【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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高等部とイケメンハーレム

117:嫉妬 【ヴィンセントSIDE】

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  イクスがクルト殿下に
連れて行かれたとアキレスから
連絡があったのは、
まだ昼前だった。

俺は幸いにも騎士団で
出世をしていて、今は
王族の護衛を主にする
近衛騎士に任命されている。

とはいえ、王族の護衛と言っても、
近衛騎士の数は多かったし、
常に王族を守っているわけではない。

緊張を強いられることもあり
勤務は1日3交代制になっていたし、
怪我を負う機会も多く、
また王族の近くにいることから
内密に任務を与えられることもあり
近衛騎士は他の騎士団よりは、
かなり自由度が高かった。

もちろん、近衛騎士の中には
王族の護衛をする専任騎士はいたが
俺はそういった役目からも
外れている。

意図的に自由に動けるように
今の役目に配置されているのだと思う。

……イクスのために。

俺はその自由度を使って
陛下や公爵殿、そして
騎士団すべてをとりまとめている
俺の親父からも、
イクスを最優先にするように
言われているし、
許可も得ている。

俺の親父にはまだ
イクスのことをきちんと
話をしたわけではないが、
公爵殿や陛下の態度から
イクスがなにかしらの
だということには
気が付いているのだろう。

ただ、俺との婚約も
最初はイクスを守るためだったし、
親父は一度守ると決めた者を
途中で見捨てたりはしない。

そう言った意味で
俺は親父に何も言わなくても
大丈夫だとは思っている。

ただ、イクスに確認をして
いつかはきちんと説明しなければ
ならないとは思う。

事情を知らないと
守り切れないこともあるからだ。

結婚してハーディマン侯爵家に
イクスが嫁いで来たときが
説明する機会になるだろう。

アキレスの報告から
俺は離宮に向かうことを決め、
陛下に報告をする。

おそらく、隣国からきた
レオナルド殿下が絡んでいると
思ったからだ。

陛下は俺に離宮に出入りする
許可と、イクスを連れて
戻る許可を出してくれた。

イクスを連れて帰るのなら
馬車の準備が必要かと思ったが
馬車で向かうと遅くなるので
俺は馬に乗ることにする。

クルト殿下のことは考えない。
殿下には影の護衛がついているし
心配はいらないはずだ。

俺が離宮について、
侍従に連れられて部屋に入るなり、
イクスが物凄い笑顔で俺を見た。

なんだ?
と思うと、イクスは
頬を染めて俺を見る。

「かっこいい!
凄い!
ヴィー兄様、好きーっ」

息をするように
イクスに言われて
思わず照れてしまう。

顔に出さないように頑張ったが
イクスは俺の騎士服姿を
見たことが無かったのかもしれない。

そんなに褒めてくれるのなら
もっと早く見せても良かったな。

俺が喜びに浸っていると
レオナルド殿下が苛立ったように言う。

「好き?
イクス、この騎士のことが
好きなのか!?」

やっぱりな。
イクスに懸想してると思った。

いくら王子殿下でもイクスは渡さない。

俺がそう思っていると
イクスは立ち上がり俺のそばに来ると
きゅっと腕にしがみついてきた。

「僕のヴィー兄様だよ」

……まぁ、そうだが。
そう言って貰えるのは嬉しいが
隣国の王子殿下にする挨拶ではないな。

俺は苦笑してレオナルド殿下に
きちんと名を名乗る。

もちろん、イクスの婚約者で
あることをアピールすることも
忘れない。

「このようにイクスは
いまだに幼く、
すぐに私への思慕を
口にすることが可愛らしく
思っておりましたが、
なかなか互いの仲が
進展しなかったことも事実。

殿下のおかげで
この関係が一気に進むこととなりました。

心から感謝申し上げます」

俺がそういうと
レオナルド殿下の顔が歪んだ。

はっはっは。
俺のイクスを奪おうとするからだ。

大人気ないと自分でも思うが
イクスに関しては俺は
自制がきかなくなるんだ。

だが俺を恋のライバルだと
思っているレオナルド殿下とは
真逆に、イクスは相変わらず
色恋沙汰に関しては疎い。

どうやら告白したのに
イクスにフラれて落ち込む
レオナルド殿下を心配して
離宮に来たようなのだが

イクスは色恋をわかってないので
自然にレオナルド殿下の心を
抉っている。

仕方が無い。
ここは助け舟を出すか。

ようは、レオナルド殿下は
イクスとずっと一緒にいたい、
ってことだよな?

