200 / 214
終章
200:初夜の前哨戦・2【ヴィンセントSIDE】
しおりを挟む恥ずかしさのせいか
シーツにもぐってしまったイクスは
あまりにも可愛すぎる。
あの小さな手が俺の手に重なり、
欲棒に触れた時は、
正直、感動のあまり
すぐに達してしまいそうだった。
それでも拙いイクスの手を
もっと感じたくて
射精感を我慢していたら
イクスに「好きに動いて」などと言われる。
ほんとにもう、どうしてやろうか。
俺は放った精液を
そばにあったタオルで拭い、
ベットから下りる。
部屋中に甘い香りが
漂っているような気がする。
イクスの精液の香りか、
魔力の残り香か。
あの時イクスから溢れ出たような
魔力は、俺の身体を包み込むような
感覚がした。
俺を愛していると言わんばかりの
温かい魔力が俺の体内に入り
俺の身体中を癒した……気がする。
というか、実際に俺の身体が
すこぶる元気になっている。
射精後のけだるさもなく、
それどころか、昨日までの
身体の疲れまで無くなっていた。
イクスは無意識に魔力を
放ってしまったようだが、
その魔力すら、俺のための
ものだと思うと、イクスのことが
愛しくて仕方がない。
俺はイクスをシーツの上から抱きしめた。
イクスの身体がピクリと動く。
嫌がっているのではない。
ただ恥ずかしいのだろう。
それがわかっているからこそ、
無理に顔を見ようとは思わなかった。
「少し待ってろ。
着替えと水を持ってこよう」
俺はシーツから出ている
イクスの髪を撫でようとして
精液にまみれた手を思い出して
手を止めた。
タオルで拭ったとはいえ、
この手でイクスの髪を撫でるのは良くない。
俺はイクスを視線に捉えながら
寝室を出る。
一旦、浴室で汗を流してから
俺は手早くシャツを着て、
濡れたタオルとイクスの着替えを用意した。
この部屋にもクローゼットが置いてあり、
簡単な服はその中に入れている。
それとこの部屋からテラスを通って
庭の温泉に行くためのバスローブも
数枚準備していた。
さすがに誰にも見られないように
しているからと言って
裸で庭に下りるわけにはいかない。
ただ、この部屋のテラスも
庭に続く階段も、すべて
認識疎外の魔道具で外からは
俺たちの姿が見えないようにしている。
イクスには伝えていないが、
この世界全体の魔力が
増えて来たのではないかと
先日、陛下から言われた。
イクスに確かめるように言われたが、
俺は何となく言いそびれている。
この世界に大きな影響を
イクスが与えていると認識することは
俺にとってあまり良いことではない。
誇るべきことだろうし、
素晴らしいことなのだが、
ただの騎士でイクスの
幼馴染でしかない俺が
イクスのそばにいて良いのだろうかと、
そんな想いに囚われそうになるからだ。
ただ、そんな一個人の問題で
いつまでもうやむやにしていい話では
無いことは一応は理解している。
陛下の話では、今まで魔力を
持っていた者の魔力量が
徐々に増えている傾向があるらしい。
今まで魔力量は成長と同時に増えるが
成人するとそれ以上の量は
増えないとされている。
だが、その説を覆すかのように
成人した者であっても
何故か魔力が増えているという
報告があちこちであがっているという。
近年は魔力を持った者が生まれる確率が
かなり減っていたのだが、
それも改善されるのではないかと、
陛下はそんなことを言っていた。
間違いなくイクスが関係している。
確かめなくても、陛下でなくても
その考えに至るだろう。
だが、陛下は気にしているのは
この現象がずっと続くのかどうかだ。
職人たちの魔力量が増えたことにより
今まで高価だった魔道具も
安定した供給ができるようになってきた。
魔道具だけでなく、
魔石も価格も下がり、
この館もイクスが快適に過ごせるように
魔道具や魔石をふんだんに使っているが、
そんなことができたのは
ある程度の魔力を持った者が
増えたからだ。
この傾向が続くのであれば
それにそった政策を展開せねば
ならないだろうし、
一時的なものであれば
今は見守るべきなのだろう。
だがイクスは意図的にそれらを
行っているとは思えない。
だからこそ、イクスに話をしても
首を傾げるだけで終わってしまう気がする。
「そうなんだ、よくわかんないけど
世界の魔力量が増えたのなら
良かったね」と笑う顔まで
俺は想像できた。
それが本当のことなのか
神との契約で言えないから
言わないのかは俺にはわからない。
イクスは純粋で嘘がつけないが、
神や世界、そして前世に関与する時だけは
物凄く頑固で行動的で、そして
秘密主義になる。
それらを無理に暴いてしまうと
イクスは俺のそばから離れて
しまいそうで、こんな時俺は
イクスの言う言葉を無条件で信じるしか
できないのだ。
イクスは可愛くて美しくて。
そして他人のために自らの
力を使うことを惜しまない、
心までもが美しく強い。
そんなイクスが、
俺を見つめ、欲してくれる。
そのことがどれだけ
俺の心を満たしているのか
イクスはきっとわからないだろう。
俺はイクスを手放せない。
たとえ陛下の命令を遂行できなくても
イクスを手放すぐらいなら
罰せられた方が良いとさえ思う。
自分でもこの愛は
重症だと思いながらも
俺はイクスのシャツを掴み、
保冷箱から果実水の入った
水筒を取り出した。
チェストのような形の
この保冷箱もまた、
魔石を使って作られた魔道具だ。
今までは大量の魔石を使って
冷やすことしかできなかったため
食材を冷やすための保冷庫のようなものは
小さな部屋を1つ潰して
入れておくぐらい大きな箱だった。
だが、魔石が大量に流通するようになり
研究が進められたことで、
保冷庫がどんどん小さく改良され、
保冷庫として市場に出回るようになった。
これは母が話を聞いて真っ先に
購入したものだが、
今は高位貴族で裕福な者以外は
手に入らない小型保冷箱も
いずれはもっと安価で
平民たちの間でも使用できるものに
なっていくのだろう。
そのきっかけを作ったのがイクスだ。
あんなに小さな体で、
可愛らしく愛らしい姿で、
イクスは世界を変えていく。
俺が寝室に戻ると
イクスはシーツをかぶって
ベットに座っていた。
俺を待っていたのだろう。
「イクス、水だ」
俺がイクスに水筒を差し出すと
イクスは、まだ頬を赤くしたまま
素直に果実水を受取る。
いつまでたっても
触れあうことに恥じらいを持つイクスが
俺は可愛くて仕方がない。
幼馴染の顔のときは
驚くほど大胆に甘えてくるくせに
閨の空気になると、
その態度が真逆になる。
それこそが、イクスが俺を
愛する者だと認識し、
意識してくれる証拠にも思えて
俺は嬉しいのだ。
俺はイクスのベットに腰を下ろす。
「着替えたら
少し散歩でもするか?」
頬に口付てそう言うと
イクスは頬を赤くしたまま
うん、と頷く。
それから水を飲むイクスを見つめ……
喉がゴクゴク動く姿にまた
俺は下半身に熱を帯びそうになったが。
今はまだダメだと、
俺は必死でそれをおさめた。
169
お気に入りに追加
1,147
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる