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愛される世界?

1:頑張ったご褒美

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 俺は、は、っと目を覚ました。

ここはどこだ?

あの白い世界はどこに行った!?

あれは神様だったのだろうか。
いや、とにかくここはどこだ?

俺はどうやらベットに寝ているらしい。
白い天井が見えて、
俺はベットから起き上がろうとした。

が、できなかった。

何故なら体が動かなかったからだ。

なんだ?
やっぱりここは病院なのか?

あの神様っぽいのは、夢だったのか。
そうだよな。

愛される世界なんて、
そんな都合の良いことなどあるわけがない。

それにしても、凄い衝撃だったのに
良く生きていたな。

いや、大丈夫か?!
ここの入院費とか、どうなったんだ?

事故だし、加害者が損害賠償とか
払ってくれるとは思うが、
そういや、会社にも連絡しなくては。

ナースコールを押したいところだが
とにかく体が思うように動かない。

俺はじたばたと手足を動かした。

なんだ。動くじゃないか。

じゃあ、何故起き上がれないのか。

と思っていると、部屋の扉が開く音がした。

助かった。

すみませーん、電話を借りたいんですが。

と、俺は言ったのだが。

「あぅうぅー」と妙な声が出た。

なんだ?
今のは俺の声か?

いや、そんなわけがない。
もう一度だ。

すみませーん!

「あぅううー!」

「あらあら、アキ様。
目が覚めたのですね」

と年配の女性の声がする。

「もうすぐお母さまも来られますからね」

と女性は俺を抱き上げた。

!?

状況が読み込めず、俺は固まってしまう。

けれど女性はそんな俺には気が付かず、
俺の背中を撫でながら
「今日は良いお天気ですねー」
と言いながら俺に窓の外を見せた。

俺の目は事故の後遺症なのか
怪我のせいなのか、良く見えない。

俺は何度もまばたきをした。
必死で外を見る。

なんだ、ここは!?

ベルサイユ宮殿か!?

ぼんやりとした状態でもわかる。
ここは病院などではなく
とてつもなく広い屋敷だということが。

どういうことだー!

「あぅううううー!」

「あらあら、お外を見れて
嬉しいのですね」

なんて女性は言うが、
いや、違う。

驚いてるんだ!

「おや、アキはご機嫌のようだね」

急に男性の声がして、女性が驚いたように
俺を抱っこしたまま頭を下げた。

「旦那様」

「あぁ、大丈夫だ。
楽にしてくれ。
少し時間ができたのでね。
アキの顔を見に来たんだ」

男性は俺のそばに来ると
ずい、と顔を俺のそばに寄せた。

近い!近い!近い!

「あぅ!あぅ!あぅ!」

「あぁ、父様に会えて
そんなに喜んでくれるなんて、
アキはなんて良い子なんだろう」

父……さま?

男性は女性から俺の身体を奪うように抱き上げた。

「いい子だな。
早く大きくなれよー」

すりすりと頬を擦り付けられ
過剰な愛情表現にまたもやビックリする。

どなってんだ?
というか、俺はどうなったんだ?

頭が混乱してきた。

「旦那様。
アキさまはようやく首が座ったばかりです。
あまり大きな衝撃は……」

「ああ、そうか、すまない、アキ」

首が座ったところ?!

と、驚いて。
俺は気が付いた。

俺の手は、と言うか
体が、物凄く小さいことに。

そして目も良く見えない。

どうなってんだ?

俺は大混乱だ。

「いい子だね、アキ。
アキが1歳になったら
ちゃんとお披露目をしよう。

皆、アキの可愛さに驚くぞ」

男性はそう言って笑う。

男性……俺の父親?

俺はあの時死んで、
生まれ変わったのか?

『元気になったら、
沢山愛される場所に行こう』

あの時の優しい声が耳元で聞こえた気がした。

そうか。

俺の魂が元気になったから
沢山愛される場所に
生まれ変わったんだ。

沢山愛される場所……。
俺が守るのではなく、
守ってもらえる場所。

それは、どこかくすぐったくて、
でも、物凄く嬉しい。

「なんて可愛い顔で笑うんだ?
可愛い可愛いアキ。
お嫁になんて出したくないよーっ」

「旦那様、まだ早いですよ」

なんて会話が聞こえてきて……
ちょっと待て。

お嫁に行く!?

俺は女子だったのかーっ!!


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