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終章
おまけ【バカ可愛い妹SIDE】
しおりを挟む「ふふふーん」と私は
自分で作ったイクス様の設定集を
パタン、と閉じた。
そう、私はとうとう、イクス様の
コミカライズ担当だけでなく、
ゲームキャラクターのメインデザインを
担当させてもらえることになったのだ。
これも私のイクス様愛の成せる業だと思う。
そしてそして。
私はゲームが原作だったイクス様の
コミカライズを経て、今度は独自の
イクス様たちの物語を漫画で
描けることになったのだ。
内容は、もちろん、イクス様と
ヴィン様の愛の物語だ。
……本当は、イクス様総受が良かったけれど、
私の大事なお兄ちゃんが嫌がると
思ったから、泣く泣く諦めたの。
私の大事なお兄ちゃんは、
今、別の世界でイクス様に転生している。
何を言ってんだ、って普通なら
思われるかもしれないけれど本当だ。
だって私はこの部屋で、
イクス様と私の子どもと一緒に
何日も過ごしたんだもの。
写真だって、スマホの動画だって残ってる。
もちろん、誰にも見せることはできないけれど。
お兄ちゃんの話では、
私のイクス様愛が、お兄ちゃんの
魔力に変換されていたり、
とにかく、私がイクス様を推せば
推すほどお兄ちゃんはチート級になるらしい。
そしてそして。
お兄ちゃんは、なんと!
ヴィン様と両想いなのだ。
イクス様最推しの妹としては感慨深い。
そんなわけで私は日々、
イクス様とヴィン様のラブラブ
いちゃいちゃ物語を思い描いては
ネットで発表したり、
自費出版で本を出したりと
布教活動に励んでいた。
もちろん、本業だって
ヴィン様×イクス様推しだ。
今回はそんな私が
次回作のために考えに考えた
ヴィン様攻めの為のイクス様受け設定を
一つの本にまとめることができた。
もともとは、マンガのプロットや
生まれた設定や下書きなどの
思い付きを書いていただけのノートだったが、
それが編集者の目に留まり、
新たな漫画の設定集として発売が決まったのだ。
あれよあれよ、と私には仕事が舞い込んでいる。
もう、イクス様効果としか思えない。
私は感謝感激で、イクス様の設定を
いちゃいちゃラブラブしやすいように
ものすごーく頑張って作った。
だって、だって。
イクス様はみんなに愛されて欲しいけれど
お兄ちゃんには、たった一人の
愛する人に愛されて欲しいと思うから。
お兄ちゃんは恋愛音痴だったから、
ヴィン様といい雰囲気になっても
何もできないと思う。
だから、甘い空気になったら
ヴィン様に抱かれたくなる身体とか、
本来の設定では『珠』がないと
妊娠できない世界のようだけれど、
イクス様だけは、
赤ちゃんが欲しいって
思ったら自然妊娠できる
身体になるとか。
そりゃまぁ、乙女の夢が
詰まってることは認めるけれど、
でも、全部全部、お兄ちゃんが
幸せになるために必要な
設定だと思う。
私が新たに作った設定を
お兄ちゃんがいつ気が付くのかは
わからないけれど……
でもお兄ちゃんが、
ううん、イクス様が、
幸せになるための設定だもん。
絶対に喜んでくれるはず。
それに、それに。
美しく儚いイクス様と
凛々しくたくましいヴィン様の子ども……
「あぁ、尊い……」
あ、しまった。
涎が出た。
私はきっともう、お兄ちゃんに
会うことも、イクス様のご尊顔を
実際に拝むことできないだろうけど。
「でも、妄想するのはいいよね?」
子どもは男の子が先がいいかな、
でも女の子も絶対にいいよね。
ヴィン様は絶対に女の子を
かわいがると思う。
私はスケッチブックに
二人の子どもが出来たら……と
妄想しながら赤ちゃんの絵を描く。
「そうだ。
幸せを感じたら、魔力が漏れて
それが周囲を変化させるってどうだろう」
……良くない?
そしたらイクス様がヴィン様に
愛されまくってることを
周囲だって気が付くし
イクス様がヴィン様を愛してるって
ことも、周知される。
物凄く良いアイデアのように思えた。
「そ、それで、周囲からは
バカップルとか呼ばれて……」
イクス様のキャラでは無いけど
お兄ちゃんなら絶対に喜ぶと思う。
ずっとちゃんと愛情を受取らずに
私を育ててくれたお兄ちゃんなら。
「あと、あと、どうしようかな」
イクス様を幸せにしたら
お兄ちゃんも幸せになる。
私っては、前世でどんな偉業を
達成したんだろう。
幸せ過ぎる~~~~。
ってもだえてたら、
「ただいまー」ってダンナの声がした。
しまった。
子どもが寝てたから油断してた。
慌ててリビングの椅子から立ち上がると
ダンナが笑ってそばに来る。
そして「またイクス様?」と言う。
「うん。尊いもん」
そう言うと、旦那はそっと私にキスをする。
「俺は?」
「尊くはないけど、大好き」
「だと思った」
ダンナは笑いながら手を洗いに
洗面所に消えた。
「お兄ちゃん」
私はその背を見送り、
設定集に手を当てた。
そして目を閉じ、
とどけ!って祈る。
「お兄ちゃん、私はね……
最高に幸せだよ!」
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