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愛があるれる世界
352:一妻多夫のディラン
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私がマイクに甘えていると、
大きな声が聞こえて来た。
ディランだ。
「来ましたね、愛玩動物が」
マイクの辛らつな言葉も相変わらずだ。
「でも、可愛いでしょ? 耳が」
「……否定はしません」
マイクもディランの耳に興味を持っていることは
見ているとわかる。
「ユウ!」と大きな声で名前を呼ばれ、
玄関のドアが開く音がする。
「鍵をかけていたのですが」
とマイクが呟いた。
きっと、強引に扉の鍵を壊したのだろう。
ディランの力は強くて、
力任せに扉を開けると
鍵を壊してしまうことがあるのだ。
「ユウ!」
バンっ、と部屋の扉が開く。
もしかして、宮殿から
走って来たのだろうか。
ディランは、はぁはぁ、と息を切らしている。
「ディラン、おはよう」
「お、はよう」
ディランの様子を見て、
マイクは仕方がないと言うように
水を持って来てくれた。
ディランはそれを受け取り
一気に飲む。
「今日は!
ユウは俺と過ごす日だろ!」
今日はディランのお休み日らしい。
何日も前から、二人っきりで過ごすのだと
ディランには言われていた。
私がそっとマイクを見ると
マイクは少しだけ寂しそうな顔をしたが
黙って頷いた。
「そうだね、じゃあ、ディラン。
まずは汗を拭こう、おいで」
私が手を広げると、
ディランはわんちゃんのように
私の前に駆けてくる。
マイクからタオルを受け取り
お座りするディランの顔を拭いてあげると、
ディランは嬉しそうな顔をする。
ディランのズボンがずれて、
大きな尻尾がぶん!と飛び出し、
パタパタと揺れた。
ディランは獣化をコントロール
できるようになっていたし、
自分の意志で獣人としての
能力を引き出したり押さえたり
できるようになった。
なのに私の前だけ、
ディランはこうして
すぐに獣化してしまうのだ。
それがまた可愛く思えてしまう。
「マイク、今日はパパ先生も
戻ってくるって言ってたよ」
「はい。午後からは賢者殿の家で
お戻りを待つつもりです」
マイクはパパ先生の家の鍵も持っている。
「私は午後まではこの家の鍵の修理を
しておりますので、ご安心を」
とマイクが言うと、
ディランは気まずそうな顔をした。
家の鍵を壊したことは理解しているようだ。
「わ、悪い。
ユウに会えるのが嬉しくて」
「いえ、いつものことですから」
マイクは嫌味を言ったと言うのに、
ディランは笑顔になり、
「そうか」って言う。
ディランはたぶんだけれど、
マイクのことを信頼?友情?
とにかく気を許す存在として
認めているんだと思う。
だから嫌味もこうして素直に
受け止めてしまうんだろうな。
「じゃあ、行こう」
ディランは立ち上がり、
そこでズボンから尻尾が出ていることに気が付いた。
「うわ、いつのまに」
と慌てて尻尾を消すけれど、
別にそのままでいいのにと思う。
そんな私を抱き上げてディランは
早足で私の建てた家へと向かった。
この家はディランが望んだとおりの家で
細かいところまで拘って創ってある。
ディランの方が、そう言うのは
めんどくさいとか言いそうなのに意外だ。
ディランがこだわったのは
通常よりは大きな扉と、大きめの家具。
おそらく獣化することを見越してのことだろう。
