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高等部とイケメンハーレム
111:結局は伴侶が一番
しおりを挟む俺が首を傾げていると、
すぐにまた部屋の扉をノックする音がする。
クルトが返事をすると
先ほどの侍従が頭を下げて
部屋に入って来た。
そしてその後ろから……
「ヴィー兄様?!」
何故ここに?
ヴィンセントが騎士服のまま
侍従の後ろに立っている
すっげー。
ヴィンセントの騎士服姿、
初めて見た!
「かっこいい!
凄い!
ヴィー兄様、好きーっ」
思わず立ち上がって
つい、いつもみたいに
口から余計な言葉が飛び出した。
好き、好き、とずっと
言い続けてたから、
すぐに口から飛び出してしまう。
言い過ぎは信憑性が無いし
控えめにしようと
心に誓っていたはずなのに、
俺の口はすぐに
「好きー」と言ってしまう。
俺の言葉にヴィンセントは
苦笑しているが、
俺の言葉に驚いているのは
レオナルドだった。
「好き?
イクス、この騎士のことが
好きなのか!?」
俺同様に立ち上がるレオナルドに
俺はうん、と頷いて、
ヴィンセントのそばに行く。
「僕のヴィー兄様だよ」
あれ?
ちょっと違ったな。
隣国の王子にこういう
紹介の仕方は間違ってるよな?
俺はヴィンセントの腕を掴んで
レオナルドに紹介したが、
ヴィンセントはその俺の手の上に
やんわりと包むように
大きな手を置いた。
それから俺に少し笑ってから
手を離して、見惚れるような騎士の礼をする。
「お初にお目にかかります。
ウエールズ国の第二王子であらせられる
レオナルド・ジョーンズ殿下に
お会いできて光栄でございます。
私の名はヴィンセント・ハーディマン。
パットレイ公爵領と隣接している
ハーディマン侯爵家の嫡男であり、
長年イクスの婚約者でありましたが
ようやく念願がかない、
イクスの伴侶となることができました」
念願かなって!だって。
嘘でも嬉しいけれど、
今それを言う必要ある?
というか、なんか、
刺々しい?
いつも優しいヴィンセントらしくないぞ。
俺がヴィンセントを見上げると
何故か、にやり、と
口元が歪んだ気がした。
「このようにイクスは
いまだに幼く、
すぐに私への思慕を
口にすることが可愛らしく
思っておりましたが、
なかなか互いの仲が
進展しなかったことも事実。
殿下のおかげで
この関係が一気に進むこととなりました。
心から感謝申し上げます」
え?
なにそれ。
そんなこと言っていいの?
というか、腹黒っぽい?
かっこいいけど、
なんだ、これ。
どういう状況?
「ヴィンセント、どうやって
ここまで来た?」
混乱する俺を前に
クルトが冷静に聞く。
「アキレスからすぐに
騎士団に連絡が来ましたので」
「ヴィー兄様、仕事は?」
俺のためにちょくちょく仕事を
抜けるのはどうかと思う。
それでなくても
父にこき使われてるのに。
「大丈夫だ。
俺の父も、陛下も、
公爵殿からも、
イクスを最優先に動くことの
許可は貰っている」
職権乱用!
父だな。
父が裏から手を回してるんだな。
「はは。
公爵殿の過保護は
相変わらずだなぁ」
まさか父王まで動かすとは。
クルトが呆れたように言う。
だがその言葉に少し
寂しさが混ざっているのを感じた。
もしかして、陛下が自分よりも
他人の子どもの俺を
優先してるとか思ってないよな?
違うぞ。
俺は国にとって
価値があるから大切に
してもらってるだけだぞ?
……いや、違うか。
俺の父が周囲の目も関係なく
俺を溺愛するのが
羨ましい、とかだろうか。
クルトが陛下の愛情を
疑ってるとは思えないし。
なんだ、クルトもまだまだ
子どもじゃんか。
俺はクルトに手を伸ばして
頭をよしよしと撫でてやる。
「なんだ? いきなり」
何だと言われても
クルトが子どもで可愛いってことだ。
というのをさすがにためらっていると
レオナルドが俺たちを見た。
「……仲が良いんだな」
何を羨ましそうに言っている?
「僕とレオも仲が良いよね?」
俺が言うと、
レオナルドは、そうだな、と
表情を少し明るくした。
そしてレオナルドは立っている
ヴィンセントに今頃気が付いたかのように
椅子に座る許可を出したが
いくらソファーが四人掛けとはいえ
隣国の王子の隣に座ることが
できる者はこの場にはいない。
というか、もしかしたら
友人枠の俺は座っても良いのかもしれないが
あのプロポーズが本気だったのなら
さすがにそれは無神経すぎる……
ということぐらい、俺にもわかる。
王子たちの前でなければ
ヴィンセントの膝に座るところだが
さすがにそれも無理だろう。
「私のことはお気遣いなく」
ヴィンセントは色々考える
俺をソファーに座らせると
護衛の様に俺の背に回った。
ヴィンセント一人だけ
立たせてもいいのか?と思ったけれど
椅子もないし、長居するつもりは
なかったから、侍従を呼んで
椅子を持って来てもらう
気にもれない。
まぁ、いいか。
ヴィンセントが背中にいると心強いし。
俺は改めてレオナルドを見た。
ここに来た当初の目的を果たして学校に戻ろう。
ミゲルたちも心配するかもしれないし。
「ねぇ、レオ。
学校においでよ、
それとも僕と友達なのはもう嫌になった?」
「なってない!」
俺の言葉に覆いかぶさるようにレオナルドが言う。
よかった。
でもプロポーズのことは
無かったことにするから、とは言えないよな?
でも俺、プロポーズはお断りするしかないし。
俺が困っていると
俺の後ろにいたヴィンセントが
レオナルドに発言を求めた。
「怖れながら、
レオナルド殿下はイクスの
どこが気に入られたのでしょうか」
おい、なんだその聞き方は。
俺がダメダメだって聞こえるぞ。
いくら俺を甘やかすヴィンセントだからって
その言葉は酷いぞ。
俺が不機嫌を隠さずに振り返ると
ヴィンセントは任せておけ、と
言うような顔をした。
いいのか?
本当だろうな。
信じるからな。
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