それなら話は簡単だ。

だってレオナルド殿下は
イクスの義兄になるのだから。

俺はレオナルド殿下に
イクスと家族になるのだから
結婚する必要が無いと
わざとゆっくりと、
レオナルド殿下が理解しやすいように
説明をする。

いかにも、結婚するよりも
義兄として家族になった方が
有利で素晴らしいというように
話をすると、あっという間に
レオナルド殿下は俺の誘導に
乗ってきた。

王族なのにこんなに素直で
大丈夫かと思うが、
第二王子というのは
こういうものかもしれない。

思わずクルト殿下をちらりと
見てしまったが、
仕方が無いことだろう。

正直イクスには誰も
近づけたくはないのだが
王族に関しては
そういうわけにはいかない。

クルト殿下も俺の説明を聞いて
イクスと友情をはぐくむ
方向に向かってくれれば良いのだが。

レオナルド殿下の説得も終わり、
ようやくイクスを連れて
学校に戻ることになったのだが
イクスの顔色が悪い。

学校に着いて、
クルト殿下を校舎内に
先に入ってもらったが、
それを見送った途端、
イクスの表情が驚くほど
苦痛に満ちた顔になった。

「イクス?」

俺はイクスを支え、
学校内にいる医者に見せるか
悩んだのだが、
イクスは家に戻りたいと言う。

何か理由があるかもしれない。

俺はそう思い、
急いでイクスを抱き上げて
馬を走らせた。

公爵家に着くと
門番は驚いたようだが
俺の顔は知られていたし
腕の中には真っ青なイクスがいる。

門番は伝令を飛ばし、
俺を中に入れてくれた。

イクスは俺の腕の中で
荒い呼吸を繰り返すばかりで
顔色は真っ青だ。

急いで俺はイクスの部屋に行くと
そばににた侍女にイクスの
寝間着を準備するように言う。

俺はイクスの制服を脱がせた。

幼い頃から着替えを手伝って来たし
俺がイクスの服を脱がせても
誰も何も言わない。

イクスに寝間着を着せて
ベットに寝かせると
俺の後ろであわただしく
医者への連絡や
イクスの身体を冷やす水や
氷の準備をする音が聞こえてくる。

だが俺は後ろをふりむことなく
イクスが寝ているベットに跪いた。

大丈夫か、とイクスの額に
触れると、思ったより熱い。

侍女がイクスに水を持って来たが
イクスはその水を見て
なぜかジュを呼んだ。

俺がいるのに、
何故あんな猫を呼ぶ?

そう思う俺の前に、
ジュが落ちて来た。

ベットで寝るイクスの腹の上に。

そして何故かシーツの上から
イクスに肉球をパンパンと
叩くような仕草をする。

……何をしている?

意味が分からん。
それよりもイクスは病人なのだから
大人しくするべきだ。

俺はジュを取り除こうと
手を伸ばしたが、
それよりも先にイクスが
手を伸ばしてジュを抱き上げた。

ジュは、猫のくせに
ちらり、と俺を見て笑った。

絶対に、笑った。
にやり、と。

俺に自慢するような顔をした。

そしてイクスの顔を
ぺろぺろと舐め始める。

俺への嫌がらせか?

俺ができないことをできると
自慢しているのか?

イラっとする俺の前で
イクスは少し頬に赤味を
戻して、ジュに礼を言う。

ジュが何かしたか?

ペットらしく、
イクスの体調を治そうと
しているのか?

俺がジュを見直そうと思った時だ。

ジュが、イクスにキスをした。

いや、もともと口元を
ぺろぺろ舐めていたから
キスではない。

いや違う。

さっきまではキスでは無かった。

だが、ジュは俺の前で
イクスの唇にどう見ても
舌を入れて舐めていた。

俺ですらそんな真似など
したことがないのに!

目を見開く俺の前で
イクスもジュの小さい身体を
抱き上げたまま、
自分からジュに口づけるような
仕草をする。

どういうことだ?

俺よりも、ジュの方がいいのか?

イクスは可愛いものも好きだしな。

俺はどうせ可愛くはないし。

と、何故俺が可愛くなければならないんだ?

思考がおかしくなっている。
落ちつけ、俺。

焦る俺の前でジュを
抱き上げていたイクスの腕が
ゆっくりと下がっていく。

ジュが、羽を使って
イクスから離れた。

俺は慌ててイクスの身体を支える。

イクスは一瞬だけ目を開けたが、
そのあと眠るように目を閉じた。



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