床に敷くラグも大きめで、
毛が抜けることを考えてか、
ラグの毛は極端に短いものを指定した。
浴室も、風呂も、ベットも、
全部大きなもの、という要望に
私の好きな色や装飾を加えて
この家はマイクの家に負けず劣らず
居心地の良いもののいなっている。
ただ、一緒にいる時間がマイクの方が
どうしても多くなるので
この家にいる時間は少なくなってしまうのだが。
ディランは家に入るなり、
リビングのソファーの上で
私を膝に乗せたまま、何度も
唇を重ねてきた。
頬も、目尻も、唇も。
口付というよりは、大型犬に
舐められるような勢いで
ディランは私を味わおうとする。
数日離れていた後は
必ずディランはこれをするので
私は慣れたものだ。
ディラン曰く、
「俺の匂いを付けてるんだ」らしいので
獣人ならではの習性みたいなのが
あるのかもしれない。
「あー、やっとユウを堪能できる」
ディランがようやく落ち着いたのか
私を抱きしめて呻いた。
「まだ忙しい?」
「そうだな。
それに俺は体を動かす方が得意なんだよ。
書類を見たりとか、そういうのは
苦手なんだ」
という言葉に、確かに、とは思う。
「でも頑張ってるんだよね、偉い偉い」
と頭を撫でると、すぐにディランは
嬉しそうな顔になる。
「なぁ、隣の国との道の工事も
随分と進んだし、そろそろ結婚式の
準備も始めようぜ」
「うん、いいけど」
「なんだ? ダメか?」
ディランが私の顔を覗き込む。
「ダメじゃないよ。
でも、何度も言うけど私は
『王族に嫁ぐ』ことはできないよ?
ディランと結婚しても、
王家の人間にはならないの」
つまり、政略結婚はしないということだ。
このことは、ヴァレリアンたちにも伝えている。
私の『力』を利用されるのも嫌だし、
王家に加担しているとも思われたくない。
「わかってる。大丈夫だ。
俺も自分が王子とは思ってないし、
今の仕事も王子としてではなく
ただの文官としてかかわってるだけだ」
ディランが文官、って
似合わな過ぎて笑えるけれど。
でも私のために頑張ってくれてるんだもんね。
「俺はユウと結婚したい。
仕方ないから、マイクも一緒でもいい。
隣国のあいつらのことも、
気に入らないけど、ユウと一緒にいれるなら
我慢して受け入れる。
だから、この国にいる時は
俺のことを考えて、俺を見てくれよ、ユウ」
「この国にいなくても、
ちゃんと考えてるよ」
私がそう言うと、ディランは目を輝かせた。
「じゃあ、今日はずっと一緒にいような」
私は頷き、ディランの首に腕を回した。
大きな声が聞こえて来た。
ディランだ。
「来ましたね、愛玩動物が」
マイクの辛らつな言葉も相変わらずだ。
「でも、可愛いでしょ? 耳が」
「……否定はしません」
マイクもディランの耳に興味を持っていることは
見ているとわかる。
「ユウ!」と大きな声で名前を呼ばれ、
玄関のドアが開く音がする。
「鍵をかけていたのですが」
とマイクが呟いた。
きっと、強引に扉の鍵を壊したのだろう。
ディランの力は強くて、
力任せに扉を開けると
鍵を壊してしまうことがあるのだ。
「ユウ!」
バンっ、と部屋の扉が開く。
もしかして、宮殿から
走って来たのだろうか。
ディランは、はぁはぁ、と息を切らしている。
「ディラン、おはよう」
「お、はよう」
ディランの様子を見て、
マイクは仕方がないと言うように
水を持って来てくれた。
ディランはそれを受け取り
一気に飲む。
「今日は!
