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高等部とイケメンハーレム
119:新婚・2【ヴィンセントSIDE】
しおりを挟むイクスと唇を重ねると、
ジュが俺の足元で
何度も威嚇の声を挙げる。
無視だ。
そんなことよりも
俺はイクスのやわらかい唇を
味わいたい。
そっと唇を離すと、
イクスの潤んだ瞳が見えて、
また俺はイクスに口づけた。
可愛い。
離したくない。
俺はさっきよりも
もっと深くイクスに口づける。
もう俺たちは婚姻を結んだのだ。
遠慮はいらないのでは?
俺はイクスの唇を舐める。
驚いたのだろう。
イクスの口が開いたタイミングで
俺は自分の舌をイクスの
舌に絡めた。
イクスの口内は甘く、
もっと触れあいたくなる。
もっと、もっと。
イクスに溺れそうになった瞬間、
胸を強く叩かれた。
俺は我に返ってイクスを離した。
「悪い、ちょっと……
我慢できなかった」
謝ったが、
イクスは頬を赤く染め、
唇を尖らせている。
イクスは俺を非難したいのだろうが
俺こそ文句を言いたい。
涙目で俺を見てもダメだ。
今日こそ言わせて貰う。
なにせ俺たちはすでに
結婚しているのだ。
伴侶なのだ。
俺はイクスを抱きしめる。
「俺だって許されてないのに
あの猫にイクスの舌が
吸われてたから」
気に入らないし、
怒るのは当たり前だろう。
そう耳元で言うと、
イクスは目を丸くする。
呆れたよな顔を一瞬したが、
それでも、すぐにイクスは笑った。
そして俺の背中に腕を回して
抱きついて来る。
ジュが俺の足を
パンパンと叩いてきているが
まったく気にならない。
なにせイクスが……
「ヴィー兄様好き」
と可愛く言うのだ。
口付を交わし愛を囁かれる。
こんなに嬉しいことは無い。
と思ったが、
イクスはさらに俺を
喜ばせることを言った。
「僕ね、ヴィー兄様と
新婚生活が出来て嬉しい」
そうか、そうか。
俺と結婚できてイクスも
嬉しいんだな。
ん?
「新婚……?」
なんだ、その甘い響きは。
「だって、僕とヴィー兄様は
結婚したから、新婚でしょ?」
そう言われて、
俺は、はっとイクスから離れた。
「違うの?」
「い、いや、違わない。
違わないんだが……なぜイクスは
新婚という言葉を知っているんだ?」
この国では、新婚期間というのは
婚姻を結んだ者同士が
一定期間、常に寝食を共にする
時期のことを差す。
俺はイクスが成人するまでは
そういうことはできないと
思っているし、それどころか
公爵殿も許可はしないだろう。
だがイクスは俺との
新婚期間を望んでいると言うのだろうか。
それは嬉しいが、
だが、閨事に関しての
問題もまだ残っている。
イクスが望んでいることは
すべて叶えてやりたいが、
だからと言って
今からすぐに新婚になると
言うのは……
俺が我慢すればいいだけか?
俺が、イクスに手を出さずに
寝食を共にすれば……
俺の脳はフル回転する。
だがそんな俺にイクスは
のんきな声で言う。
「ヴィー兄様、僕はこれでも
高等部に進学したんだけど?」
それはわかっている。
そうではない。
「そ、そうだが。
新婚……新婚……」
いや、まてよ。
イクスがこういうことを
言うということは、
新婚の意味を知らないのかもしれない。
「イクスは新婚がどういう意味か
知ってるのか?
いや、新婚が何をするのか理解しているか?」
「わかんない。
何か僕はヴィー兄様に
しないとだめなことってあるの?」
わかんないのか!
わからないんだな!
「ない!
