【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

152:王都を救え!・2

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 俺は久しぶりに部屋の外に出た。
俺の力は秘密なので、
騎士団がいつも使っている
室内の訓練場を使わせてもらうことにした。

騎士達は今日は立ち入り禁止だ。

俺の隣にはヴィンセントと
そしてオーリーがいる。

本当はもっと多くの人たちに
協力してもらえれば
ラクチンかもしれないが、
そう言うわけにはいかない。

「イクス、大丈夫か?」

だだっぴろい訓練所に
大きな水槽が用意されている。

俺の手には例の砂が入った
小さい水槽があった。

この中身だけをどんどんコピーするのだ。

ネズミ算式に、倍々に増やしていくので
コピー自体はさほど苦労はない。

問題はそれからだ。

王都の地下にある空洞に合わせて
形を整えて行かなければならないのだ。

砂を練るのは、オーリーが
魔力てやってくれることになっている。

俺が形を整えたら、
ヴィンセントが火魔法で砂を乾かし、
強度が上がったら俺が転移魔法で
王都の地下空洞を埋めるのだ。

今日一日で終わるとは思っていない。

でも、少しでも早く、
できるところから始めないと
いつ地盤沈下が起こるのかわからないのだ。

俺たち顔を見合わせて頷いた。

よし、やるぞ!

ヤル気満々で始めたが、
やはり思った通り、
砂を練り、形を整えるまでは
スムーズにいくのだが、
実際に地下に転移させるのが
思った以上に困難だった。

オーリーが作った地図を元に
形を俺が調えるのだが、
地図は原寸大ではないし、
3Dでもないので、想像で形を
作っていくしかない。

それを転移させたとしても
うまく形がハマらないのだ。

適当に大きなものをガンガン詰めて
すき間を練った状態の砂で
埋めていくしかないか……。

オーリーの研究では
砂は日光に当てなくても、
一定の期間を置けば乾いて行くらしい。

つまり大きな塊が
王都を支えている間に、
すき間部分の砂が乾けばいい。

ただ、すき間部分に使う砂が
少なければ少ないほど、
強固なものになるのは確かなので
俺は必死に地下を埋めていく。

あれだな。

前世でも俺はパズルゲームばかり
妹にさせられていたが、
この世界に転生してからも
何かとパズルばかり
やっているような気がする。

これもあのパズルゲームの世界を
模倣したという神様のせいなのかもしれないが。

本当なら途中で休憩を挟むところだったが
集中力を途切らせてしまうと
まだ最初からになってしまいそうで
俺はぶっ通しで頑張った。

オーリーやヴィンセントが
声をかけてくれたが、
今、一気にやらないとダメな気がして
俺はひたすら魔力を使う。

そろそろ疲れて来たと
思ったころだ。

にゃ。

と声がして、ジュが
俺の目の前に現れた。

羽をパタパタしながら
俺の前に飛んでいるが、
神様のことろで充電してきたのか
ジュは大型犬ぐらいの
大きさになっていた。

そしてジュは飛んだまま
俺の顔を覗き込むと俺の
鼻をペロリ、と舐めた。

途端、俺の身体から
疲れが取れて、
切れそうだった魔力が
満ちていくのを感じる。

「ジュ、手伝いに来てくれたのか?」

にゃ、にゃ。

っとジュが頷く。

ジュが来てくれたと言うことは
もう時間がないのかも。

ジュは俺の足もとに降り立つ。

「イクス」

心配そうな声でヴィンセントに
声をかけられたが
俺は大丈夫、という。

だってジュが来てくれたと言うことは
神様が力を貸してくれるってことだから。

俺は地図を見ながら
どんどん魔力を砂に込める。

そして形を作っていくと、
ヴィンセントが魔力を使って
砂を固める暇もなく、
ジュが、にゃ、と鳴くと、
あっと言う間に砂が乾いて
俺が想像した形の通りに固まった。

ヴィンセントもオーリーも唖然としている。

だがジュが来れば百人力だ。

俺はジュの助けを借りて
どんどん砂を固め、
王都の地下に転移させた。

うまく組み込まない箇所は
粘土状態の砂を転移させたが、
その度にジュが、にゃ、と鳴くので
きっと何とかなっていると思う。

そうやって、ほぼ丸一日。
それこそ、朝から始めて、
翌日の昼前まで俺たちは
立ちっぱなしで魔力を使ったのだが。

王都の一番端にあった小さな
地下空洞を最後に埋めて、
ようやく作業は終了した。

「……終わったー」

ジュのおかげで、1日で終わった。

「ジュ、助かった。ありがとう」

俺が言うと、
手乗り猫ぐらいの
大きさになったジュは
にゃ、と鳴いて俺の手の上に乗った。

ふわふわの毛は柔らかくて
癒される。

「可愛いなぁ、ジュは」

頬ですりすりしていると、
後ろから抱き上げられる。

ヴィンセントだ。

「終わったのか」

「うん。ヴィンセントもありがとう」

途中から砂を乾かす必要が
無くなったヴィンセントは
オーリーと一緒に砂を練る作業を
してくれていた。

「本当に終わったのか?」

オーリーがヴィンセントの後ろから
声をかけてくる。

「はい。
もう大丈夫だと思いますが、
一応、また王都の地下を
魔力を通して確認してもらえますか?」

「わかった」

と、オーリーが頷いた途端、
ガタン、と地面が揺れた。

地震か!?

え?
俺、ちゃんと埋めたぞ!

俺はヴィンセントに抱き上げられた
ままだったので、
そのまま大きな体に
しがみついたのだが、
地震らしき揺れは
1度だけだった。

「とにかく、一旦、
ここから出よう」

オーリーの言葉に俺たちは頷き、
訓練所を出る。

俺はヴィンセントに抱っこされたままだったが
疲れていたので気にしないことにした。

ジュは俺の肩から
俺のシャツの中に潜り込んできた。

小さくなってしまったので
俺のシャツの胸ポケットに
すっぽり入ってしまう。

陛下への報告はオーリーが
してくれるというので
俺は甘えさせてもらうことにした。

ヴィンセントに大丈夫かと聞かれたが、
俺は大丈夫とは言えなくて。

疲れた、と言えば、
ヴィンセントはすぐに王宮で
借りていた部屋まで
連れて行ってくれた。

「イクス、何か飲むか?」

そういや、昨日から飲まず食わずだった。

俺だけでなく、オーリーも
ヴィンセントもだ。

「うん、お水だけ」

何か食べるかと聞かれたが
俺は首を振る。

食欲はない。

水を貰って、動きやすいシャツに
着替えると俺はベットに潜る。

ジュは先にベットに潜り込んでしまった。

俺も眠たくて仕方がない。

「ヴィー兄様、なんかあったら起こして」

「わかった」

ヴィンセントが俺にシーツを掛けてくれる。

「頑張ったな」

俺こにキスをされたけれど。
俺は照れる余裕もなくて。

「起きたら……」

「うん?」

「沢山、甘えたい」

普段なら絶対にこんなこと言わないのに。
よっぽど俺は疲れていたのだと思う。

ヴィンセントは驚いた顔をしたが、
「もちろん、沢山甘えていいぞ」
と、すぐに優しい顔で笑う。

それが嬉しくて。

俺は目を閉じるとあっと言う間に
眠りの世界へと足を踏み入れてしまった。


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