【完結・R18】「いらない子」が『エロの金字塔』世界で溺愛され世界を救う、そんな話

たたら

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新しい出会い

35:再会

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「ユウさま?」

突然泣き出した私に、
マイクが焦ったような声を出した。

領主さんも目を見開き
私を見下ろしているし、
ディランも驚いた様子で
私を抱き上げようと腕を伸ばす。

けれども、私は
ディランの腕を拒否した。

だって。

私の抱っこは…

「抱っこ!」

って、私は叫んでいた。


両手を上げて、
くまちゃんを振り回して。

そしたら大きな体が
私の前で身をかがめて、
優しく…優しく抱き上げてくれた。

うーって、涙が出る。

抱き上げられたら、
マイクの抱っこより、
ディランの抱っこよりも
目線が高くなる。

首にしがみつくと、
短く切りそろえられた赤色い髪が見える。

胸に顔を押し付けると
固い筋肉が感じられて…

私は抱きついたまま、
肩に額をぐりぐり押し付けた。

すると大きな手が
私の髪を優しく撫でる。

「……バーナード」

呟いて顔を上げると、
優しい茶色い目が細められた。

金聖騎士団の最年長。

どんなに強大な魔獣の前でも
仲間を守るために大きな盾で
最前線に立つ、
誇り高い、盾役の聖騎士。

そして…
私のくまちゃんを作った人の
婚約者で、私が誰よりも信頼し、
安心できる存在。

私を…恋愛対象ではなく、
肌を重ねる相手でもなく。

ただ、家族として
愛してくれる…

私のことは好きだけど
愛するのは婚約者だけだと
そう公言する稀な存在。

私を恋愛対象として見ないという
稀有な存在だからこそ、
私は駆け引きなくバーナードに
甘えることができるし、
すべてをさらけだせた。

この世界を守れないと、
泣きついたことだってある。


だから。
マイクともディランとも
ギクシャクしている今、
バーナードとの再会は、
私の心を満たした。

何もかもぶちまけたくて。

でも、声が上手く出なくて
私はバーナードにしがみつくだけだ。


バーナードは私を抱っこしたまま
マイクとディランに
挨拶をしていた。

領主さんと一緒に
ソファーに移動いて、
メイドさんがお茶を持って来てくれたけど。

私はバーナードの
膝の上にいる。

クマちゃんと一緒に
ぎゅーっとしがみついて、
大人たちの会話を聞く。

たまにバーナードのお腹や
胸に額を押し付けてぐりぐりして、
背中をパンパン叩いて。

動物がマーキングするように
バーナードの首筋に
頬をすりすりして、
またしがみつく。

ずっとそんなルーティンを
していたからか、
いつのまにか大人たちの
会話は途切れ、何やら
強烈な視線を感じた。


私が顔を上げると、
バーナードが苦笑している。

振り返ると、
領主さんも、マイクも
ディランも。

黙って私を見つめていた。

しまった。
あやしすぎる行動だっただろうか。

でも、
バーナードに会えたのが嬉しくて
自制できなかったのだ。

私はバーナードに
甘えるのをやめて…

てへ、と笑ってごまかした。

マイクが目を輝かせて、
小さく可愛いらしい、と言うのが聞こえた。

ディランは何故か
不機嫌そうな顔をしていて。


領主さんは
お二人は仲良しなのですね、と
フォローしているような
していないようなことを言う。

私は曖昧に笑って、
お茶を飲むことにした。

テーブルにある焼き菓子は
おいしそうだ。

私はバーナードの手を
パンパン叩いて、
お菓子を見る。

バーナードは
また苦笑を深くして、
お茶のカップを取って
私に渡した。

「お菓子…」

「先にお茶を飲んでからだ」

唇を尖らせると、
バーナードがまずは飲め、と
短く言う。

移動してきたばかりだから
喉が渇いている筈だと言う
バーナードに、私は
しぶしぶ従った。

私のことを心配して
注意してくれるときの
バーナードは、絶対に
私を甘やかさないし、
折れない。

聖騎士団の団長だった
王弟の息子でさえ、

目をうるうるさせて
頑張って甘えたら、
困った顔をしながらも
