【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

文字の大きさ
上 下
251 / 355
獣人の国

250:隣国の聖樹ー2

しおりを挟む






私とマイクが無言になったからか
ディランはこの国の『聖樹』について
すぐに話してくれた。

なんでもこの国の『聖樹』は
国民の憩いの場である広場にあって
誰もが見たり触ったりできるし、
その実を勝手に採っても構わないらしい。

なので、
子どもが欲しいと思ったら
誰でも『聖樹』の実を採りに行くらしい。

そして当たり前かもしれないけれど
『聖樹』の実を食べたからと言って
必ず子どもができるとは限らない。

だからこの国の人たちは
少し多めに採って帰ったり、
本来、1つでいい『聖樹』の実を
何個も食べてしまう人もいるのだとか。

どんなに食べても、
なかなか子どもを授からない人もいれば
「念のため」と多めに食べて、
双子や三つ子を生む人もいるらしい。

だから多産になってるのか。

これ、規制とかした方がいいんじゃないかな?

これもパパ先生と相談案件だよね。

やることがいっぱいで
頭が痛くなりそうだ。

これ、絶対に私一人で
解決するのは無理だったと思う。

パパ先生がこの世界に来てくれてよかった。

そのことだけは、
女神ちゃんに素直に感謝できる。

「うん、だいたいわかった」

私はディランの説明に頷いた。

考えるのは後だ。

まずは情報の確認をしなくっちゃ。

「教えてくれてありがとう。
じゃあ、その『聖樹』を見に行こう!」

まずは現地を見て。
それからパパ先生と相談だ。

私が椅子から立ち上がると、
マイクが私に手を差し出す。

が、その横からディランの腕が伸び
私を抱っこする。

「貴様っ」

マイクが声を挙げたが、

「俺が案内するんだから
ユウは俺が連れて行く」

とディランは譲らない。

そんな二人のやりとりも
だんだんと慣れてきた気がする。

「じゃあ、帰りはマイクが抱っこしてね」

と言えば、マイクは笑顔を見せてくれるし
ディランは嫌そうな顔をするが
文句は言わない。

「早く行こう」

そう促すと、ディランはわかったと
私を抱きなおす。

考えることもやることも沢山ある。

二人のことも、隣国にいる金聖騎士団の
皆のことも、気になると言えば気になるけれど。

でも、それはすべてが終わってからだ。

今は出来ることを、1つ1つ片付けて行こう。

まずはこの国の現状を変えること。

どんなに悩んでも私はこの世界では
誰か一人を愛することができない事実は
変えようが無いのだから
そんなことを考えるよりもすべきことがある。

私はやるべきことを頭の中で整理しながら
ディランに馬車に乗せて貰った。

ちゃんと御者さんがいて、
私とディラン、マイクが一緒に馬車に乗る。

そして私は相変わらずディランの膝の上だ。

マイクが不機嫌そうだったけど
私がひたすら「マイクは帰りに抱っこしてね」と
言っていたから喧嘩にはならずにいる。

今日はパパ先生の所に泊まりたいけど
大丈夫かな。

馬車は広場のすぐそばで止まり、
私はようやくディランの腕から
解放されて馬車を下りた。

馬車を下りようとしたとき、
先に降りたマイクに手を差し出され
エスコートしてもらったけど
抱っこはされていない。

私が先に「歩いてみたい」と言ったからだ。

街は石畳になっていて、
やっぱり街には多くの人が溢れている。

馬車はちゃんと車道というか
馬車道があって、通行人はその馬車道は
歩かないようにしているみたいだった。

そうじゃないと危ないしね。

私はマイクとディランの真ん中で
守られるように『聖樹』へ向かう。

街の人たちは大柄で、
背の低い私は人混みに流されそうで
二人が私を守ってくれているのだ。

『聖樹』は少し離れた場所でも
すぐにわかるぐらい大きな、大樹だった。

青々とした葉が沢山茂っている。

近くまで行くと『聖樹』の付近は
市民の憩いの場になっているようで、
公共の水飲み場やベンチがいくつもあり、
広場の脇には露店が並んでいる。

