【完結】「誰よりも尊い」と拝まれたオレ、恋の奴隷になりました?

たたら

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高等部とイケメンハーレム

113:総受封印

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 俺たちが学校の裏門に着いたときには
すでに昼休みも終わりに近づいていた。

俺とクルトが二人とも授業をサボって
その後、教室に二人で戻るなんて
かなり目立つと思うので
俺は馬車から下りると
先にクルトを校舎へと向かわせる。

ヴィンセントは御者から馬を引き取ったが、
御者はヴィンセントがお礼の言葉を
伝えても、お辞儀だけして
馬車を動かした。

御者は一言も口を聞かなかったけど、
クリムはお忍びだったし、
あまり外部の者とは関わり
あわないようにしているのかもしれない。

馬車を見送り、門を閉めて
ヴィンセントが俺を見る。

「イクスも教室に戻るか?
昼ご飯を食べそこねたな」

「ほんとだ。
そう思ったらなんか
お腹が空いてきた気がする」

俺はそう言って腹を押さえたが……。

ん?と思った。

「イクス?」

「ううん、なんでも……ない?」

お腹がぐるると鳴った。

でもお腹が空いた感じではない。

なんだろう。
体の中で何かがぐるぐると
回っている感じがする。

「大丈夫か?」

心配そうなヴィンセントの声がするが
その声も上手く聞き取れなくなってきた。

耳鳴りがするのだ。

体の中のぐるぐる。

なんか、気持ち悪い……。

「イクス?
どうした?
医務室に行くか?」

俺は首を振る。

違う。
医者がどうにかして
治るものじゃない。

これはきっと……

「ヴィー兄様、
屋敷に、帰りたい」

ヤバイ、と思う。

体の中にある魔力とか
見ないふりしていたスキルとか
前世妹の腐った祈りで
増えたであろう
急に体の中でぐるぐるし始めた。

どういうことだ?

俺の身体では受け止めることが
できないぐらいの妄想が
俺の中に入ってきてるとか
そういうことか?

だめ、だ。
意識を失ったら
『力』が暴走するかもしれない。

思わず蹲る俺を
ヴィンセントが抱き上げた。

そのまま俺ごと馬に乗り、
ヴィンセントは公爵家まで
走っていく。

「大丈夫か?
イクス?」

耳元で声がするが
正直、大丈夫とは言えない。

俺が必死に『力』を押さえていると
かなりの早さで馬を駆けて
くれたのだろう。

思った以上に早く
公爵家についた。

馬で駆けこんできた
ヴィンセントを門番は
驚いたようだが
腕の中にいる俺に気が付き、
すぐに門を開けてくれる。

門のところにいた
伝令係が屋敷に走り、
ヴィンセントが門番に馬を預けて
屋敷の前に着いたときには
すでに扉が開き、
家令や執事、そしてリタが
玄関前で待っていてくれた。

執事は俺の様子を見て
医者を、と声を挙げる。

ヴィンセントが俺を抱えて
俺の部屋に運んでくれた。

リタが俺の着替えを持って来たので
ヴィンセントが俺の制服を脱がし、
あっという間に寝巻に着替えさせた。

正直、俺の寝間着はゆるゆる
ぶかぶかワンピースなので
少しだけ体が楽になる。

「熱は……少し高いな」

ヴィンセントが俺をベットに寝かして
おでこに手を当てる。

「イクス様、お水をお持ち致しました」

リタが声を掛けてくれるが
水を飲む気にはなれない。

いや、違う。

水だ。

体の中で溢れそうな
水に変えたらいい。

「ジュ」

俺はジュを呼んだ。

どこにいるかわからないが、
俺が呼んだらきっと来てくれる。

よくわからんが、俺はそう思う。

「ジュ、早く」

早く来て俺を助けてくれ!

心の中で俺がそう叫ぶと、
にゃ、と頭の上で声がした。

どん、と何かが俺の胸に
落ちて来た気配がして
視線を向けるとジュだった。

『にゃ・にゃ・にゃ』

ジュは俺の胸をシーツの上から
ネコパンチをするように
パンパン叩く。

それに何の意味が?
と思ったのは、一瞬だった。

ネコパンチされる度に
ぐるぐる感が収まる気がするのだ。

ジュは俺の胸からトコトコと
移動して今度は俺の頬を
ネコパンチしてくる。

痛くはない、というか
ぐるぐるが収まってきて
逆に心地よい。

「ジュ」

俺はシーツから手を伸ばして
ジュを抱き上げた。

ジュは今度は俺を
ぺろぺろ舐め始める。

嫌な汗をかいていたのだが
それも引いてきたようだ。

「ジュ、ありがとう。
だいぶ楽になった」

にゃ。

ジュは俺の唇をぺろぺろ舐めて
挙句の果てに口の中に
舌まで入れて来た。

だが、ジュはどうやら
俺の身体から溢れそうになっていた
をなめとって
くれているのだと思う。

身体がどんどん軽くなっていく。

もっと沢山、吸い上げてくれー。

俺はジュを抱き上げて
自分から、むちゅーっとジュにキスをした。

落ち着いて来ると
小さなジュのもふもふした毛並みや
柔らかい身体を意識できるように
なってきた。

猫吸いする飼い主がいる気持ち、
分かる気がする……。

俺、猫飼おうかな。
普通の子猫……可愛いと思う。

にゃ。にゃ!
大きく頬をネコパンチされて
俺はジュを離した。

ぐるぐるはだいぶ収まった。

でも、めまいはまだするし、
なんか……倒れそう?

手の力が自然にゆるみ、
ジュが俺の手から落ちる。

とはいえ、ジュは猫だし
翼があるから大丈夫だろう。

ジュの無事を確認する気力もなく
俺の瞼は突然、落ちた。

「イクス!?」

ヴィンセントの声が聞こえたが、
その声さえ、遠い。

俺、何がどうなってる……?


にゃ。

遠くでジュが鳴く。

「イクス様ー、尊い~。
お兄ー、総受けハーレムは
封印したから安心してねー。
はぁ、しかし、尊い」

なむなむ。
と、前世妹がイクスのポスターを
拝む声が聞こえる。

なんだ、これ。

俺の夢?
それともほんとのことか?

イケメンハーレムが無くなったのは嬉しいが、
俺の今のこの状態は
まさか前世妹のせいか?

……あのバカ妹は
俺が生きてても死んだ後でも
ほんとに迷惑ばかりかけてくる。

まぁ、それでもバカだから
ほっとけないし、可愛いと思うのだから
俺もたいがい妹大好きな兄バカだな。

そう思った時、本当に
すん、と意識が途切れた。


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