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新しい出会い
36:やっぱり兄は最強だった
しおりを挟む私は『大聖樹の宮』から
聖獣のレオに拉致された後の
話をした。
バーナードには、
女神ちゃんの『祝福』のことは
すでに打ち明けている。
女神ちゃんの『祝福』の
内容を知っているのは、
この世界ではバーナードだけだ。
もちろん、
私が別の世界から来た
人間だってことも、
生まれてすぐに捨てられた私が
愛情に飢えていて。
だからこそ、
この世界で愛され、
私の心の【器】に愛を満たし、
その愛を使って聖樹を蘇らせる。
それが私がこの世界に来た
理由だということも
バーナードには伝えていた。
私は愛情に飢えすぎていて、
【器】の大きさは尋常ではなく、
多くの人に愛されなければ、
満タンにはならない。
逆に言えば、
大きな器があるからこそ、
私は世界を救う程の
愛を溜めることができるということだ。
私は最初、
沢山の人に愛されることが嬉しかった。
けれども、
金聖騎士団のみんなに抱かれ、
愛を注がれ、気が付いたのだ。
私はただ、この世界の人たちに
抱かれて【器】に愛を
溜めるだけの存在だと。
肌を重ね、愛を溜め、
その愛を使って世界を救う。
けれども、その愛は
無限ではない。
魔獣を倒したら減るし、
聖樹を蘇らせたら無くなる。
私は常に、誰かに抱かれ、
その行為で溜まった愛で
世界を救い、また誰かに抱かれる。
それは理解していたはずなのに、
実際、それを体現していくと
私は急に怖くなった。
自分が、
この世界を救うために
誰かに抱かれるだけの
機械のように思えたのだ。
私の感情も、
私を抱く相手の感情すらも
『女神ちゃんの祝福』は奪う。
キモチイイに流され、
発情し、快感を追う。
そうなってしまうと
互いの意志など尊重できない。
無理だと思った。
どんなに相手が美形だろうが
ただ男性に抱かれるだけの
存在など…
むしろ、そんなの
誰でも良かったのではないか。
私がこの世界に来た意味など
なかったのではないかと
打ちひしがれた。
それを救ってくれたのが
バーナードだ。
バーナードは私に
兄弟のような、家族愛を教えてくれた。
抱き合い、肌を重ねなくても
【器】に愛が溜まることを
教えてくれた。
世界の破滅が近くて、
私の【器】を無理やりにでも
満たして『大聖樹』のところに
行かなければならなかったのに。
バーナードは私が
自分で「行く」というまで
待ってくれた。
優しく私を見守り、
甘やかしてくれた。
女神ちゃんの『祝福』を
打ち明けた時。
この世界の救う方法を
打ち明けた時も、
バーナードは女神ちゃんに
対して怒ってくれた。
この世界を救うためとはいえ、
ただ抱かれるためだけに
他の世界から私を
連れてくるなど、ありえない、と。
そんなバーナードだから。
私は安心して甘えられる。
バーナードは
私を嫌いにはならない。
絶対に私を見捨てない。
それだけは理解できるから。
だから…
私はディランのことも話した。
ディランが私が目指している
新しくできた国から来たこと。
そしておそらく…
私を探すために
この国に来ていること。
私がこの国の『聖樹』を
すべて見終わったら
一緒にディランの国に行くつもりだということ。
あと、ついでに…
と言ったら申し訳ないけど、
マイクのことも話した。
最初の村でお世話になったことも
本当は大神殿の神官だったことも。
最初はディランと二人で
旅をしていたけれど、
マイクが追いかけて来て
一緒に旅をするようになったこと。
そして…
マイクのおかげで
快適に『聖樹』巡りができそうなこと。
沢山しゃべって、
喉が渇いたのでお茶を飲んだ。
バーナードも、
金聖騎士団のみんなの話を
聞かせてくれた。
やっぱり…というか、
皆は私を探して、隣国について
調査してくれているらしい。
『大聖樹の宮』は
神殿とも王宮とも距離を置いた
不可侵区域になり、
金聖騎士団の管轄になったこと。
だからこそ、
いつでも戻ってきていいし、
金聖騎士団は私の直轄になるから
いつでも頼って欲しい、と言う。
こんなに甘やかされて
いいのだろうか。
「ほら、泣くな」
バーナードが私の涙を
指で拭ってくれた。
「バーナードの結婚式は?」
「一応準備はしてるがな。
もう少し落ち着いてからだな」
「そっか。
この街もまだ<闇の魔素>の影響が
残ってるもんね」
私が頑張ったら、
バーナードはもっと早く
結婚式を挙げることができるのだろうか。
「あぁ、俺もそれでここに来たんだ」
バーナードは私の髪を撫でながら言う。
「ここの井戸が<闇の魔素>の
影響で使えなくなったと聞いてな。
<闇の魔素>が係わるなら
聖騎士の仕事だしな」
バーナードは数日前から
この街に調査に来ていたらしい。
「そこで、この近くの
『聖樹』が蘇ったと言う噂話を聞いてな。
もしかして、と思って
『聖樹』がある街から
やって来た者がいたら
会わせて欲しいと
領主に掛け合ったんだ」
そうか。
ここで会えたのは偶然だったんだ。
嬉しい。
しかも、こんなタイミングで
バーナードに会えるなんて。
「それで?」
バーナードは私の顔を覗き込んだ。
「俺にもっと話すことは無いか?」
もう話すことなどない、と
私は言えなかった。
話すことは無いけど、
聞いて欲しいことは、ある。
「俺とユウは
ヴァレリアン団長にすら
言えない秘密を共有する仲だろ?」
なんでも言えばいい、と
優しい声に、私はまた涙ぐむ。
そして今までより
もっと小さな声で…
昨夜のことを話した。
もっとも、身体を
ペロペロされたとは言えないから
夜中にマイクにキスされたような
気がしたことと、
マイクとは『祝福』が
発動していないので、
純粋にマイクは私のことを
好きなのかもしれない、
ということ。
それに気が付いたディランが
怒ったこと。
私を心配して
怒ってくれたことは理解してるけれど、
身体に染み付いた他人への
恐怖が沸き起こり、
ディランから逃げてしまったこと。
「それで、なんとなく
不穏な空気だったんだな」
バーナードは納得したように言った。
「それで?」
まだあるだろう?
と言われ、私は視線を泳がせる。
いいだろうか。
言っても。
ディランに抱かれたことを。
あの時感じたことをーーー。
0
このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。
【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!
このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。
ご興味があれば、併せてご覧ください。
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