【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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溺愛と結婚と

144:至福のいちゃいちゃ【ヴィンセントSIDE】

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 俺たちが甘い空気を味わっていると
突然、乱暴な音が俺たちの
間いに割り込んだ。

オーリー魔法師団長だ。

突然の来訪にイクスが
驚いた顔で固まってしまった。

可愛い。

ずっと愛でていたいが、
そう言うわけにもいかない。

相手は魔法師団長なのだから
個人的感情は関係なく
部屋に入れなければならないだろう。

仕方なく部屋に招き入れると、
オーリー魔法師団長は遠慮もなく
イクスのために用意された
昼食を食べ始めた。

イクスに至っては
あっけにとられているようだ。

ぽたり、とイクスの口に
半分入ったパンケーキから
ハチミツが皿に落ちた。

イクスは気が付かなかったようだが
オーリー魔法師団長は気が付いたらしい。

「大きな目だなー。よしよし」

と何故か俺のイクスの頭を
撫でようと手を伸ばす。

俺は慌ててイクスを抱き上げた。

「ははは、過保護だな」

と言われたが、
俺に許可なくイクスに触るのは止めて欲しい。

オーリー魔法師団長はあっと今に
サンドイッチを食べ、
自分でお茶を入れぐびぐび飲む。

俺はイクスを膝の上に乗せ
とりあえず口に入れていた
パンケーキを食べさせた。

イクスは呆然としたようすだったが
ようやくオーリー魔法師団長に
声をかけた。

二人の話している内容は
俺には理解できなかったが
画期的な方法が見つかったらしい。

俺には魔法はあまり使えないし
魔術や古語もまったくわからない。

だから余計な口は挟まなかった。

俺はイクスを守れればそれでいい。

そう思い俺がイクスを
後ろから抱きしめると、
オーリー魔法師団長はからかうように
俺を見て笑った。

「おやおや、可愛らしい恋人たちだ」

どうせ普段の俺とは
違う姿に面白がっているのだろう。

俺は騎士団では親しい者はいるが
同僚騎士とは一定の距離を
置いて付き合うようにしている。

本来なら良くないことだが、
イクスの秘密もあるし、
俺は将来、ハーディマン侯爵家を
継ぐことが決まっている。

父の様に騎士団を率いるのではなく
イクスと共に将来は領地を
治めていくつもりだ。

子どもの頃は父の姿を見て
騎士になったが、
どうしてもなりたかったわけではない。

それに父が当主でありながら
騎士団長でいることが
できているのは、母が領地を
守っているからだ。

イクスは母と同じように
生きるのは無理だろうし、
強要はしたくない。

俺は騎士を続けなくても
イクスと共に生きていければ
それで構わないと思っている。

同僚たちのほとんどは、
継ぐ爵位の無い者たちばかりだから
出世欲ももちろん高い。

だからこそ、俺は同僚たちと
一定の距離を置き、
俺の事情に巻き込まないようにしているのだ。

オーリー魔法師団長はそういった
俺の心情も知っていると思う。

父にはすでに俺の気持ちは
伝えてあったし、
俺に出世の話があったら
内示の前に潰して欲しいと
願い出ていたからだ。

「ヴィンセントは君のことが
心配で仕方がないらしい」

俺が出世するぐらいなら
同僚たちを出世させて欲しい。

俺はそう思っているが、
それは俺が謙虚なのではなく、
ただイクスと共にいたいだけだ。

だが俺のそんな気持ちを
わざわざイクスに言わなくても
良いのではないだろうか。

思わず不機嫌な顔をしてしまう。

「そうにらむな。
今回は画期的な方法を見つけたから
急いで知らせにきただけだ」

オーリー魔法師団長はそう言って、
「逢瀬を邪魔して悪かったよ」と
にやにやしながら部屋を出ていく。

俺は気まずくなって、
オーリー魔法師団長のことを
少し話をした。

オーリー魔法師団長が平民出のことは
社交界では有名だった。

逆にオーリー魔法師団長の実力を
知っているので、誰も彼の人が
平民出だとしてもあざ笑う者はいない。

彼のおかげでこの王都が
守られていることを貴族だけでなく
平民たちさえも知っているのだ。

俺が話をしていると、
イクスが急に俺と一緒に
学校に通いたかったと言う。

その言葉は嬉しかった。
俺もそう思っていたからだ。

だがイクスと俺が同級生だったら
何がしたいかを聞くと、
今までしてきたことと
全く同じだったので笑ってしまう。

過去も未来も。
いや、ありえなかった人生でさえ、
俺とイクスはいつも一緒で
変わらず笑っているような気がした。

「イクス、好きだよ」

俺はイクスを背中から抱きしめる。

そして俺はもう一度言った。

「イクスが俺のことを兄と思ってても構わない。
たまに恋人だったって思いだしてくれたら。
俺がイクスの伴侶だって、
たまに思い出してくれたら
今はそれでいいんだ」

思い出したように俺を意識して
顔を真っ赤にして。

でも甘えたいときは
素直に甘えに来てくれたらいい。

俺はイクスの身体を抱き上げ
向かい合わせになるように
膝に乗せた。

「さっき、公爵殿に抱きつきに行った時、
俺が手を伸ばしたら、
咄嗟に俺の胸に飛び込んできただろう?」

俺が言うと、イクスが顔を真っ赤にする。

「公爵殿には悪いとは思ったが
俺は嬉しかった。
イクスに選ばれたみたいで」

俺がそう言うと、
イクスは嬉しそうに、
ふにゃり、と笑った。

その頬に手を添える。

「兄でもいい。
たまに、俺をこうやって
イクスが意識してくれるのを
垣間見るのも、楽しい」

小さな唇を指でなぞる。

口付けたい。
だが、性急な真似はしない。

俺はイクスを驚かせないように
ゆっくりと指を動かした。

「イクスが望むときに
兄になったり恋人になったり
伴侶になったりする。
俺はなかなかお買い得だろう?」

わざとそんな言い方をしたが、
俺はイクスの柔らかい唇の
感触に夢中だった。

このまま……抱きしめたい。

「今は兄にはなれないが、
構わないか?」

俺がそう聞くと、
イクスは恥ずかしそうに頷いた。

それが嬉しくて。
俺はイクスに唇を重ねた。

何度も、何度も。

イクスの身体から力が抜けていき、
俺の胸に倒れ込んで来る。

幸せすぎる。

俺はイクスを抱きしめた。

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