ユウは俺と過ごす日だろ!」
今日はディランのお休み日らしい。
何日も前から、二人っきりで過ごすのだと
ディランには言われていた。
私がそっとマイクを見ると
マイクは少しだけ寂しそうな顔をしたが
黙って頷いた。
「そうだね、じゃあ、ディラン。
まずは汗を拭こう、おいで」
私が手を広げると、
ディランはわんちゃんのように
私の前に駆けてくる。
マイクからタオルを受け取り
お座りするディランの顔を拭いてあげると、
ディランは嬉しそうな顔をする。
ディランのズボンがずれて、
大きな尻尾がぶん!と飛び出し、
パタパタと揺れた。
ディランは獣化をコントロール
できるようになっていたし、
自分の意志で獣人としての
能力を引き出したり押さえたり
できるようになった。
なのに私の前だけ、
ディランはこうして
すぐに獣化してしまうのだ。
それがまた可愛く思えてしまう。
「マイク、今日はパパ先生も
戻ってくるって言ってたよ」
「はい。午後からは賢者殿の家で
お戻りを待つつもりです」
マイクはパパ先生の家の鍵も持っている。
「私は午後まではこの家の鍵の修理を
しておりますので、ご安心を」
とマイクが言うと、
ディランは気まずそうな顔をした。
家の鍵を壊したことは理解しているようだ。
「わ、悪い。
ユウに会えるのが嬉しくて」
「いえ、いつものことですから」
マイクは嫌味を言ったと言うのに、
ディランは笑顔になり、
「そうか」って言う。
ディランはたぶんだけれど、
マイクのことを信頼?友情?
とにかく気を許す存在として
認めているんだと思う。
だから嫌味もこうして素直に
受け止めてしまうんだろうな。
「じゃあ、行こう」
ディランは立ち上がり、
そこでズボンから尻尾が出ていることに気が付いた。
「うわ、いつのまに」
と慌てて尻尾を消すけれど、
別にそのままでいいのにと思う。
そんな私を抱き上げてディランは
早足で私の建てた家へと向かった。
この家はディランが望んだとおりの家で
細かいところまで拘って創ってある。
ディランの方が、そう言うのは
めんどくさいとか言いそうなのに意外だ。
ディランがこだわったのは
通常よりは大きな扉と、大きめの家具。
おそらく獣化することを見越してのことだろう。
床に敷くラグも大きめで、
毛が抜けることを考えてか、
ラグの毛は極端に短いものを指定した。
浴室も、風呂も、ベットも、
全部大きなもの、という要望に
私の好きな色や装飾を加えて
この家はマイクの家に負けず劣らず
居心地の良いもののいなっている。
ただ、一緒にいる時間がマイクの方が
どうしても多くなるので
この家にいる時間は少なくなってしまうのだが。
ディランは家に入るなり、
リビングのソファーの上で
私を膝に乗せたまま、何度も
唇を重ねてきた。
頬も、目尻も、唇も。
口付というよりは、大型犬に
舐められるような勢いで
ディランは私を味わおうとする。
数日離れていた後は
必ずディランはこれをするので
私は慣れたものだ。
ディラン曰く、
「俺の匂いを付けてるんだ」らしいので
獣人ならではの習性みたいなのが
あるのかもしれない。
「あー、やっとユウを堪能できる」
ディランがようやく落ち着いたのか
私を抱きしめて呻いた。
「まだ忙しい?」
「そうだな。
それに俺は体を動かす方が得意なんだよ。
書類を見たりとか、そういうのは
苦手なんだ」
という言葉に、確かに、とは思う。
「でも頑張ってるんだよね、偉い偉い」
と頭を撫でると、すぐにディランは
嬉しそうな顔になる。
「なぁ、隣の国との道の工事も
随分と進んだし、そろそろ結婚式の
準備も始めようぜ」
「うん、いいけど」
「なんだ? ダメか?」
ディランが私の顔を覗き込む。
「ダメじゃないよ。
でも、何度も言うけど私は
『王族に嫁ぐ』ことはできないよ?
ディランと結婚しても、
王家の人間にはならないの」
つまり、政略結婚はしないということだ。
このことは、ヴァレリアンたちにも伝えている。
私の『力』を利用されるのも嫌だし、
王家に加担しているとも思われたくない。
「わかってる。大丈夫だ。
俺も自分が王子とは思ってないし、
今の仕事も王子としてではなく
ただの文官としてかかわってるだけだ」
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似合わな過ぎて笑えるけれど。
でも私のために頑張ってくれてるんだもんね。
「俺はユウと結婚したい。
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