【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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隣国へ

153:聖女の試練だった

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 ことの発端は、この村の村長が
女神の泉の水を売ろうと考えたところから
始まったと思われる。

泉の水はもともと、誰もが飲んだり
湯に浸かったりできるものだった。

ただ怪我が治る。
病気が治るという話が広まり、
長期間、湯治が必要な人たちが集まり
自然と村ができた。

そしてその中の一番年長の人間が
村の村長になった。

つまりこの村は見知らぬ人間たちが集まった
他人が集う集落だったのだ。

だからこそ、裏切りも起こった。

村長が泉を独占し、
それを金に換えて独り占めした。

それに怒った村人たちが
村長を追い詰めた。

あの岩があった場所は、
女神の泉があった場所らしい。

村人たちは村長をあの場で追い詰め
殺してしまったのだ。

その血が泉に流れ、
泉の水は穢れてしまった。

それだけならまだ良かったのだが
村長は死んでもなお、
魂は天に還ることなく、
闇の魔素として空気中に四散することもなく。

あの岩の中にただ恨みが残っただけの
<闇>の状態で閉じ込められていたというのだ。

最初はその<闇>が魔獣を生み出すことも
あったけれど、長い時間をかけて
その<闇>は眠りについていた。

おそらく、女神の泉の水の効果が
まだ少しは残っていたのだろう。

けれど、その効果が最近、薄れてきた。

女神の命でこの国に残る『試練』を
消すために<闇>の匂いを
探っていたホワイトは、
あの岩に気が付き、頑張った……らしい。

だが、力叶わず、闇に取り込まれたそうだ。

ただ言わせてほしい。
このだが、
本人の話が本当であれば、何をしたかというと
ただ<闇>を食べていたという。

食べ続けていたらいつの間にか
体が黒くなり、動けなくなり、苦しくなっていった、と。

そして助けを求めていたら、
<光>の魔素を生み出す花たちが
ホワイトの存在に気が付き、
手を貸してくれたらしい。

それがあの蓮の花から出ていた
蛍みたいな光のことだと思う。

あの光のおかげで、
ホワイトは<闇>にとらわれることなく
頑張れた、と本人は言っていたけど
ぜんぜん、だったからね?

自我を無くして私たちに
飛び掛かって来たもんね?

寸でで止まったけど。

とにかくそんなわけで、
女神の泉を復活させることが
できるかどうかはわからないけど、
鍵はあの岩に閉じ込めた村長の魂だ。

闇に染まってしまっているので
助けられるとは思えない。

天に還してあげることができればいいのだけど
無理だった場合は……
浄化してしまうか、ただの<魔素>になり
大気に消えるか、だ。

そう考えると気が重くなるけど、
仕方がない……んだよね。

すでに何年も前に亡くなってる人なわけだし
私が救える人ではないのだ。

割り切るしかないのは理解してるから、
気は重くなるけど、泣き言は、言わない。

「ユウさま、お加減が悪いのでは?」

私が考え込んでいたからか、
マイクが心配そうに私の顔を覗き込む。

「ううん。大丈夫。
沢山寝たし、元気だよ」

笑って見せたけど、
マイクは心配そうな顔をしただけだ。

「とりあえず、もう少し寝るか?」

ディランもそう言ってくれたけど
さっきまで寝てたので、
眠たくはない。

私は首を振って…あ、と声を出した。

「そうだった、忘れてた」

「何をだ?」

「露天風呂、温泉、月見酒」

私が言うと、マイクとディランが首を傾げる。

「ほら、外にできてたお風呂。
あれに入りたい」

「ユウさま! あの湯殿は外にあるのですよ?」

「うん。だって露天風呂だし」

何を言っているんだ?マイク。

「そうだな。じゃあ、一緒に入るか」

ディランが椅子から立ち上がり
私の身体を抱き上げる。

「おい、貴様、ユウさまの肌を
外で晒す気か!?」

マイクが怒りのあまり
口調が荒くなっている。

だがディランは気にする素振りもない。

「誰もいない村だろ?
それにユウはがいいんだもんな?」

何かしら含みを持った言い方をされたけど
私は頷いた。

「外でお風呂なんて、絶対に気持ちいいよ?
マイクも行こう!」

そういうとマイクは何故か頬を赤くして
「ユウさまからお誘いを頂けるのなら…」
なんて呟く。

お風呂に入るのに。
しかも何度も一緒に入っているのに
何を今さらそんなことを言うのかと思ったけど
わざわざその指摘はしなかった。

私の頭はすでに初めての露天風呂で
いっぱいだったからだ。

「マイク、外ではね。
水分補給も大切だから、
水筒は必ず持っていこう」

「はい」

「あとタオルもね」

「はい、ご用意致します」

「それと……あ、靴はどうしようか。
裸足でも…」

「なりません!
ユウさまの可愛らしいお御足に
傷でもついてしまったらどうされるのです」

「俺が抱っこして連れてってやるよ」

マイクとのやりとりに
ディランが割って入ってくる。

こういうやりとりもすっかり慣れた。

「ね、準備して早く行こう」

私が言うと、2人はすぐに動いてくれる。

仲間、だ。

金聖騎士団の皆は、仲間だったけど
なんとなく…家族でもあった。

けどディランとマイクは違う。

家族じゃなくて、友達……よりも
もう少し濃い関係のような。

信頼していて、一緒に過ごすと楽しくて。
命だって預けてしまえるぐらいの存在。

こんな出会いがあるなんて、
凄いと思う。

だって元の世界での私は
親しい友人と呼べる人は一人もいなかった。

私の世界には、勇くん一人しかいなかったのだ。

そんな私がこの世界では
家族と仲間ができた。

女神ちゃんには色々迷惑を被ってるけど
これだけは感謝だ。

何気に思うけど、この件も
『幼女が聖女』の試練に一つだろうし。

だって今回の件で少なくとも私は
『力』の使い方を一つ、学んだ。

成長したと思う。

『試練』は聖女の成長を促すためのものだから
間違ってはいない、だろう、うん。

女神ちゃんにかけられる迷惑と、
私がこの世界に来てよかったと思う気持ちと。

天秤にかけたらどっちが傾くんだろう。

私はそんなことを考えながら
ディランに抱っこされて露天風呂へと向った。

露天風呂、愉しみだ!







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このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。

【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。

ご興味があれば、併せてご覧ください。
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