【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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新しい世界

92:お小遣いが欲しい

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 お昼を食べた後、
私とマイクは街を見て回った。

私がお店を見たいと言っていたので
マイクが連れて歩いてくれたのだ。

一人では入れなかった店も、
マイクと一緒だと大丈夫だ。

窓の外から、いろんな店を見る。

服屋だったり、パン屋だったり。

店に入りますか?って聞かれたけど
私は首を横に振った。

お金も持ってないし、
何かを買っても邪魔になるだけだ。

当分私は旅暮らしだし。

でも、露店が並ぶ広場に着て、
私はものすごーく楽しい気分になった。

屋台とか夜店とか、そういうのに
私はずっと憧れがあった。

野外のフリーマーケットというのにも
足を運んだことがある。

ただ、気恥ずかしくて、
やっぱり何一つ買うことはできなかったけれど。

だから私は、マイクにお願いして
露店を一つ一つ、見て回ることにした。

ついでに、マイクにお金のことを聞く。
いつも誰かが支払ってくれるので
きちんとお金を見たこともなかったのだ。

私がそういうと、
マイクはお金を見せてくれたけど、
ユウさまが支払う必要はありません、と
きっぱりと言われた。

それにお金を持ってないから
いつか稼がないと、というと、
ユウさまは世界を救われたのですから
お金を稼がなくても、王家が報酬を
支払っている筈です。

なんて言う。

そんな話、聞いてないけど?

