【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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獣人の国

208:湯の中で

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 マイクにマッサージをしてもらったおかげで
私の体は物凄く軽くなっていた。

ベットの上で起きた時、
タオルが落ちて全裸だったのは驚いたけど
オイルを使ってマッサージしてくれていたのを見て
それも仕方ないかと思った。

オイルで汚れたら困るしね。

マイクは相変わらず過保護で
オイルを洗い流したいと言った私の体を
タオルで包んで抱っこしてくれる。

ふと見ると、マイクも裸だったけど、
オイルで汚れないように
マイクも服を脱いだのだろうか。

しかし客室にお風呂が付いているなんて
ホテルみたいだと思う。

マイクの部屋も同じ造りらしいので
さすが宮殿と言えばいいのだろうか。

お風呂に着くと、
マイクはすぐに私の体を
お湯で流して洗ってくれた。

この国のお風呂は、
濡れてもいいような生地の
マットのようなものが置いてあって、
その上に座って体を洗えるようになっている。

私は素直にその上に座って、
マイクに体を洗ってもらった。

一人で生きていた時には知らなかったけれど、
誰かに肌を触ってもらうのは
安心感があって、気持ちがいい。

つい、マイクに甘えたくなって
私は背中で膝立になり、
湯を体に掛けてくれているマイクに
もたれかかった。

「ユウさま?」

「ふふ、気持ちいいね」

「は、い」

背中をマイクの胸に押し付けて
私は下からマイクを見上げた。

「私もマイクの身体を揉んであげようか」

「い、いえ、そのようなことは…」

マイクは珍しく、
あからさまに狼狽えた。

確かに私はマッサージなど
誰かにしてあげたことなどない。

腕前は落ちるかもしれないし
効果があるかもわからない。

でも私は……なんというか、
マイクに甘えたい……触れ合いたい気分なのだ。

だからマッサージと言ったのだけど、
マイクは首を横に振るばかりだ。

じゃあ、もう一度私がマッサージをしてもらう?

そう思ったけれど、
それだとマイクばかりがしんどい思いをしてしまう。

素直に甘えたいとか言えばいいのかな。
でも、言えるはずもない。

だって、面倒だと思われたり、
嫌がられたりするかもしれない。

小さいころ、施設で職員さんに
甘えたかったけれど、
職員さんはいつも忙しそうで
私はなかなか声を掛けることができなかった。

そんなことを思いだし、
気持ちがゆらいでしまうけれど。

でも、と思う。
マイクになら言っていいかな。

だってマイクは絶対に私を拒絶しない。

でも、それだと私はマイクの気持ちを無視して
女神の愛し子という権力を振りかざし、
マイクを従わせていることにならないだろうか。

寝起きだからか、疲れているからか。
思考がまとまらなくなって、
気持ちがネガティブに傾いていく。

こういうのは良くない、と思う。

だって胸の奥底に隠してある
冷たい錘が、また重たくなるような気がするから。

だから私は思い切って、
マイクの身体から離れると
両手を上げた。

「ユウさま?」

「じゃぁ、抱っこして
湯の中に連れて行って?」

いい?と首を傾げると、
マイクはほっとしたような顔をして、
かしこまりました、と私を抱き上げた。

マイクは私の体ごと湯に入り、
私をおろそうとしたけれど、
私はそのままマイクの膝に座ることを望んだ。

「マイクの膝の上がいい」

そう言って、マイクの胸にすり寄れば
マイクは驚いた顔をしたけれど
そのまま私を膝の上で抱き寄せてくれた。

「どうなさいました?」

そう聞かれて、何が?と思った。
でも。

「不安、なのかな」

そんな言葉が出た。

「あやつがいないからですか?」

ディランのことだ。
でも私は首を振る。

「ディランのことは……私が
何かを言うことはできないから、いいの。

ディランはもともと、この国のために
私を探しに旅に出たわけだし、
この国が落ち着けば、
ディランが私と一緒にいる意味は無くなるもの」

このままディランと離れてしまうのであれば
それも仕方がないと理解はしている。

寂しいと思うけれど、
それは仕方がない。

ディランはこの世界の……いや、
この国の住人で、この国に根付いて
生きていくべき者だ。

この国どころか
この世界と女神ちゃんとの間で
ふらふらしている私と、
ずっと一緒にいることなどできないだろう。

それにディランは王子様だったしね。

私がそんなことを言うと、
マイクは私を抱きしめ
「私は何があってもユウさまから
離れません」と言った。

そのぬくもりに、安心する。

マイクに身を預け、私は気が付いた。
肌のぬくもりに。
マイクの言葉に私は安心しているんだ。

それは、愛されていると実感できるから。

私を愛していると言いながら
離れて行くかもしれないディランに脅え、
何があってもそばにいてくれるという
マイクの存在に甘え、安心している。

どれほど。
本当に、どれほど私は
【愛される】を求め続けるのか。

自分でも嫌になる。

「ユウさま?」

思わず唇を噛んでしまい、
マイクの指が、その噛み傷に触れる。

「どうされたのですか?
何が……ご不安なのでしょう。
私ではお役に立てないのでしょうか」

私は首を振る。

「マイクは……そばにいてくれて、嬉しい。
マイクから愛されるのは嬉しいし、
満たされるし、幸せな気分になる。

でも、それじゃダメなんだってわかってるの。

一人でちゃんと、
マイクに寄りかからずに、
愛されない不安を克服しないとダメだって、
わかってる。

愛されてるのに。
ちゃんと愛されてるってわかってるのに、
いつもその愛情が終わる不安に
私は脅えてるの。

大丈夫って理解してるのに、
甘えて、ぬくもりを感じたくて。

マイクの気持ちを利用して、
我がままばかり言って……っ」

苦しくて涙が出る。

そんな私の泣き言ばかり言う口を、
マイクの大きな手のひらが覆った。

優しく、これ以上私が何も言わないように。

「愛しております。ユウさま」

耳元で、甘く囁かれる。

「ユウさまが私の想いを感じ、
欲してくださるのは
私にとって史上の喜び。

利用するなど言わずとも、
いくらでも私をお傍におき、
使ってくださればいいのです。

私はただ、ユウさまを愛することを
お赦しいただければ、それで良いのですから」

なんで、と思う。
マイクはこうして私を甘やかす。

どんなにわがままを言ってもきっと
マイクは笑ってその望みをかなえてくれるのだろう。

私はじゃあ、とマイクの膝の上で
向かい合わせになるように座り直した。

「ぎゅっ、ってして」

そういってマイクにしがみつくと、
マイクは私の背に手を回してくれる。

胸が重なり合い、マイクの心臓の音がする。

すり、っとマイクの頬にすり寄ると
少しだけマイクの身体が震えた。

「もっとたくさん、マイクに触れたい。
いい?」

「……は、い。
光栄、です」

たどたどしく言うマイクに
少しだけ笑った。
うん、笑う余裕が生まれた。

マイクは私の肌にいつも触れているくせに、
触れらるのは慣れてないみたいだ。

だから頬をすりすりしたり、
膝の上に乗ったまま、マイクの手を握ったり。

私は文字通り、マイクとベッタリと
肌を合わせた。

途中、胸の突起がマイクの胸の突起に触れて
どき、っとしたけれど。

キモチイイよりも私は
マイクのぬくもりを得ることを優先した。

だから私の双丘に挟まって
固く自己主張しているマイクの欲棒にも
気が付かなかったし、
マイクは固まったみたいに動かなかったから
私はマイクがまさか欲情しているなど
思いもよらなかったのだ。




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このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。

【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。

ご興味があれば、併せてご覧ください。
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