【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

170:幸せの根掘りん葉掘りん

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 昼休みのチャイムが鳴ったら
俺は速攻、ミゲルに中庭に連れていかれた。

ヴァルターは呆れていたが
ミゲルに食堂に行って
中庭で食べることが出来るものを
買って来いと命じられ
その圧に負けてお使いに行ってしまう。

いや、こんなに圧が凄いミゲルって
見たことある?

どうなってんの?

俺は久しぶりの学校の中庭で
ほぼ定位置になっている
ガゼボのベンチに座った。

ここは誰もこないだよな。
俺たちの定位置だから。

何故かヴァルターが汗だくになり
走ってパンを買って来てくれて
俺たちは3人、肩を寄せ合って
パンをかじった。

よくわからんが、
内緒話をするムードなのだ。

俺がパンを1つ食べ終えると、
まだヴァルターは3つめの
パンをかじっているのに
ミゲルが、それで、それで?
と俺に詰め寄ってくる。

「何があったの?」

と聞かれて、俺は正直に答えた。

王都や『力』の話はできなかったし、
俺の中ではそんなことより、
ヴィンセントと新婚旅行(?)を
したことの方が重大事件だったからだ。

「あのね、ヴィンス……
ヴィー兄様と、2週間、
ずっと一緒に過ごしたんだ」

「それって新婚期間ってこと!?」

「ミゲル、声がデカイ」

叫ぶように言うミゲルの口を
ヴァルターが押さえた。

「ご、ごめん、だってビックリして」

ミゲルはシュンとして。
でもすぐにまた真顔で俺を見る。

「ヴィンスって呼ぶようになったの?
それは名実ともに伴侶になったから?」

そういう意味だ?

俺は首を傾げたが、
その疑問を口にする前に
ミゲルが俺の方に、
ずいっと身をよせた。

「そういうこと?
ううん、そうじゃなくて。
どうだった?」

何が?

ミゲルが暴走していて
何を聞かれているのか
よくわからない。

「だからヴィンセントさんと
イチャイチャしたんでしょ?」

それはまぁ、しましたが……。

「そんな可愛く顔を赤くしてもダメ!
どんな感じだった?
キスはもうしたんだよね?」

「う、うん」

いつになくグイグイ来るミゲルに
俺はたじたじだ。

ミゲルが恋話が好きなのは
以前から知っていたが
これほどだったとは……

「それで、それで?
どこで二人で過ごしたの?
素敵な場所だった?」

それは……言えない。

「新婚期間は二人だけなんでしょ?
使用人はどうしたの?
隔離できる場所に避難したの?」

えっと……。

「初めてってどんな感じだった?
やっぱり痛い?」

それ、初夜ってこと?

「一緒にお風呂に入ったりした?
ドキドキした?」

ミゲルがどんどん俺を押してくる。
物理的に。

俺はもうガゼボのベンチから
ずり落ちそうだ。

しかも返事をする暇もない。

「ミゲル、落ち着けよ」
とヴァルターが言ってくれるが
ミゲルは聞く耳を持たなかった。

「初めての時って、
どっちから誘ったの?
それとも、雰囲気でそうなったの?」

もう、本気で落ちるって。

俺がベンチに座り直そうかと
思っていたら、ひょい、と
後ろから抱き上げられた。

「ヴィンス!」

なんとヴィンセントだ。

ミゲルとヴァルターも
驚いた様子でヴィンセントに
挨拶をする。

「魔法師団長が校長に用があってな。
その護衛について来た」

護衛?
いらなそうだけど……と思ったら
ヴィンセントが「会いたかったから」と
抱き上げた俺の耳元で言う。

恥ずかしいから勘弁してくれ。

キャーと小さな悲鳴が聞こえて
その方向を見ると何故か
ミゲルが顔を真っ赤にして
俺たちを見ている。

ミゲル、妙なスイッチが
入ったままだった。

ヴィンセントはそんなミゲルを見て
少し笑う。

「悪いが、イクスを借りてもいいか?」

「もちろんです!」

と返事をしたのもミゲルだ。

ミゲル、テンションが高い。
そして諦めたようなヴァルターの顔が辛い。

俺はどう返事をして良いのか迷ったが
ヴィンセントがミゲルの返事を聞き、
俺を抱き上げたまま軽く挨拶をして
中庭を後にする。

俺はヴィンセントの背中から
二人に手を振った。

二人は俺に手をあげて
応えてくれたので
よしとしておこう。

でも、どこに行くんだろうか。

俺は構内での抱っこ移動は
避けたいのだが。

そう思っていると、
ヴィンセントは校舎の前で
俺を下ろした。

「イクスも一緒に
校長室に来て欲しい」

本当は呼びに来た、と言われて
俺はちょっとだけがっかりする。

「だが会いたかったのは本当だ」

俺の顔を見てヴィンセントが
付け足すように言う。

俺、そんなに顔に出てた?

ヴィンセントは俺の頭を撫でて
「イクスはわかりやすい」と笑う。

「おいで」と言われて
俺は素直にヴィンセントと一緒に
校長室に向かった。

校長室ではすでに校長先生と
オーリーが話をしていた。

この顔ぶれでいったいなんなんだろう。

俺が校長先生に挨拶をすると
校長先生は俺をソファーに
座るように促した。

生徒に対する感じではなく、
パットレイ公爵家の子息としての
接し方だと感じる。

俺は3人掛けのソファーに
ヴィンセントとオーリーの
間に挟まるように座った。

何故俺が真ん中なんだ?

まぁ、守られている安心感はあるが。

そして。
そこで出たのは俺が考えたことも
内容な話だった。

俺の将来を左右するような、
大きな話だ。

俺は話を聞きながら
隣に座るヴィンセントの
服の裾をぎゅっと握ってしまう。

俺はまだまだ学生で。
ミゲルやヴァルターと一緒に
遊んですごすつもりだったのだが。

オーリーの話を聞きながら
俺はこの先、自分はどう生きるべきか
かなり真剣に考えてしまった。


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