

キールを怒るのは後だと
執事に話を聞くと、
息子が部屋を抜け出したのは
義兄であるジェルロイドと
一緒に眠るためだという。

そんなに仲良くなる機会も無かったはずだが
どういうことかと不思議に思う。

だが兄弟なのだし、
仲良くなるのは良いことだろう。

息子は護衛のキールに
随分と叱られたようだし、
俺からは何も言わないでおこう。

俺まで怒ってしまっては
「父様、怖い。嫌い」なんて
言われてしまうかもしれないしな。

いつキールを執務室に
呼び出そうかと考えていると
息子は自分が悪いのだから
キールを叱らないで、と
天使のようなことを言う。

もちろん、は優しい父として
息子を受け止め、
その意見を認めてやった。

ついでに一緒に寝ようと
誘ってみる。

きっと息子は入学式を前に
緊張して眠れなかったのだろう。

いや、寂しかったのかもしれない。

俺が一緒に寝ようと誘うと
息子は驚いた様子だったが
嬉しそうに頷いた。

俺は息子と一緒に風呂に入り、
そのまま抱っこしてベットに連れて来た。

随分と大きく、重たくなったと思う。
だが、まだまだ俺は抱っこできる!

まだ俺は若いからな。
衰えや老化など、俺には無縁の言葉だ。

俺は息子を風呂に入れたのだが、
体を洗ってやると、
くすぐったいと笑い、
石鹸の泡を楽しそうに作る。

その泡で俺の背中を洗うと
言われたときは、
嬉しさのあまり泣きそうになった。

思えば初めての子どもだというのに
俺は息子になにもしてこなかったのではないだろうか。

風呂に入れたのも初めてだし、
一緒に寝るのも初めてだ。

乳母に任せずに
俺ももっと手を出せばよかった。

ただあまりにも小さな時は
怖かったのだ。

俺の大きな手で可愛い小さな息子が
潰れてしまうのではないかと。

だが可愛い息子は俺と
風呂に入ることを喜び、
なんと!背中まで洗ってくれた。

嬉しくて仕方がない。

そのままベットに連れて行くと
小さな体が俺の腕の中にすっぽり入る。

ずっとこのまま成長せずに
俺の息子でいて欲しいと思ってしまった。

嫁になど出したくない。
かといって、婿など貰って
我が屋敷で、息子が誰かと
イチャイチャしている姿も見たくない。

我がままで悪いか。

と不貞腐れたような気分になっていたが、
可愛い息子が嬉しそうに

「父様と一緒に寝るのは初めてですね」

というので我に返った。

「そうだな。
アキが小さいころに一緒に寝たいと
言ったことがあるのだが
キャンディスに止められてな」

あの時は、キャンディスの
あまりにも激しい主張に
自分の意見を通すことができなかった。

よほど俺の寝相は悪いらしい。
今日は大丈夫だろうか。

「母さまにですか?」

キャンディスは息子の前では
優しい母を装っているから
息子には意外だったのだろう。
目を丸くしている。

「あぁ、私は寝相が悪いから
寝ているうちにアキを潰してしまうと」

そう言うと、息子は笑った。
可愛らしい笑顔だ。

ずっと守ってやりたい。
せめて、この子が大人になり、
愛する人を見つけるまでは。

だがそんな俺に可愛い息子は言うのだ。

「僕は父様がいつも仕事で
僕たちのために頑張ってくれていることを
知っています。

父様が愛してくれてるのもわかってます。

だから、あまり頑張り過ぎないでくださいね」と。

しかも
「これから僕はタウンハウスにいるのですから
いつでも一緒に寝れますよ」と
明日以降も一緒に寝ようと言ってくれる。

なんて優しいんだ。
俺の息子はやはり天使か?

「そうだ、父様に子守唄だって
歌ってあげれます」

そんなこと言われたら、
歌ってもらおうと思う気になるだろう?

だが、ダメだ。
歌うのなら俺だ。
なにせ俺は父親だからな。

可愛くて息子に頬ずりすると
息子は俺の頭を撫でる。

可愛い。
俺の息子は可愛くて天使だ。

「それと、父様。
兄様のことなのですが」

「うん? 
ジェルロイドがどうかしたのか?」

そう言えば昨夜一緒に寝たと言ったな。
何かあったのだろうか。

心配する俺に息子は
可愛らしい瞳で俺を見た。

「兄様は寂しくないのでしょうか。
実の両親と離れて公爵家に来て。

ずっとこのタウンハウスに一人で住んで
一人で学園に通って。

僕は父様も母様もずっと一緒いて
沢山愛されていることを知っていますが、
兄様はそうじゃないのかも、と思って」

まだ10歳なのに、
義兄のことまで気を遣うとは。

「ジェルロイドが何か言ってたのかい?」

一応、ジェラルドが公爵家に対して
不満を漏らしている可能性もあり
聞いてみたが、息子はすぐに首を振る。

「いいえ、何も。
……でも僕は、兄様に守ってもらいたくない。
兄弟として仲良くしたいし、
兄様は兄様の人生を歩んで欲しい。

僕を守るために公爵家にいるのではなく、
幸せになるためにこの公爵家で、
僕の兄として、そばに居て欲しいのです」

なんて優しい子なのだろう。
それに引き換え、
俺は一人の子どもの人生を
息子のために使い捨てようとしていた。

いや、使い捨てるつもりはない。

場合によっては公爵家の次期当主に
据えるつもりだし、
教育だって最高のものを与えている。

だが、息子の言うように
家族愛だとか、そういうことは
考えたことが無かった。

たった10歳で公爵家に来たジェラルドに
私は愛情を示したことはあるだろうか。

それなりに可愛いと感じていたが
それを伝えたことがあっただろうか。

家族として接したことは?

可愛い息子を守るための
ただの踏み台とした見ていなかったのではないか。

可愛い息子に俺の心の奥にある
醜いものを見つけられたような気がした。

俺は不覚にも泣きそうになる。

そんな俺を、赦すかのように
俺の可愛い天使の息子は
しがみついた俺を小さな手で抱き返してくれた。

父様、大好きです。

とウトウトしながら言われて、
俺はとうとう涙を落とした。

俺の可愛い可愛い息子は、
優しくて、天才で、天使だ。

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