『聖樹』の周囲は一応、柵みたいなものが
あったけれど、それは元の世界でよく見た
小学校の花壇に差してあるような小さな柵だ。

青々とした葉からは、赤く熟れた実が見える。

そして『聖樹』の枝は柵を越えて
広場の方に伸びているので、
確かに実が欲しいと思えば、
誰でも手を伸ばして取れそうだった。

そして……驚いたのだけど。

本当にびっくりしたんだけど。

『聖樹』の実は、サクランボだった。

何が言いたいかと言うと、
私はまだ実際に隣国の『聖樹』の実を
ちゃんと見たことがなかったから
隣国の『聖樹』との違いは明確には言えないけれど。

私の中での『聖樹』の実は、
桃とかプラムとか、そんなイメージだった。

だって、あかちゃんの実みたいなものだし。

でも、この国の『聖樹』の実は
二つで1つとでも言えばいいのか、
サクランボみたいに、二つの実が
1つにくっついているのだ。

つまり、1つの実を採ると、
自然と2つ手に入ることになる。

そりゃ、2つとも食べたくなるよね??

しかも「念のため」に複数食べて
双子や三つ子ができる人もいるとか
言ってたけど、1つ食べたら2つの効果?
なんだったら、2つ食べたら4つの効果だもんね。

子だくさんになるのはわかる……気がする。

わかるけど、これ絶対に
規制すべきだよね?

いや、規制じゃなくてもいい。

でも一人1個とか、ルールは決めた方がいいと思う。

なんて思いつつ隣を見ると、
マイクが呆然とした顔でサクランボ……いや
『聖樹』を見ていた。

自国の『聖樹』との違いに
驚いたんだろうな、きっと。

いろいろ、きっと、いろいろ違うんだろう。

こりゃ、女神ちゃんだな。
女神ちゃんに聞こう。

と視線を『聖樹』に戻した先で
子どもが!

どう見ても小学生ぐらいの子どもが
『聖樹』の実を採って口に入れた!

「え! ちょっ」

慌てた私の様子にディランも
子どもの方を見たが、
「あー、腹減ってたのかもな」なんて笑う。

なんで?
いや、いいの?

「『聖樹』の実は、女神の恩恵だからな。
誰でも、いつでも食べてもいいんだ。

パートナーがいないなら、
どれだけ食べても子どもなんかできないし、
小さいうちは、おやつ代わりに食べる市民は
多くいるぞ」

へー、すごいねー。

って、棒読みで言ってしまった。

女神ちゃん……設定を1つ作ったら、
それはずっと守らないと混乱するからね。

変更するならすると言って欲しかったし、
いや違う。

その前に相談して欲しかったよ。

「ディラン」

「なんだ?」

「教会、行きたい」

「いいけど『聖樹』はもういいのか?」

「うん、その前に教会が先だって気が付いた」

私の言葉にディランは不思議そうな顔をしたけど
わかった、と言って私を抱き上げる。

すぐ近くだから歩いて行こう、と言われて
歩き出したけど、マイクはまだ呆然としたままだ。

「マイク、行こう」

私が声を掛けたらようやくマイクは
我に返ったみたいで、
すぐに私やディランを追いかけてくる。

「この国の状況は良くないとは思いますが
『聖樹』だけを見ると、羨ましいと感じます」

そして私のそばまでくると腰を折り、
私にだけ聞こえる小さな声で
ぽつり、と言った。

私はそんなマイクの頭をなでなでする。

おそるおそると言った様子で顔を上げたマイクに、
私は大丈夫、って笑って見せる。

「マイクの国の『聖樹』だって、
すぐに沢山の実が付くし、
この国だって、もっと良い方向に変わるよ」

「そう、ですね」

マイクも安心したような顔になる。

「じゃあ、行こう。
次は教会ね」

私の声にディランもマイクも頷いた。

さぁ、女神ちゃんと話をするぞーっ!









しおりを挟む
このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。

【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。

ご興味があれば、併せてご覧ください。
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...