というか、お金とかそういう
難しい話は、金聖騎士団の皆に
丸なげしてたかたなー。

きちんと聞いていれば
お小遣いぐらいは貰えてたのかも。

残念に思いながら
歩いていると、手芸店のような露店を見つけた。

きっと自分でアクセサリーとかを
作る素材を売っているんだと思う。

綺麗な石や、リボン、チェーンなんかが売っている。
ペンダントトップも何種類も並んでいた。

こういうのって、買わなくても
見ているだけで楽しくなるんだよね。

「おう、ぼっちゃん。
見てってくれよ」

店員の男性が声を掛けて来た。
いつもならそれだけで、
購入しなければならないと思い込んでしまい
苦しくなってしまうのだけど、
今日はマイクがいるから大丈夫だ。

私はマイクに隠れながら
ちょっとだけ店員さんに会釈をした。

店員さんは、私に購入する意思が
あまりないことがわかったのか
それ以上は何も言わず離れて行く。

良かった。

でも一応、心配だから
私は片手でマイクの裾を握り、
どこにもいかないようにする。

本当は手を繋いでも良かったんだけど
マイクが恥ずかしそうな、何とも言えない顔をしたので
私の方が照れてしまって、
袖をつかむことにしたのだ。

私は綺麗な石が沢山入っている箱をじっくり見た。

不揃いだし、全部ガラスだと思うけど、
こういう中に掘り出し物ってあるんだよね。

……たぶん、本の受け入りだけど。

何か綺麗なものがあったら
クマちゃんの飾りにしてもいいな。

そんなことを思ってみていたら、
先ほどの店主さんが声を掛けて来た。

「鉱石が好きなら、奥の品も見てくれよ。
掘り出し物があるんだぜ」

と店主は奥を指さす。

視線を向けると、いくつもの紐が
飾ってある棚があった。

そこに行くと、リボンや飾りひも
革紐かわひもなんかが飾ってある。

その中に、一際目を惹く紐…というか
リボン? みたいなのがあった。

リボンというには、厚みがある。
厚め布、という感じだ。

けれど、革紐のようなものではなく
それは綺麗な装飾がしてあった。

元の世界であれば、
女性用のファッションベルトにでもなりそうだものだった。

しかも多分だけど、
綺麗な鉱石の欠片?クズ鉱石?みたいなものが
生地に織り込んでいるように見える。

外から入ってくる光の反射で
角度を変えてみるとキラキラ光っているのだ。

「綺麗だろ?
なんか、どこかの貴族様が
自領で鉱山を見つけたらしいが、
あんまり良い石が取れないらしくてな。

そこで、クズ石を布を織るときに
混ぜ込む魔術を生み出したらしい」

え、すごい。
純粋に、ありえないレベルで凄い。

「ただ、出来上がった布は物凄く
重たくなるらしく、服は無理だということで
こうやってリボンになった」

リボン…というには、
無理がありそうだけど。

分厚いから、これでリボン結びは難しそう。

「んで。
一応、売り物になるか見極めたいってことで
俺の店に置いてやってんだ」

「……それで、売れましたか?」

と聞いたら、店主は笑った。

うん、そうだよね。
リボンでは使えないと思う。

それにいくらクズ鉱石でも
こんな分厚い布で服を作ったら
重たくて動けないと思うし。

もうちょっと薄い生地でできたら
良いんだろうけど。

しかし、商品開発のために
魔術を生み出すとかって、
めちゃくちゃ凄い。

どんな人が生み出したのか
一度、会ってみたい。

私はマイクを見た。

ここまで話を聞かせて貰ったのだから
買わないとダメかなーって気分になってきて。

でも、私はお金を持ってないんだよね。

「ユウさまは、これをご所望ですか?」

欲しいの?って。
こんなので何するの? って顔で
純粋に聞いてくるマイクに
私は顔を引きつらせて頷いた。

「そうですか。
では、店主、いただきましょう」

「ほんとか!」

店主さんは物凄く嬉しそうだ。

「で、どれにする?」

店主さんに言われて
棚に並んでいる謎のリボンを見た。

どれも綺麗だとは思う。

「触ってみてもいいですか?」

売り物を勝手に触ってはいけないと思って聞くと、
店主さんは驚いたような顔をした。

なんか、驚くこと聞いた?
って首を傾げると、

「いや、この店でそんな上品なことを
聞かれるのは初めてで」

ははって、店主さんは笑う。

そうなのか。
みんな自由に触ったりしてるんだ。

私はじゃぁ、って謎のリボンを手に取り
1つ、1つ、外から入ってくる光にかざしてみる。

やっぱりどれも色が違って見える。

中に入っている鉱物の色のせいだと
思うけれど、どれも同じ布のはずなのに、
色や輝き、そして印象がどれも違う。

悩むー。

「ユウさま。
全部買い取りましょうか」


「「え?」」

私が悩み過ぎていたせいか、
マイクが声を掛けてくれる。

思ってもみない提案に、
私と店主の声が重なった。

「この場に長居するよりは
お手元でじっくり、どれを使うかを
悩まれるのも良いでしょう」

マイクは言うなり
謎のリボンをすべて購入することを決めてしまった。

店主は飛びあがらんばかりに喜び
棚に並んでいるものを袋に入れていく。

「じゃあ、値段は……」

店主は、おまけだ、と言って、
提示している値段よりかなり低い金額を
提示してくれたらしい。

マイクはそれを即決して買うと、
余ったお金で、近くに会った小さな
袋を買った。

「ありがとな! また来てくれよーっ」

露店を出たら、
何故かお店の周りに人が集まっている。

「何かあった?」

「いえ…その、ユウさまが
あまりにもお可愛らしいので」

って、マイク。
その意味不明な説明で
誤魔化すのはもうやめたら?

まぁ、言わないけどね。

沢山買ってくれたスポンサーだもん。

マイクは次に、飲み物の露店に
私を連れて行ってくれた。

甘い果汁のジュースを買い、
近くの飲食スペースに腰を下ろす。

喉が渇いていたから、
嬉しかった。

「ありがとう」とカップを受け取り
果汁を飲んでいると、
マイクはさっき買った小さな袋を
テーブルに置いた。

「ユウさま、これを」

マイクは小さな袋に
コインとお札を1枚、
入れてくれた。

「これは…?」

財布?

「差し出がましいと思いましたが
ユウさまも、ご自身で買い物をされては
いかがかと思いまして」

私がお小遣い欲しい、って
思ってたの、バレたのかな。

でも、嬉しい。

「ありがとう!」

私は財布ごとマイクの手を握った。

「あ、あの、ユウさま?」

「物凄く、嬉しい」

ぶんぶんとマイクの手を握る。

「なんだ、随分と仲良くなったじゃねーか」

不意に声がして、振り返るとディランがいた。

「ディラン」

「仲直りしたか?」
と頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。

「喧嘩してないし」
と私は反論する。

「で?
何を喜んでるんだ?」

ディランは私の横に座り、
私とマイクの手を見る。

「へへん」

私はマイクから手を離して
小さな袋を見せた。

「マイクにもらったの。
私のお財布!」

どうだ!って見せつけたけど、
ディランは、それが? と言う顔だった。

そうだよね。
ディランは自分の財布を持ってるもんね。

しゅん、としたら、
ディランが慌てたような顔をした。

「い、いや、良かったな。
俺も金を入れてやろうか?」

「ほんと?」

まいどありー。
って袋の口を開けたら
ディランは、ほっとした顔で
小銭を入れてくれた。

「やったー。
お買い物してみたい」

「そんなに嬉しいものか?」

「なんて、可愛らしい」

と二人の声が聞こえる。

マイク。
とにかく、可愛い以外の言葉を
言うことから始めよう。

うん。





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このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。

【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。

ご興味があれば、併せてご覧ください。
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