許してくれるのに。

だから私は
素直にお茶を飲むことにする。

「この街は酒ばかりで
大変だっただろう。

まさかユウ、
お酒なんか飲んでないよな?」

確認するように言われ、
私は黙ってお茶を飲んだ。

一度…お酒を飲んで
バーナードの前で大醜態を
晒したことがある。

まさかまた、
やっちまいました。
とは、言えない。

バーナードは
厳しい目で私を見る。

だから私はその視線から
逃れたくて、バーナードに
カップを返すと、お菓子、と
呟いた。

バーナードの膝の上からでは
テーブルが遠くてお菓子を
取ることができないのだ。

私はバーナードが
険しい瞳のまま取ってくれた
フルーツが入ったパウンドケーキっぽい
お菓子をリスみたいに、ちまちま食べた。

美味しいから
沢山食べたかったけど、
バーナードに取って
もらわないと食べれないし。

バーナードからお酒のことで
怒られそうだから、
自己主張はやめておこう。

大きな口で
ぱくぱく食べたら、
あっという間にお菓子が無くなって
しまうから、私は少しづつ、
少しづつ、口に入れる。

バーナードたちは
大人の会話をしていて
難しそうな話題だったし、

私はバーナードのことが
気になって、会話の内容など
聞こえていたけど
全く理解していなかった。

ちまちま。
ちまちま。

どんなに少しづつでも
食べていたら、お菓子はなくなる。

最後の一口を食べてしまい、
私はそっとバーナードを盗み見た。

まだ怒ってるかな?

もう一つ、食べたいけど
取ってくれるかな?

なんだか難しい話をしてるから
会話を遮るのは良くないよね。

ちらちらバーナードを見て、
テーブルの上のお菓子を見る。

「ぷっ」
と、頭の上でバーナードが
小さく吹き出した。

バーナードの顔を見ると、
優しく、くしゃり、とと
頭を撫でられて、テーブルの上の
お菓子を取ってくれた。

わーい。

と思っていたら、
領主さんに声を掛けられた。

「当家の菓子は
お気に召していただけましたかな?」

子どもに言うように、
優しい口調で言われ、私は素直に
頷いた。

「とても美味しいです。
ありがとうございます」

これは町の屋台で食べる
甘いお菓子ではなく、
絶対に高級品だと思う。

お金持ちが食べるお菓子だ。

だって、美味しさが
段違いだもの。

「ユウ、少し話がしたい。
いいか?」

また私がお菓子をかじっていると
バーナードが不意に言った。

「うん」

頷くと、
領主さんも、何故か
マイクもディランまで席を立つ。

「ん?」

「少しだけ…
席を外してもらった。

二人っきりで話せた方が良いだろう?」

「うん、そうだね」

私は膝の上に乗せていた
クマちゃんを胸に引き寄せる。

「それ、大切にしてくれてるんだな」

「うん。
いつも一緒に寝てるの。
みんなと一緒にいるみたいだから」

「そうか」

バーナードは嬉しそうに笑う。

「……心配してるぞ」

誰が、とは言わない。

金聖騎士団のみんなのことだ。

突然、出て行ってしまったから。

しかも、聖獣に拉致されると言う
何の準備もない状態で
出て行ってしまったから、
きっと……

とても、心配かけたと思う。

言い訳ぐらいは
させて欲しいけれど。

「ユウ、話してくれるか?」

私はバーナードの胸にしがみつく。

いつか、もしかしたら
金聖騎士団の誰かに
見つかるかもしれないと思っていた。

でも。
最初に見つけてくれたのが
バーナードで良かったと思う。

私がこの世界で
最大限に信頼をおいている
バーナードだからこそ。

私は胸の内を
吐き出すことができたのだ。




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このお話の前作です。
良ければ、ご覧ください。

【R18】女なのでBとLのみの世界は勘弁してください!「いらない子」が溺愛に堕ちる!

このお話の前作です。第一章↑には、番外編として悠子と入れ替わった男の子、勇くんと
年上残念イケメンとの男×女R18 サイドストーリーも掲載しています。

ご興味があれば、併せてご覧ください。
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