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獣人の国
276:欲情
しおりを挟む私はソファーから滑り落ちて、
マイクに抱きしめられていたけれど。
しばらくすると、固い……ものが、
私の太ももあたりに当たっているのを感じた。
なんだろう、と思ったけれど。
私が身じろぎするとき、
それが何なのかわかった。
何故かと言うと、私の体も……
反応していたからだ。
ビックリして、慌ててマイクから体を離す。
マイクは「どうされましたか?」と
驚きを隠したように聞いてきたけれど。
それ以上に私は驚いていた。
だって、私の体が……
『祝福』も発動していないのに
樹幹が固くなってきているのがわかったからだ。
男性の身体になって随分と慣れたつもりで
いたけれど、正直、何がきっかけて
こんなことになったのかわからない。
確かにマイクとの口づけは
気持ちいいというか、
そういう雰囲気になったけれど。
そんな簡単に反応するものなのか?
私がオロオロとしていると
マイクが跪いたまま、
私の顔を下から覗き込んだ。
「ユウさま?」
その顔に、ドキっとする。
何度も見てきたマイクの顔なのに、
急に恥ずかしくなってきた。
「あ、あの、あのね」
病気……じゃない、と思う。
さすがにそんな勘違いはしない。
でも『祝福』が全く発動していないのに
自分が急に発情したみたいで
恥ずかしいし、うろたえる。
でも、マイクもさっき、
同じ様な感じになってたと思うから
言っても大丈夫だろうか。
そもそも駆け引きどころか
コミュニケーションをとることさえ
まともにできない私だったのだ。
うまく確信をぼかして伝えるなんて
高度なことなどできるはずもない。
でもマイクをうまく誤魔化せるなんて
思ってもいないし、下手したら
心配を掛けてしまうことも理解している。
だから、私は心を決めた。
「こ、ここ……が、なんか変……で」
とはいえ、直接的なことはやはり言えず、
言葉を濁して私はお腹の下あたりに手を当てた。
「何もしてないのに、
その、急に……」
「お腹が痛いのですか?」
いや、違う。
言い方が悪かった。
心配そうなマイクの顔に私は首を振る。
どうする?
どう言う?
ええ、ままよ!
私はマイクの手を引っ張って、
ズボンの上から固くなった樹幹に
少しだけ触れて貰った。
「な、なんか、変、でしょ?」
伝わっただろうか。
すぐに手を押し戻したから
わからなかったかもしれない。
マイクは呆然とした顔で私を見て、
「ユウさま」と小さな声で私を呼んだ。
「その状態になったこと……いえ、
自覚されたのは、初めてでしょうか」
私は素直に頷いた。
何度も抱かれたことはあるけれど、
抱かれ始めたら『祝福』が発動して
よくわからないまま抱きつぶされることが多いし、
そうでなくてもあの状態の時は、
意識は、というか理性がほぼない状態なのだ。
自分の身体を自覚したことなどない。
それにそもそも、男性の身体でもあり
幼い頃から知っている勇くんの身体を
しげしげと見つめるのも恥ずかしいというか
罪悪感みたいなものもあって
良く見たこともない。
でもそんなことを説明するのも難しく、
私は「いつもは、よくわからなくなるから」
と分かったような、わからないようなことを呟いた。
「そうでしたか」
マイクは頷くと、私の手を取り
立ち上がらせた。
「初めてのことで不安になってしまったようですね」
マイクは笑顔で言う。
物凄く笑顔だったけれど……何故?
「では、不安を私が取り払いましょう」
「マイクが?」
「はい。知らないから不安になるのです。
知識があれば、今後、同じようなことが
起こっても不安になることは無いはずです」
確かに!
マイクは私の手を取り、
そのまま浴室まで連れて行く。
「マイク?」
なぜ風呂?
と思ったが、
マイクは「知識と実技を兼ねましょう」
と優しく言う。
知識はともなく、実技?
意味が分からない。
「ユウさまは、ご自身のお身体のことを
あまり良く知っていらっしゃらないご様子ですので」
マイクはそう言い、
脱衣室まで来ると、
私の前に向かい合わせに立った。
いつもは背中から服の着脱を手伝ってくれるのに
何故?と思ったけれど、
マイクは手慣れた様子で私のシャツのボタンを
外していく。
「ユウさまのここが
固くなっていらっしゃるのは、
性的に興奮を感じたからだと思われます」
そっと、マイクがズボンの上から
私の樹幹に触れた。
「私に……興奮してくださったのでしょう?」
うっとりと言われ、私は顔が熱くなる。
「とても……嬉しいです、ユウさま。
あなた様のそのようなお顔を見ることができるなんて。
それも、私だけに」
マイクはズボンの上から何度も樹幹を撫でる。
「とても……興奮していらっしゃる。
徐々に、固くなられて」
マイクの声がうわずった。
「このままでは窮屈でしょうから
これは脱ぎましょうか」
マイクがそう言って私のズボンを脱がしたが、
下着はそのままだ。
「なんと……美しい」
ボタンをすべて外したシャツを一枚羽織り、
下着だけの姿になった私を
マイクは目を細めて見つめた。
そしてまた私の前で腰を下ろすと、
私の樹幹の前に顔を寄せた。
「甘い……匂いが致します。
私を引き寄せる……甘美な香りが」
蜜が出てきたのだろうか。
とにかく恥ずかしい。
「布地をこのように濡らして……
私を、求めて下さっているのですね」
私は羞恥心に悶えた。
なぜ今までのように『祝福』は発動しないのか。
なぜ理性は残っているのか。
早く快楽に溺れて
我を忘れてしまいたい!
そんなことを思ってしまったが、
それすらもマイクを感じたいと
欲情している証拠になっているような気がして
私はただただ、顔を赤くしたまま
俯くしかできなかった。
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このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。
【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!
このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。
ご興味があれば、併せてご覧ください。
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