無いから、大丈夫だ」
イクスにしたいことも
してもらいたいことも
それは山ほどあるが、
今はダメだ。
俺がいくら鋼の自制心を
持っていたとしても、
そういうことを言ってはダメだ。
俺はイクスの髪をゆっくり撫でる。
イクスがまだ小さい時から
ずっとやっていた仕草だ。
イクスを甘やかして、
子どもに戻すために
俺は優しく髪を撫でる。
「イクスはまだ子どもでいい。
ゆっくりおとなになってくれ」
「う……ん?」
イクスは意味がわかって
いないのだろう。
それでもいい、今は。
俺はイクスをベットに寝かせた。
イクスは唇を尖らせたが
とにかく寝ろと、
俺はシーツを掛ける。
「もうすこし寝てろ。
俺はイクスが目を覚ましたことを伝えてくる」
「うん、ありがとう」
イクスの返事を聞き、
俺は部屋を出た。
俺が部屋を出ると
扉の音を聞きつけたのか
侍従が慌てた様子でやってくる。
俺はイクスが目覚めたことを伝えた。
侍従は頭を下げて
俺にそのまま待つように言う。
少し待っていると侍従の代わりに
公爵家の執事がやってきて、
俺をサロンに案内した。
どうやら食事を振舞ってくれるらしい。
それはありがたい。
イクスのことがあり、
俺も昼食を食べ損ねている。
公爵家の食事は美味いし、
いつも申し分ないほどの量を
提供してくれる。
俺はイクスが成人するのは
まだまだ先だと
やや落ち込んでいたが、
まずは腹ごしらえだと
ありがたく食事を頂くことにした。
サロンには俺の為であろう食事が
かなりな量で準備してある。
給仕の侍従がいたが、
俺はその場にいなくても
大丈夫だと断りを入れて、
もくもくと食べた。
早く食べてイクスのところに
戻ろう。
そう思ってやや大きめのパンを
水で飲み込んだところに、
公爵夫人がやってきた。
なぜだろう。
嫌な予感がする。
公爵夫人は美しく
他国の王家の出らしいが
それも納得できるぐらい
所作も美しい。
そして他者に命じることが上手い。
笑顔で、けれども
断ることができないように
話を進めていくのだ。
これに関しては
若い頃は、この国の国王陛下ですら
苦笑いをして場を収めることが
何度もあったという。
俺の父でさえ、
たまに公爵夫人の名が
挙がることがあるので
よっぽどのことだと思う。
それも、単なる世間話ではなく
戦略について話をしている時に
見習うべき相手、という意味でだ。
公爵夫人は見た目は美人で
優しく、公爵殿を一歩引いて
支えているように見えているが、
実質、公爵家を仕切っているのは
夫人だというのが俺の父の見解だ。
夫人は表に出ず、
公爵殿を操って公爵家を
発展させているのだと
父は疑わずに言う。
俺は公爵殿を素晴らしい人だと
尊敬しているし、もちろん、
父も同じ様に尊敬している。
その二人を陰からあやつる?
そう思われる人物と俺は
二人っきりで食事をするのか。
いや、俺の父が
勘違いしている可能性もある。
見た目は可憐でたおやかな女性だ。
多少、圧を感じる時もあったが、
それはイクスが絡んだ時だけで、
母親の愛情から来るものだと
俺は思っていた。
俺は席を立ち
夫人に挨拶をしようとしたが
夫人は俺に視線を向けただけで
俺の動きを制した。
目線だけで思わず
動きを止めてしまう程の
圧があった。
夫人は侍従に椅子を引かれ
俺の前に座り、
イクスに会ってきたことと
俺への礼を告げる。
夫人の前にお茶が置かれ、
白く細い指がティーカップを
持ち上げた。
そんな些細な仕草なのに
何故か目が離せない。
「ふふ、あの子のために
昼食を取らずに
走ってくれたのでしょう?
遠慮なく食べて頂戴」
そう言われて
俺はぎこちなく頷く。
俺は間違いなく
圧倒されている。
それは戦いの場で
戦士が発するような覇気ではなく
高貴な……ただ目の前にいるだけで
ひれ伏したくなるような
王の威厳のようなものだった。
たとえば陛下が時折
政治の場でみせるような……。
俺はその姿を見て納得する。
やはりこの女性は
公爵家で最強の存在だったのだ。
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